10.10.2023

[film] Blackberry (2023)

10月3日、火曜日の晩、出張最後の日の晩があいたのでPicturehouse Centralで見ました。予告編だと公開は確か5日から、だった気がしたがなぜかやっている(ことは割とある)。

最近の若い子には「?」かもしれないが、00年代から10年代初くらいまでビジネス・コミュニケーションの世界を席捲して、iPhoneの登場によって跡形もなく消え去った世界最初(諸説あり)のスマホ – Blackberryが巻き起こした嵐 – というかあれってなんだったのか? をどたばたすちゃらかコメディとして描く。同系の起業ストーリーとしての”The Social Network” (2010)のような格(みたいなの)は微塵もないけど、当時を知るものとしてはあーあったあったわ、とかめちゃくちゃおもしろくてなつかしい(だけ)。

2015年に出版された“Losing the Signal: The Untold Story Behind the Extraordinary Rise and Spectacular Fall of BlackBerry”がベースで、監督は鉢巻メガネおちょぼ口の強烈なキャラで助演もしているMatt Johnson。

1996年、ITバブル噴火前夜にカナダで通信機器のベンチャー RIM – Research In Motionを立ちあげたばかりの見るからにおたくでギークのMike Lazaridis (Jay Baruchel)とDoug Fregin (Matt Johnson)のふたりが見映えゼロの営業をしにいったら会社をクビになった直情噴火型パワハラ野郎のJim Balsillie (Glenn Howerton)と出会って、Jimがやけくそで彼らがUS Roboticsとの間で抱えこんだ膨大な在庫なども含めてRIMを買ってCo-CEOとなり、テック系Mikeたちのアイデアを元に強引にカシオの電卓の殻とかでプロトを作らせて通信業者の間を引きずりまわして、結果爆発的に受注して誰も彼もがBlackberryの端末を持つようになり、問題がでたらその領域のトップの奴らを他から引き抜いて対処させたり、会社はでっかくなったものの、業後にみんなで映画をみるとかゆるゆるでフレンドリーだった会社のカルチャーは失われていって…

それまで携帯とPager(ポケベル)とPalm(電子手帳みたいなの)レベルだったとこに電話とEメールが一体化したのが大きくて、ただ機能レベルでどうというよりウォール・ストリートの銀行系がみんな手にしてバーでも街角でもいつでもどこでも見せびらかすように使い始めたのと、911の混乱時にも切れずに繋がって使えた、というあたりが大きかった – そういうのを見たり聞いたりしてうちもやらなきゃ、ってドミノで爆発的に広がっていったような。でも打ちにくくて指が痛くなるっていうのは割とみんな言っていた。

で、あまりに広がりすぎてVerizonと問題起こしたあたりも思いだしたー。

Blackberryの登場は今や割と当たり前になっている方に生活と仕事を大きく変えて、これのせいで深夜でも土日でも家でふつうにメールを見たり打ったりするようになり、メールを見たらPC開けなきゃいけなくなったりいろんな逃げや言い訳がてきなくなった。ライブの時も集中できなくなった。

iPhoneが出てきた時も端末の値段が高すぎるのと、フラットでボタンがないのはかえって打ちにくい、っていう声があったり懐疑派 – そんなにすぐには変わらないんじゃないか - はいた、けどあっという間に消えちゃったのは(映画を見ると)やはり自滅に近かったのだな、と思ったり。

根無し草インディー/ギークの成功物語、というよりは、なんであんなのが成功することができたのか、ほうらやっぱり転げ落ちてしまった … その失敗というよりその始めから終わりまで誰も止めることができなかったしょうもないかんじを粗々でせわしないドキュメンタリーみたいな画面、映画というよりTVドラマみたい - も含めて一気に撮ってぶちまけたような。悲しみも悔しさも悲壮感もなんもない、賢いやつらは早々にすたこら逃げちゃったようだし。

やろうと思えばイノベーション寄りのテック企業物語にすることもできたはずだが、そっちではなくむしろイノベーションなんてこんな程度のノリ一発なあれでしかなかった、というのを当時のゆるゆる子供 vs 怒髪天ハゲの攻防のなかに描く。今だったらコンプラで通報されて即アウト。個人的な感想だけど、アイスホッケー好きってパワハラ傾向値たかい。

音楽はすばらしくよくて、車内でがんがんにかかっているNOFX “It's My Job To Keep Punk Rock Elite” (1997)から始まり、Elasticaの”Connection” (1995)がほぼ主題歌で、Slintの”Good Morning, Captain” (1991)とか、懐メロのように”Love Will Tear Us Apart”がかかったり、最後には、The Kinksの”Waterloo Sunset”が流れてくる。どうしてこれかというと、オンタリオのWaterlooという町が舞台だから。

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