4月1日、土曜日の昼から午後にかけて、シネマヴェーラの特集『香川京子 畢生の純情派』から2本続けて見ました。
香川京子さんは、2003年にNYのリンカーンセンターで小津の生誕100年の特集上映があった時、『東京物語』(1953) のトークで登場して、結婚したあと、夫の駐在についてアストリアに住んでいたと聞いていいなー、って。アストリアよいとこ。
原作は壷井栄のデビュー短編集『暦』(1940)から、監督は久松静児、脚色は井手俊郎、中河百々代。
小豆島の見晴らしのよい一軒家に杉葉子と香川京子の姉妹が暮らしていて、両親は他界して、二人は生き残っている5人の姉妹のうち、結婚していない4番目と5番目で、杉葉子は学校の先生で庭に朝顔を植えてでっかい花を咲かせる・結婚なんてするもんか、って元気で、香川京子は留守番と家事をしつつ、畜産農家で働く舟橋元とこっそり会って – デートについてくる豚たちかわいい - 結婚を考えたりしている。
今年は両親とか祖父母のx回忌とかいろいろ重なるので法事をしましょう! ずっと会っていないお姉さんたちを呼びましょう! って姉妹は広島にいる長女の田中絹代、大阪にいる次女の花井蘭子、東京にいる5女の轟夕起子に手紙を書いたり、東京出張のついでに会ったりして手はずを整える。
最初に帰ってきたのが夫の三島雅夫と大喧嘩をしてもう絶対に戻らないという勢いの花井蘭子で、次が5人の子供を抱えて貧乏生活がとまらない田中絹代、最後に夫が労働争議で収監されている轟夕起子が現れて久々の再会を喜んだ後に、いろいろ事情はあれど結婚したってロクなことはねえぞくそったれ、って互いの家の愚痴合戦になり、そこに結婚反対派の杉葉子がそれみたことか、て乗っかるので、この機会にみんなの前で自分の結婚のことを切り出そうと思い詰めていた香川京子はどうしよう.. ってなって、それでも意を決して、舟橋元から貰った首なし鶏一羽を差し出してわたし結婚します、って言ってみると、その場の一同大爆笑になったので、彼女は泣いて家を飛び出しちゃうの。
時間が経つと轟夕起子が慰めてくれたり、他の姉たちもおめでとうよかったね、って言ってくれるのだが、なんであそこで突然爆笑になっちゃったのか、ちょっとわからないかも。まずはふつうにおめでとう、ではないの?
でもとにかく、法事が終われば姉たちは散々文句をぶちまけていた自分たちの家に - 田中絹代はお腹を空かせた子供たちが心配そうだし、花井蘭子は夫が来てくれたのでご機嫌直っているし – いそいそと戻っていくので、杉葉子はふん! っていつもの自分に返るの。
みんなそれぞれ、いろいろ大変だけどよかったねがんばろうね、みたいなとこに落ちて、映画はそんなんでも家族があるといいよ、のようなかんじなので、杉葉子がんばれ、になる。あんなよい場所に一軒家でひとり暮らしできるなんてうらやましいし。
あと、とにかく豚さんがー。
暁の合唱 (1955)
↑のに続けて見ました。フィルムセンターの16mm - 途中でリール交換タイムが入る。原作は石坂洋次郎の同名小説 (1947)、脚色は八住利雄、監督は枝川弘。
香川京子は女子大の試験に向かう朝、成績優秀だったので試験は心配していなかったのに、家の弟の将来のこと - パイロットになりたいって - を考えてしまい、試験場に行くのをやめて、そこに貼ってあったバス会社の求人広告を見て、その場で申し込んで住みこみの車掌として働き始める。はじめは車掌でも将来は運転手になりたい、って床磨きから入って、事務所では社長の小沢栄太郎の他、社長の甥で遊び人の根上淳とか、運転を教えてくれる運転手の高松英郎とか、いい人たちがいっぱいで、彼女が盲腸で倒れるとか立ち往生したバスでのお産がはじまるとか、困難がやってきてもみんなやさしく手伝って協力してくれて、運転免許も取ることができるのだが、最後にはやっぱり結婚話を持ってきた社長の前に屈して(あんなの断れないし)その相手がたいして好きそうにも見えない根上淳なので、えー、ってなり、結末はあまりに安易だし気持ちわるいし。
バス路線でのそこに乗り合わせた人々を巡る出来事が「よい話」の方に転がってほんわかする系のお話しだけど、なんで終点に結婚がいるねん?
50年代にっぽんのこういう家族が絡むコメディ、おもしろいのはおもしろいから今後も見たいけど、結構きつくなってきたかも。 結婚や家を出ること作ることを巡る騒動があっても、結局、結婚するのが一番だし子供をいっぱい産むのがあたりまえだし。で、そのメンタリティは今の今までなーんの反省もなく維持されたまま、個々の人としてはみんなよい人で、悪意なくにっこり笑いながらぐいぐい押しつけてくる。戦前からずっとこのまま芋づるの官民一体で。この目の前にある気持ち悪さをとりあえず横に置いて昔話を楽しむ、なんて芸当はムリだししんどいし。リアルはこんなもんじゃない甘えるな、とか言われそうだし。
4.06.2023
[film] 女の暦 (1954)
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