4月8日、土曜日の晩、菊川のStrangerのチャン・リュル監督特集で見ました。
モノクロ(最後に少し… )の韓国映画。この監督のは見たことなかったし、どんなものかなー、くらいで。 原題は”춘몽” - 翻訳にかけると「春夢」、英語題は”A Quiet Dream”。
テントみたいな掘立て小屋みたいな居酒屋「故郷酒場」- 看板は「酒慕」?だったか - があって、ひとりそこのカウンターに立って客の相手をするイェリ(ハン・イェリ)とずっとそこのカウンターに入り浸っているぱっとしない3人の男たち - もう若くはなく中年なりかけかほぼ中年 - のだらだらうだうだした、春の夢のような毎日を描く。
イェリは父親が仕事でやってきた中国で浮気して生まれた子で、母が亡くなった後、父を追って韓国にやってきた。居所をつきとめた父親(イ・ジュンドン)は今や寝たきりの車椅子生活で喋ることもできずにイェリがずっとひとりで彼のケアをしている。
チンピラのイクチュン(ヤン・イクチュン)は元気で威勢はよいけど、少し前に組で問題を起こしたらしいことがたまに寄ってくるやばそうな連中とのやりとりでわかる。
寡黙な脱北者のジョンボム(パク・ジョンボム)は勤めていた工場を解雇され、未払いの賃金を払ってもらうべく経営者の行き帰りの車の前に立ちはだかってお辞儀をしているのだが、相手にされないままで、ずっと躁鬱病のタブレットを飲んでいる。
自称金持ちのぼんなので働かなくてもよいらしい大家のジョンビン(ユン・ジョンビン)はイクチュンとの凸凹感が楽しいのだがたまに癲癇の発作を起こして倒れてしまう。
他には、イェリに想いを寄せているらしい少女(イ・ジュヨン)がいて、いつもバイクに乗っているかサッカーボールを蹴っているかで楽しそうにやってくる。
全員がすごく仲がよいようにも見えなくて、することがないし行くところもない半端な連中で、ただそこにいて酒を酌み交わしてほんとどうでもいいこと - どうでもよすぎて内容残っていないわ - を喋ったりうろついたり国立のアーカイブに(タダの)映画を見にいったりしているだけ。 飲んでばかりのホン・サンスの映画の登場人物のほうがまだ欲望に駆られて具体的な行動を起こしてくれるのでわかりやすい、と思う。
話が進んでいるようないないようなアキ・カウリスマキのオフなかんじもあるが、軸がなさすぎてオンもオフも関係なく、ただ散らかしたままみんな平然とうろうろしていて、それがなにか? - まあそんなもんか、って。
入ってくる客だと、明らかにやばい目つきで拳銃を散らつかせてなんかぶつぶつ言って去る若者 - TVのニュースにでてくる、とか、ジョンボムの昔の彼女(シン・ミナ)とそのお付きの男がアメリカに一緒に来て、って頼みにくるとか、動けないはずのイェリの父が突然ひと言発したり目を開けたり、とか、粗大ゴミ置き場の小さな物置に入って祈りごとをする、とか、高台から川の向こう側を眺める、とかどれもリアルとは思えないし、このままずっと続いていくとも思えない、でもところどころ生々しく目醒めたあとにも断片だけが残って張り付いている夢そのもののような、と思い始めたところで唐突に映し出されるあれが。
世間一般で言われる生産性のある人々ではまったくない彼ら - というレッテルとは別のところで、こんな土地でこんなふうに暮らしていて、そのリアリティが云々、という話もどうでもよくて、それでも彼らがそこにいるであろうことはとてもよくわかるし、いてくれてなんかうれしいの(伝わるかどうか)。
いまのこの状態は目醒めた後なのか目醒める前なのか、それをそう思わせているのはどこのどいつなのか、それがわかったからと言っていったいどうしろというのか、などについて、酔っぱらいの戯言のように並べてみてうーん、なんかすっきりしないからもう少し寝ていようかな、っていう春の夢(ぜんぶ許す)。
4.16.2023
[film] 春の夢 (2016)
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