6.04.2019

[film] Rocketman (2019)

5月29日、水曜日の晩、Picturehouse Centralで見ました。

誰もが知っているElton Johnの評伝映画。そして誰もがこないだの”Bohemian Rhapsody” (2018)と比べてしまうであろう(主に70年代の英国)音楽映画、でもある。

こんなの比べてどうなるもんでもないし、音楽好きならどっちも楽しく見れるよ、でおわりなのだが、比べることでなんか見えてくるものがあったりするのだろうか。(ない)

どちらも曲を作って歌う英国人のお話しで、ヒットメーカーとしてアメリカも含めて制覇して、どちらもホモセクシュアルで、どちらも一旦乱れて壊れて復活してて、でも片方はバンドのはなしだし、片方は既に故人だし、ポップスとロックていう違いもあるし、などなど。

なんかただ、素敵な曲を改めてでっかい音でぱーっと聴いてみたい、それだけのかんじもして、それでいいじゃん。

山椒魚みたいに毒々しい悪魔の恰好 - ステージからそのまま来たらしい – でふうふう言いながらセラピー施設に現れたElton John (Taron Egerton)がぼそぼそと回想を始めるのが冒頭。幼いReginald 'Reggie' Dwight (Kit Connor)が母(Bryce Dallas Howard)と祖母と疎遠な父の間で音楽に目覚めRoyal Academy of Musicに学んで、バンド活動をするようになり、やがてElton Johnと名乗ってBernie Taupin (Jamie Bell)と出会い、曲を出していってアメリカで大当たりしてスターになって。 その反対側で恋人のJohn Reid (Richard Madden) のこととか冷たい父親のこととかいろいろあって、ドラッグに溺れて天国と地獄の間を往ったり来たりするの。

Elton本人もいろいろインタビューで喋っているし、Taron Egertonとデュエットしたりもしているし、積極的に制作に関わっているようなので内容の真偽については(濃い薄いはあるにせよ)間違いないのだろうし、こんなひどかったけどなんとかなっているよ、ていうのかこんなひどかったけど音楽は不滅だよ、っていうのか。タイトル曲の"Space Oddity"的な遠距離・位置の取り方も含めて「ここにいるよ」の映画なのだと思った。 "Space Oddity"ほどの切迫感、切なさはまったくないけど。

構成としてはセラピーセッションで独白・回想していく姿と、そこで回想された過去と、その過去のなかで暴発するドラッグによる記憶の混濁と妄想と、それを現時点から振り返った歪みとが団子になったところに彼の歌が被さってそこには常に音楽があった - 救いなのか賛美歌なのか演歌なのか、とにかく歌があったんだよ、って。 おめでたいかも知れないけどそういうことなのだ(バカボン)、って。

こういうところから”Bohemian Rhapsody”と比べてみると、こっちのが楽しかったかも。Queenの方はずっと聴いていたこともあってついきつくなってしまうのかもしれないね。

自分が洋楽を聴きはじめた70年代後半頃って、映画にあるようにEltonはほぼ死んでいた状態だったのか、ほぼまったく聴く機会も聴きたいとも思わなくて、Bernie Taupinとのコンビが復活した(湯川れい子さんがラジオで興奮していたことはよく憶えている)時でも”I’m Still Standing”は(個人的には)さっぱりこなかったし、おそらくそこからだいぶ経って、70年代のアメリカのSSWとかを掘っていった道行きのどこかでぐるりと回ってぶつかったのではなかったか。

そして、Elton Johnの曲ってこんなに歌って楽しいものなんだね、て思ったのは映画 “27 Dresses” (2008)で、Katherine HeiglとJames Marsdenのふたりがバーで"Bennie and the Jets"を熱唱するあたりだったかも。

日本でもQueenのみたいに当たって、みんなに聴いてもらえるといいな。

あと、日本で同様のサイケぽい音楽映画を作るとしたらまず遠藤賢司の『不滅の男』をやってほしい。

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