連休最後の8日、シネマヴェーラのノアール特集で2本見ました。
最初に見たのが "The Great Flamarion" (1945)
メキシコの興行小屋での公演中、女性の叫び声と銃声が鳴り響いて、女性が殺されているのが見つかる。警察の検分が終ったあと、どさっと落ちる音がするので行ってみると男が倒れていて、それは拳銃早撃ち芸人のフラマリオンで、彼は虫の息でここに至るまでのかなしー顛末を語り始めるの。
フラマリオンの芸は、バーで浮気している妻のとこに乗りこんでいって、拳銃早撃ちで彼女とその相手を撃ちまくって(でも絶対に当てずに)びびらせて拍手喝采、てやつで、妻役のコニーとその相手の男は実際には夫婦で、男のほうは酔っ払ってばかりいるのでフラマリオンには気にいらない。
ある日コニーがフラマリオンのとこにアプローチしてきて、最初は断固拒否していた真面目なフラマリオンが揺れ始めて一緒になることにして、決意したら一途だもんだから酔っ払っている男を公演中の事故に見せかけて撃ち殺して、彼女とはシカゴで落ちあうことにしたのに裏切られるの。
コニーはファム・ファタルなんかじゃないただの淫乱なビッチなので、こんなのにぼろぼろに破滅させられるフラマリオンさんが可哀相でしょうがない。 おまえ、偉大なるシュトロハイム先生になんてことを…って映画好きのひとならみんな思うよね。
続いてみたのが"Out of the Past"で、これは大好きでもう何回も見ている。
でも、ほんとにこれって劇場未公開なの? …ありえない。
わたしがこういう昔の映画に驚嘆して、出来る限りなんでも見て勉強せねば、になっていったきっかけが2003年、MOMAの映画部門の特集で、そのときに見たのがこれと、他には"Angel Face" (1952), "There's Always Tomorrow" (1956), "The Reckless Moment" (1949), "Touch of Evil" (1958), "All That Heaven Allows" (1955) とかだったの。 ほんとにびっくりしたんだよねー。
NYの私立探偵Jeffがギャングのボスを撃って金を持ち逃げしたKathieを探すように依頼され、アカプルコまで飛んで彼女を見つけるのだが、彼女の虜になってしまい、一緒に逃走するものの逃げ切れずバウムクーヘンみたいに犯罪ぐるぐるまきになって、いいかげん彼女に愛想つかして放り出し、田舎の街道沿いでガソリンスタンドをやって隠遁するのだが、そこにも組織は追っかけてくるの。
ストーリーは田舎で出会った、彼にとっては聖女のようなAnnに語りかけるかたちで進み、それ故に逃れられない過去の辛さと未来への一筋の光が、そのコントラストが際立ってたまんないの。
あとは都会の闇と田舎の自然の光の対照もすばらしい。
そいで、Jane Greerの悪女(こいつはまちがいなくファム・ファタル)も他に出てくる二人の女もみんな震えるくらいきれいなので、これじゃどっちにしても逃れようがないや、になるの。
Robert Mitchumも最後まで無表情で、自分の背負った過去を黙って、そのでっかい手で引き受ける。
かっこいいったらない。
そしてあのラストがまたねえ。 泣かせるんだようー。
過去から現在に至る複数の線を、過去から逃れる複数の可能性とそれと同じ数の絶望を静かに冷徹に描き出して、ものすごく豊かなので何回見ても新鮮で。 名画っていうのはこういうのをー。
10.13.2012
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