20日、木曜日の晩、BFIで見ました。新作のアメリカ映画。
オハイオのぱっとしないダイナーでQueen (Jodie Turner-Smith)とSlim (Daniel Kaluuya) - ところでQueenもSlimも最後までこの名前で呼ばれる/呼びあうことはないの - が最初のデートをして、会話も弾まなくて互いにこりゃ失敗だわ.. って気まずいかんじで車で送っていく途中、後ろからポリスの車に止められ、明らかに差別的・侮蔑的な意図と目線でSlimを尋問して車のトランクをチェックしたりするので、弁護士のQueenが抗議して電話で通報しようとしたらポリスは銃を抜いてQueenの足を撃ち、そこをなんとかしようともみあったSlimは誤ってポリスを射殺してしまう。
しばしの沈黙の後、ふたりでどうする? 自首しようか?とSlimはいうのだが、事情を知るQueenはそれをしても裁判では100%負けるし一生シャバには戻れなくなるよ、と言うのでふたりで逃げることにしてその場その場で車を奪ったり換えたり、知り合いを頼りつつキューバに高飛びできるかもしれないマイアミを目指すことにする。
警察の車のカメラで撮られていた事件の顛末は報道され、ふたりは銃を持った凶悪犯として逃走中、って捜査線が引かれてしまったので、そこらのガキに食べ物を買ってきてって頼んでも、あ、顔しってるよ、とか言われてどうしようもない。 そこで貸しがあるというQueenのおじ(Bokeem Woodbine)の家にしばらく匿ってもらい、そこでQueenはドレッドをばっさり切ってタイトなトラ縞ドレスに、Slimも頭を丸めてちんぴら風になり、車も替えて見送られて旅立つの。
そこから先の逃避行はクライムムービーからアメリカを東に横断していくロードムービーとなって、いろんな局面で助けてくれる人くれない人いじわるな人など(肌の色関係なし)がいて、彼らの逃走に連なるBlack Lives Matterの抗議行動が描かれ、他方でダンスホールでのやりとりなんか溶ろけて素敵で、これらを通して当初はつんつん喧嘩ばかりしていたふたりの距離が縮まっていくところがよいの。でも、それでもそもそもなにも悪いことをしていないのになんでこんなところまで来ちゃったんだろう.. っていう辛さとか哀しさはくるし、あとは怒りだよね。断ち切りたいのに向こうがふっかけてくる憎悪を一体どうしたらよいのだろう、っていう絶望。
史上に残る名作『夜の人々』(1948)のふたりと比べるのはおこがましいかもだけど、あの映画が痛切なメロドラマを通して当時のアメリカの風景おおよそを見せてくれたのと同じように、この映画も突然糸を切られてしまった主人公たちの彷徨いを通して今のアメリカの荒んだの美しいのいろんな景色を見せてくれる。 美しいのは美しいから、見ていてとってもつらくなる。
監督のMelina Matsoukasさんはこれが監督デビューで、ファーガソンの件とか一連の事件を見て脚本のLena Waitheさん - “Ready Player One” (2018)のAechのひと – と一緒に一挙に書きあげて撮ってしまったという、そういう勢いはとってもある。
途上のサバナでふたりを匿ってくれるおうちにChloë SevignyとFleaの夫婦がいて、やや変なかんじだった。よい意味で。
2.24.2020
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