2.23.2018

[film] Fucking Åmål (1998)

14日のValentine’s Dayの晩、映画見るくらいしかすることがなくて、でもへろへろだったので1本だけ見て帰った。

BFIではこの日、Valentine’ Day Screeningのプログラムをやっていて、これの他には”Casablanca”とか”Moulin Rouge”とか”The Way He Looks” (2014)とか”Waiting Women” (1952)とか。”Waiting Women” はベルイマンので、Valentine’s Dayにまで見たいかしら? って。 プログラム構成はNYのBAMとかMetrographのと比べるとまじめで王道だよねえ。

見ることにしたこれはスウェーデンのLukas Moodysson  - “Together” (2000) -『エヴァとステファンとすてきな家族』とか”We Are the Best!” (2013) - の長編デビュー作。英語題は”Show Me Love”。 16mmのオリジナルをデジタルリマスターした版。 すんばらしくよかった。

Åmålていうのはスゥエーデンの小さな町の名前で、主人公のAgnes (Rebecka Liljeberg)とElin (Alexandra Dahlström)とかがあーつまんねえって言いながら悶々と暮らしていて、おとなしいAgnesはいつも自分の部屋に籠ってPCとかカタカタしているので両親も少し心配していて、Elinは姉のJessicaとつるんで校内の人気者で遊び番長で、AgnesはPCに「Elinのことが好き」 とか打って溜息ついている。Elinたちは慢性的にパーティ行きてえーずっと遊んでいたいー ってぶうたれてて、でもレイヴ(ってあったねえむかし)はよくないとか言われたので、からかい半分で全然人の集まっていないAgnesの家のパーティに行ってみる。

こうしてElinたちは遊び半分でAgnesの部屋に入ってPCの書き込みを見ちゃって、それを知ったAgnesはもうぜんぶ終わりだって絶望して、最後のやけくそでElinにキスして、そしたらElinはへんなかんじになっていって、なんかおもしろい方に転がっていく。Angesはレズビアンだって学校に広まって家族にも知れて、彼女はどんどん落ちこんで手首まで切ってしまう。他方でElinは彼女のことが気になるぼんくら体育男子とJessicaにせかされたこともあって付きあうようになって寝ちゃったりもするのだが、なんかしっくりこなくて、互いの、それぞれのもやもやが共振を始めて、だんだんにそれがでっかくなっていく。 

そういう自分でも整理つかない、持っていきようがないエモの捨て場にぶーってやるのが、”Fucking Åmål“ てこと。 ここがStockholmだったら、ちがったかもなのにさ。

若者らしいポジティブな思い切りとかやけくそな疾走とか親や友達と喧嘩してブチ切れとかの定石はあんまなくて、終始うかない顔と態度で斜め下を見てうだうだしてて、この感覚はこないだの”We Are the Best!”にもあったものだが、それがある出会いというか摩擦をきっかけにふたつのうだうだがリズムを刻むようになって、少し首を振ったりするようになって、こわごわ顔を見合わせると、やったれ、になる。この呼吸がなんとも言えず素敵で、特に夜中に橋の上でこわごわヒッチハイクをしようとするところとか、トイレの中で腹を括るところとか、ほんの1mくらいの動きなのに世界の色ががらりと変わっていく。この映画は、そんなふたりの女の子の至近距離の出会いにすべてを賭けていて、それだけでじゅうぶん、息を呑むすばらしさがある。

今だとLGBTの枠で軽く括られちゃうのかもしれないが、そんな必要まったくない輝きに溢れていて、このふたりに拍手できないひとは単にかわいそうな奴、でゴミ箱行きでいい。
ラストにRobynの”Show Me Love”が流れて、あーValentine’sにとってもいいわ、って思った。

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