8.09.2021

[film] Black Bear (2020)

8月7日、土曜日の昼間、英国のMUBIで見ました。
“Ingrid Goes West” (2017)がすばらしかったAubrey Plazaが主演で、プロデューサーとしても入っている。
二部構成で、第一部が“The Bear in the Road”、第二部が“The Bear by the Boat House”。クマ好きなので。

冒頭、Allison (Aubrey Plaza)がひとり、やや靄のかかった湖畔に突きでたデッキの上で、赤いワンピースの水着を着て湖水の方を向いて座っている。笑ってはいないし寛いでいるかんじもない。このイメージは映画の中で数回繰り返されて、これが何かの起点としてあるのか、何かが起こってしまった後の状態なのかはわからない。

第一部は、Allisonが車で人里離れた湖畔の家にやってくる。そこにはGabe (Christopher Abbott)とBlair (Sarah Gadon)の夫婦が住んでいて、元女優で映画を何本か撮っているAllisonは新作を書きにやってきたらしく、GabeとBlairとは特に親しい間柄ではなく、知り合いの知り合いを介してこの家を紹介して貰った程度で、夕食の席でGabeは売れないミュージシャンだったこととか、Blairは妊娠していることとか、ふたりの口論する様子から、夫婦仲があまりよくなさそうなことも伺えて、でもAllisonには関係ないしどうでもいいし、って夜中に湖で泳いでいるとGabeがやってきて、Blairの妊娠は間違いだったんだとか言ってべたべた始めたらその現場に怒り狂ったBlairが現れて、その際のどたばたでBlairは出血したって大騒ぎになって、Allisonは車を出して医者に向かうのだがー…

第二部は、第一部とはぜんぜん関係ない、というかひょっとしたらどこかで繋がっているのかも知れないが明確ではなくて、ここでのAllisonは湖畔 - 同じ湖畔 & 建物もおなじ - で撮影中の映画の主演女優をしていて、Gabeはその映画の監督で、Allisonの夫でもある、という設定。Blairも同じ映画に女優として出ていて、Gabeとは仲がよくて、Allisonもそのことを知っている。 撮影現場でのGabeはAllisonにきつくあたって、気に食わないならBlairを主演にすればいいでしょ、とか言うのだが聞き入れられず、Gabeが虐め続けた状態でなんとか撮影を終えて、終えたあとのパーティでやはりGabeはBlairとくっついていくと…

第一部でAllisonが書こうとしたストーリーが第二部の映画に繋がっていくのか、第二部で撮影している映画のなかみが第一部で展開された内容だったのか、それともまったく関係のない2本なのか、どうとでも取れるかんじで、どちらにしてもGabeはやや情けない浮気性のミソジニストの役で、Blairはやや不安定で落ち着かなくて、男性に寄っていくタイプの女性で、AllisonはBlairとは対照的に自分のやりたいように強く出るタイプで、この3人が静養にやってきた山荘で、あるいは映画撮影の現場で、どんなふうに交錯したり衝突したりするのか。 そしてそこに唐突に出現するクマ。そいつがどんなふうに現れるのかは書きませんが、クマとは一体なんなのか? なんでここにクマなのか? などなど。

精神分的の観点から、言おうと思えばなにか言うことができるのかもしれないし、こないだの”The New Mutants” (2020)に出てきたようなあれ、なのかもしれないとか、いろんなことを考えることができて楽しい。なによりもAubrey Plaza = Allisonがいて、彼女があんなふうになったところにクマが現れることについて、ちっとも違和感がないところがすごい。ここはヘビでもアリでもカエルでもありなのかもしれないけど、クマの説得力には敵わない気がする。

第一部にはフェミニズムを巡る議論も出てきたりして、たぶんAllisonがデッキに座って見つめる湖の奥にあるのはその辺の靄で - 撮り直しを要求されたりもしてるし - ここに山の獣を放ったのは間違っていない。やっちまえ、の怒りが渦を巻いていて、Aubrey Plaza かっこいいなー、しかない。

クマの出没は増えているけど、できれば駆除しないでそのまま山に返してあげてほしい。



低気圧とかウィルスとか、まだまだ困難は続くものの、ずうっと吐き気を催させ続けてくれたイベントがひとつ、ようやく終わった。昔からだいっきらいなやつだったが、改めてぜんぶ嫌になった。特にメディアとか代理店とか、要は間で媒介する連中のレベルの低いこと。もちろん、それらを背後から操ろうとしても無能すぎてバカを晒すクズな委員会の連中とかも。こんなふうにしてファシズムは立ち上がるし戦争も起こるのだってようくわかったので、やはり脱出計画を考えよう。
 

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