アンスティチュ・フランセで5日から始まった特集『映画とシャンソン』 - これもぜんぶ見たい - からまず1本。『パリの中で』。 英語字幕だった。
Christophe Honoréの『ラブ・ソング』のひとつ前の作品、といったら見るしかないでしょ。
冒頭、アパートの部屋で川の字で寝ている3人のうち、Louis Garrelのジョナタンが起きあがってベランダに出て、カメラの方を向いて話し始める。やあみなさん、ぼくはこのドラマのナレーターだよ、とかなんとか。 この時点ですでにきゅんとして、たまんない。
ノアールの過酷な世界もいいけど、やっぱこっちだ、とか揺れるったら。
クリスマスの直前に、ジョナタンの兄のポールが恋に疲れて父とジョナタンの暮らすアパートに帰ってきて、ジョナタンはそんな兄ちゃんを励まそうとボン・マルシェ(だい好き!)に買出しにいこう!ぼくは20分で着くからさ!とか軽く言ってびゅーんと飛び出していくのだが、彼は彼でナンパしたりされたり盛りのついた犬だもんだから、落語みたいにぜんぜん届かないの。
そうしているうち、アパートにはジョナタンを求めて彼の元カノが訪ねてきて、しかたなくポールがその相手をしてあげたりする。
その彼女にポールが言うことにゃ、悲しみは目の色のように植え付けられたものだから世話してやらなければいけない。君の目の色のことだから他の人にはどうすることもできないんだよ、って。
もうねえ、このフレーズがあるだけで、この映画ほんとに好きだし、Christophe Honoréえらい、って思うし、おとなのフランス映画万歳!になるわ。
こういうのを見とけ悲しい寂しいだいすきの日本のガキども!
こんな具合にみんなが自棄になって川に飛びこんだりして、みんながそんなみんなのこと心配してばたばた走り回って、クリスマスがやってくるの。 なにひとつ決着しないけど、それのどこが悪いんだよ?
パパガレルの映画で恋に殉じるLouis Garrelもよいが、この映画でぴょんぴょん走り回っているLouis Garrelのが好きだなあ。『ラブ・ソング』もすばらしいので是非。
兄のポールを演じるRomain Durisは"L'arnacoeur" -『ハートブレイカー』の彼。 歌はそんなに巧くないけど、味があって、この映画でも電話越しに切なくしっとりと歌ってくれる。
あと、彼女が昔プレゼントしてくれた7inch、Kim Wildeの"Cambodia"をかけてめそめそするシーンもある。 そういえば、こないだ見た"Camille Redouble"でもKim Wildeのポスターはあったなあ。
Louis Garrelが女の子の部屋のベッドで読む本が「フラニーとゾーイ」、仲直りした兄と弟が一緒に読むのがオオカミのルウルウとウサギのトムが出てくるGrégoire Solotareffの絵本で、これだけでもなんかわかるのであるが、でも、本ではなくて歌なの。
歌のない世界なんてありえなくて、歌こそが世界を輝かせるんだよ。
ということを大上段ではなく、それこそベランダから話しかけるみたいに言ってくるの。
素敵なんだよねえー
ラストにがちゃがちゃ流れるのがなぜか、Metricの"Handshakes"。
Metricってなんでフランスの映画作家にもてるのかしらー?
10.12.2012
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