1.26.2012

[film] Extremely Loud and Incredibly Close (2011)

車のなかでこれが作品賞にノミネートされたと聞いてえー、だった。
Max von Sydowの助演男優賞はわかるけど。
Sandra Bullockも悪くはなかったけど。

公開直後のレビューをあれこれ読んで、原作読まなきゃ、と年末にざーっと読んだ。
原作との異同については、山崎まどかさんのブログに詳しく書いてあって、全面的に賛成。

http://romanticaugogo.blogspot.com/2012/01/blog-post.html

予告を見たとき、U2の"Where The Streets Have No Name"をバックにタンバリンで走っていく少年を見てちょっとだけじーんとしたものだったが、あそこまでだったか、と。

日曜日の朝に見ました。 AMC系列のシネコンでは、11時前の上映は$6で見れるの。
もうじき公開される映画だが、日本だとたぶんべたべたに気持ち悪い宣伝で埋められてしまうにちがいなくて、それには乗りたくなくて。

結局のところ、原作との対比でなんで映画のほうがだめなのか、になってしまうのだが。

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』というのは、死者(たち)のことだ。
それは主人公のオスカーにとっては、パパのことだし、その他911でいっぺんに死んでしまったひとたちのこと。
そんなに近くにいて頭んなかでうるさいのに、実体がなくて、ないくせに自分の考えとか行動をがじがじに縛る。 おそらくどこにいても一生つきまとって離れることはない。

それと同じことが、じつはおじいちゃんにもおばあちゃんにも起こっていた、ということが、過去や現在の手紙から明らかにされていく。
見えないものが宇宙レベル(→ホーキング博士)でいろんなものを支配しているらしい。 
偶然と必然とか、運がいいとか悪いとか、そういう話ではなくて、単にそういうふうに見えるし、あるんだからしょうがない。
それは発見であり発明であり、それをすることでみんな平和に暮らすことができる。 たぶん。
幽霊? 愛? うん、そんなもんかも。

「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」ものを通して911とドレスデンの爆撃がリンクする。
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」ものへの愛が強すぎて、オスカーは感情を失い、おじいちゃんは言葉を失う。
でも、でも、でも、とか、なんで? なんで? なんで? という自(他)問自(他)答が延々と続く。 R.D.レインの本みたいに。

なんで911なのか? なんであの父子なのか?
映画にはこの解がない。解を求めようとしない。そこを追わないから、単にあの事故で傷ついた子供と家族が回復するお話、にしか見えない。
もちろんそれによってそれなりの普遍性はもたらされるから、泣きたいひとは泣けるのだろう。 他のおなじような事故や事件の映画とおなじように。

でも、オスカーにとってはそうじゃないし、自分にとってもそうじゃない。
小説では、オスカーは(たぶん)治っていないし、ブランコに乗れるようにはなっていない。
泣いて終われるんだったらこんなに幸せなはなしはない。

あの事件が、あの、きれいに晴れた9月の火曜日の朝に突然起こったことについて、未だに納得がいかない、混乱してしまう自分がいる。 たぶん一生かけてもわからないと思う。

小説版は、この不可解さに対して無数の錯綜した補助線を引くことで、ひょっとして、のような何かを示すことに成功している、気がした。
少なくとも小説の、あの流れに乗っかることで、この事件の、或いはドレスデン爆撃の、あるいは広島の原爆の内側に立つことができるように思えた。
それがこの小説の、小説にしかできないことで、そこにあんまし文句はない。

映画版は、ここの肝心なところすっとばして、ナイーブできれいな家族のお話に矮小化してしまった。

この小説をそのまま映画にできる人がいるとしたら、"Magnolia"のPTAか、アルトマンくらいだろう。
アルトマンはやらないだろうけど。

あとはまあ、なめてるよね。
ブランコにも乗れないような臆病者のガキがあんなじゃらじゃらした格好でタンバリン鳴らしながらUpper WestからFort Greeneまで小走りで行けるもんか。
Manhattan Bridgeのたもとがどんな雰囲気だかきっとなんも知らないのだろう。

んでもさあ、これが作品賞にノミネートされるか。 くどいけど。

ちなみに、New York Magazine (Vulture)のWorst 10 Movie of 2011で、これは5位。
でも10本中8本見てて、結構好きなのもあるんだけど。 
しかも、"Shame"が6位にいるし…

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