10.24.2023

[film] Hunt (2022)

10月15日、雨ざあざあの日曜日の午前、グランドシネマサンシャイン池袋で見ました。
もう他ではやっていなくて。邦題は『ハント』、原題は”헌트”。

「イカゲーム」(みてない)に主演していたLee Jung-jaeが脚本を書いて初監督して主演もしている80年代の朝鮮半島を舞台にしたスパイ・アクションもの。

冒頭の舞台は80年代前半のアメリカで、韓国安全企画部(旧KCIA)の海外班長(対外肩書は次長)Park Pyong-ho (Lee Jung-jae)と国内班長(対外肩書は同じく次長)Kim Jung-do (Jung Woo-sung)が訪米中の韓国大統領の身辺警護にあたっていたのだが、テロリストがなだれこんできて一触即発の間一髪になり – Kimが犯人を射殺した - どこからどうやって場所の情報などが漏れたのか? - ぜったいなんか漏れてる – となり、KCIA内に二重スパイが潜んでいる疑惑が立ちあがり、情報部長はふたりにぜったい突きとめろ大統領になんかあったらどうする、って騒いで、もともと同じ組織のライバル同士だったParkとKimは互いに絶対向こうが怪しい・あいつが黒だ、って思っていて、それぞれのチームを率いてそれぞれに仁義なき探り合い騙し合いを始めて、そこに軍人だったKimの過去とか東京で起こった銃撃事件のこと – そこでの怪しい/謎のままになっている動きや人物、などが次々と明らかにされたり暴発したり、その反対側で決定的な証拠を持っていたり証人になりそうな人はあと少しのところで端から殺されたりいなくなっていたりで闇に消えていく。どこからか覆ってくるそんな闇をずっと相手にしているかんじ。

背景として80年代の北朝鮮と韓国の緊張関係や韓国の民主化運動などがあり(カンヌでのプレミア後、この辺を説明するために会話などが追加編集されたそう)、ここには冷戦時代のような厳格で動かしようのない「壁」があるわけではなく、民族の歴史なども踏まえて単純に善・悪に割ったり振ったりしきれないところもあるのだろうか - エモーショナルなところも含めていろいろ噴きだしていくので、画面上では怒鳴りあったり小競り合いしたり殴りあったり殺し合ったりが続いて相当に混みあっていてやかましい。のと、(自分がわるいのだろうが)中心のふたりが同じように見えてしまうことが多くていちいちえーとこれはどっち? になってしまうのだった。

はじめのうちはややPark寄りの視点で推移していくので、いつKimがその正体を、どのタイミングでどんなふうに現すのか、という重みづけをしつつ見ていくと、終盤の混乱と共にだんだんにわからなくなってきて、クライマックスのアジアのどこかの国での大統領が出席するイベントでのどんぱち – これが本当に起こったら軽く戦争になったっておかしくない – で泥沼的に明らかになって、それはそれはいろんな坩堝の泥沼であることがわかり、あーそうだったのか、と。

あれこれ筋の持って行き方は強引だしごちゃごちゃだし、ジャングルからのも東京の街中での銃撃もあんなふうに起こりうるとは思えないのだが、同じようなスーツを着てどっちがどっちを撃っているのかわかっているように思えない主人公たちの何かに取り憑かれてうなされた熱が終点 - にあるのはなにか? - まで彼らを走らせて、これは付いていけない、になることはない(当時を知る現地の人がどう思うかは.. どうなのかしら?)。

あと少しだけル・カレのスパイものにある非情や冷酷が、巨岩のように唐突に落ちてくる無念や絶望があったら.. って思わないでもなかったが、そもそもまったく異なる土地や人々の話なのだしー。

過去の映画の銃撃シーンやアクション映画からもっと学んだり最近のハリウッドから人を招いたりしてシンプルにスタイリッシュな画にすることだってできただろうし、それができていたら、と思わないでもないが、この最後まで全員がごだごだを抱えてリレーしながら一気に走ってしまう(デビュー作の?)勢い、これはこれですごいのではないか、って。

最近の邦画のしょうもない予告にある、どう見てもなんかの病を抱えているとしか思えない気持ちわるく暗いああいうの(あれってなんなの?)よか10000倍こっちの方がましだと思った。

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