14日、日曜日の晩、CurzonのSOHOで見ました。邦題は『死なない死人』しかないと思う。
以下、たぶんネタバレしている。こないだのカンヌでお披露目されたJim Jarmuschのオールスターゾンビ映画。
アメリカの田舎のCentervilleていう小さな町で、農民のMiller (Steve Buscemi)から通報 - チキンを世捨て人のHermit Bob (Tom Waits)に盗られた - を受けた警察のCliff (Bill Murray)とRonnie (Adam Driver)が森のなかを歩いてBobを見つけるのだが、いつものように適当にごまかされるので、もうやるなよ、くらい。
帰りの車とみんながいるダイナーで、夜なのに陽が落ちないこととか時計や携帯が止まったとか北極の異常事態(polar fracking)のことが話されて、月が怪しく光っていて、Hermit Bobは怪しいキノコを見つけて.. これは出るぞ出るぞと見ていると最初にIggy PopとSara Driverの二匹が現れてダイナーにいた女性を食べてしまう。そこから先は地中からわらわら湧いてくるゾンビたちに向かいあうことになったCliffとRonnieとMindy (Chloë Sevigny)の地元警察(メガネトリオ)、Scotlandから来たらしい妙な葬儀屋の主人Zelda (Tilda Swinton)とか、雑貨屋とハードウェア屋のHank (Danny Glover)とBobby (Caleb Landry Jones)のふたり、少年拘置所の3人の子供たち、Clevelandから車でやってきたヒップな若者たち3人(Selena Gomez他)のそれぞれに戦ったり逃げたり喰われたりしてしまう様子、なんとなく喰われないままそれを遠くから見ているHermit Bob、などが果てのない夜に向かって交錯していく。
特定の誰かが悪いとか前世からの因果か、とかいう話でも、特定・特殊地域でのなんかが、というよりもそもそも地球とか地軸がぶっ壊れているらしく、原因がどうの、をどうにかしてみたところで収束するような話ではないみたい。どうしようもない。あーめん。
音楽は、Sturgill Simpson(彼、Guitar Zombieとしても出てくる)の”The Dead Don't Die”が何度も、頻繁に流れてくる。”Stranger Than Paradise” (1984)で Screamin' Jay Hawkinsの"I Put a Spell on You"が呪いのように響いていたのと同じように。Cliffが「なんでこの曲ばかりが?」と聞くとRonnieは「だってこれ、テーマ曲だもん」と。同様に後の方でのふたりの会話から、この話がメタ・フィクションであり、今の我々の世界にそのまま繋がっていることがわかってくる。だから(会話には”Zombie”とか”Ghouls”とか出てくるけど)湧いてくるのは”The Dead”であり、これらが死なないで外をずるずる歩いていること、その数の多いことやばいことときたら。
なので、ex-Ghost BustersだったはずのBill Murrayも不敵なKylo RenであるはずのAdam Driverもぜんぜん頼りないし、Chloë Sevignyはめそめそ泣いてばかりだし、唯一浮世離れした存在感を見せるTilda Swintonさんときたら..
頭を吹っ飛ばさない限りこちらに向かってきてひたすらヒト肉を食べようとする死者たち、それがどうして嫌かと言うと死んでいるから話しなんて通じないのに、機能しないから食べてもしょうがないのに、愛がないから殖えてもしょうがないのに、自分たちの仲間に引き入れようとするから。頭の中には砂しかないのになんでそんなやなことするの? できるの? 死者を冒涜するその挙動が生者を脅かして貶めて仲間にひきいれて無間のループとその渦面積を爆発的に広げていく、その救いのなさときたら。
はて、この光景、どっかで見た気が…
後にしみじみ残るのはJim Jarmuschの今の世に対する怒りと絶望の深さで、同じ化け物を扱った”Only Lovers Left Alive” (2013) なんてとってもロマンチックだったのになあ、って(タイトルも対照しているかも)。George A. RomeroのZombi映画 – そういえば彼も”Dead”呼ばわりしていた – の底の抜けたのと同質の暗さを感じた。いまのアメリカの、赤い帽子被ったバカ共、みんな喰われちまえ、とか。
しかし、Tom Waitsだけはどこに行っても不死身だねえ。”The Ballad of Buster Scruggs” (2018)もそうだったけど。
それにしてもIggy Popは、あれだけ? あれじゃふだんと変わらなさすぎない?
7.18.2019
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