2日、火曜日の晩、BFIの7月の特集 - “Salon Mexico: The Golden Age of Mexican Cinema”で見ました。英語題は”Victims of Sin”。
昔のメキシコ映画というと、おおむかしに「メキシコ時代のルイス・ブニュエル」ていう特集があって、どれ見ても驚異的にハズレがなくて、だからこの特集のも外れるわけなかろう、と。
監督はEmilio Fernándezで、この作品はフランスでは興行的に成功したのだそう。日本では公開されていない?
娼婦がたむろしている赤線地帯にキャバレーChangóがあって、オーナーはやくざのRodolfo (Rodolfo Acosta)で、Violeta (Ninón Sevilla)はキューバから来た踊り子で、歌って踊ってみんなを盛りあげるのが得意で、冒頭に床屋でぴかぴかに磨いてもらったRodolfoが粋がってかっこつけて店に入ると、店の娘Rosaがお腹にあなたの子が.. てやってきて、でも相手にしないでいると子供が産まれて店の女性たちはかわいがるのだが、Rodolfoはふざけんな、って仕事をとるか赤ん坊を取るかだ、って迫るとRosaは泣きながら赤ん坊をゴミ缶に捨てちゃって、それを聞いたVioletaはRosaにビンタしてあんたなんてことすんのよ、ってゴミ缶のとこまで走っていって赤ん坊を抱きしめて自分の子として育てることにする。
けどそういうことしたのでChangóを追われたVioletaは、子供を育てる必要から街角に出てひとり営業せざるを得なくて、そうして知り合ったSantiago (Tito Junco)から彼の店に来るように言われて、線路際のその店はうらぶれたかんじだったのだがVioletaの踊りでぱーっと盛りあがって繁盛し、SantiagoとVioletaは赤ん坊も含めて一緒になって幸せに暮らしていったのだが、それが気に食わないRodolfoが決闘の末にSantiagoを殺してしまい、そしたらVioletaも負けずにRodolfoに復讐する。もちろんVioletaは刑務所行きになるのだが、街角にひとり取り残された坊やの運命は…
メキシコの裏街道モノかと思って、筋運びはそんなふうなのだが、実際には歌や踊りでどんちゃか楽しく盛りあげたりしながら苛酷な運命を引き受けてたくましく生きていく女たちの姿が一番印象に残って、なので上映前の配布資料には溝口の映画への言及(『赤線地帯』よね?)もあったりするのだが、いやそう簡単に比べられるもんでもないのでは、とも思ったり。
最後のほうはひとりストリートのホームレスになった坊やがママとの面会に向けて自分を励ましながら新聞売りや靴磨きをしてお金を貯めて母の日に靴を買ってあげようとするのだが... ていう泣かせる展開になり、つまり”Victims”の層が社会の隅々にまで広がっていく、その悲惨さも含めてなんとか大風呂敷のメロドラマにまとめあげようとしていて、そこにVioletaの情熱的なルンバとか立ちあがる女性たちの像とかが被さるとなんかじーんときてしまうの。よいドラマだねえ、って。
ブニュエルの作品の時にも思ったのだが、当時のメキシコ社会のありようを悪や倫理もひっくるめて俯瞰できるような描き方をしていて、そこってすごい、というか映画ってそもそもそういうもんであるべきなのよね、って改めて。
この特集、他の作品も見たいけど他の用事とかいろいろ入っていてなー。
7.08.2019
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