5.04.2019

[music] Otoboke Beaver

2日、木曜日の晩、The Scalaで見ました。

このThe Scalaっていう会場は元々映画館なのだが、1972年、Iggy & The Stoogesがライブをやったり、ロンドンでレコーディングされた”Raw Power”のジャケットはここで撮られたもの、とか、Lou Reedの”Transformer” – これも72年 - のMick Rockによるジャケットもここで撮られた、とか。
1979年にはStephen Woolleyがインディペンデント、アングラ映画のレパートリー上映の拠点として立ち上げ、この映画館時代も多くの伝説にまみれていて、JG Thirlwell (Foetus)をはじめいろんなミュージシャンがたむろして、そのうち『時計仕掛けのオレンジ』を違法に上映してワーナーに訴えられ93年に潰れてしまうのだが、要はそういう神話を背負ったVenueについに来たんだわ、って。 

ところで最近はもうぜんぜん新しい音楽聴いてなくて、聴いてもSharon Van EttenとかSnail MailとかJulien Bakerとかだいたい女性のばっかりで、理由はなんでだかわかんない。
同様に日本の自称「ロック」にはもうすっかり絶望していて今の日本の政治のあんなひどいありさまになんも言わずに寄り合ってフェスだなんだ浮かれている連中はもうFyre Festivalみたいのに送りこんでそこで勝手に干上がってしんでほしい。聴く気にもなれない。

でもなんで彼女たちのは行く気になったのかというと..  なんでだろ?  おとぼけたビーバーだったからとしかいいようが…

こういう日本から来るバンドのライブって狭い日本人コミュニティでも宣伝されたりするので会場で知っているひとに会う(会社のひととかさいあく。会ったことないけど)のがとっても嫌なのだが、日本人ぜーんぜんいなかった気がする。いつも行くライブのように前方にイキのいい現地の若者がひしめいていて、後方で枯れた年寄りたち(含.自分)が穏やかにビールとか飲んでいる。

前置きが長くなったけど、いろんな意味でとっても楽しみで、でも同時にものすごく疲れてもいたので、おうちで少しだけ寝てから行って、9時少し前に着いたら前座(対バンだったのかしら?)のSay Sue meが始まるところだった。

女性がまんなかの4ピースで、「遠くからきました」と自己紹介して、シューゲイザー手前、極甘期のジザメリテイストのギターポップを。 そんな嫌いではないけど、30年前に出会っていればねえー、くらいの音。

始まる前のセッティングは楽器ケース担いだふつうのかっこしたメンバーがステージにあがって衣装に着替えて自分達でいちから楽器も繋いで、なのであっという間に始まる。事前に少しだけ動画は見たけど最初の20秒くらいで、あ、これはじかで見ないとだわ、ってすぐ切ったのでほぼ初めてで、最初の出会いのスイッチの入り方ときたら、すばらしく理想的、瞬間で恋におちるかんじ。

分類としてメタルなのかハードコアなのかパンクなのか、あるいは地下アイドルとか呼ばれる枠に含まれるのかわからないし、それらの最前線がいまどんなふうになっているのかさっぱりなのだが、すばらしいボトムのスピードとドライブ、その回転する扇風機の羽に臆することなく噛みついてぜったい離さないヴォーカルの立て板の鮮やかさ、さらにその隙間に超絶餅つきの気合いで差し挟まれる合いの手におうおうすげえな、とならざるを得ず、周囲にいた年寄りも最初は笑っているのだがだんだん前のめりになっていくのが痛快。

ひとつひとつは短い曲だけど都度急速沸騰してあがっていくので、フロア前方の押し合いは最初から泥くそまみれで、でも彼女たちときたら「しーっ」ていう沈黙も含めて闘牛士みたいに場を完全に統御しててかっこいいの。 あと、前方の現地人がどこで覚えたのか「呑んで!呑んで!呑んで!呑んで!」コールを起こした時、あきれたように”Bad Culture!”って吐き捨て、二度目に起こったときは”FUCK”ってひねり潰す。 いいなー。

演奏は技術的にどれくらい巧いのかとかあまりわかんないけど、結構段差やつんのめりが多い楽曲で下ブレも上滑りもしない音の粒立ちは見事だし、スネアを2度ぶっ壊す破壊力も目を見張る。とにかく全員が音に没入する姿がかっこいいったら。 ぜんぶで1時間丁度くらい。アンコールは1曲づつのを計3回、曲が終わるとすたすたドアの向こうに消えていってしまうその去り際が映画みたいですてき。

なんか個人的には90年代初にグランジのゲロまみれとか渋谷系の肥大したエゴに辟易していたころに、彼方から彗星のように現れた(ように見えたの)少年ナイフの登場の仕方に似ている気がした。つまりメシアってことよ。

売ってた「いてこまヒッツ」は当然買って帰る。「ゴールデンウイーク」のお土産に。 歌詞もとっても深くておもしろそうなので正座していてこましてみたい。

またきてほしいなー。

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