1月28日、日曜日の午後、BloomsburyのCurzonで見ました。
Richard Linklaterの新作で、LFFでもかかって、どうしようか少し悩んだのだが冴えないおっさん3匹のお話しのようだったのでパスしてしまった。 こういうのに限ってやはりすごくおもしろいのだった。
2003年の冬、ピッツバーグでバーをやっているSal(Bryan Cranston)のところにLarry "Doc" Shepherd (Steve Carell)が訪ねてきて、最初SalはDocが誰だかわからなかったのだが、ベトナム戦争に従軍したMarineで同じ隊にいた奴だったことがわかる。朝まで飲んだあと、LarryはSalを連れて車で教会に向かい、そこで感動的な説教をぶちかましている牧師のRichard (Laurence Fishburne)に引き合わせる。彼もかつて二人と同じ隊にいて、でもこいつは酒と女でよれよれだったはず – (たしか『地獄の黙示録』ではしんでなかったっけ?) - なのだがそれはともかく、3人揃ったところでDocは二人に頼み事があるという。最近彼の妻が亡くなって、唯一の家族だった息子も911後に従軍した先のイラクで死んでしまった。身元の確認と埋葬に付き添ってくれないだろうか、と。
Salはわかったと言い、体がぼろぼろなので渋っていたRichardも妻の勧めで行くことにして、3人はまずワシントンDCに向かって、そこでDocは見ない方がいいですよ、と言われた息子の遺体を見て確認して慟哭して、更に息子と同じ軍にいた兵士から息子が亡くなったときの状況を聞いて、息子はアーリントン墓地ではなく地元のポーツマスに埋葬したい、という。国側は息子さんは国のヒーローなのだから是非アーリントンに、というのだがDocはぜったい嫌だふざけんな、と言って今度は3人のポーツマスまで棺を運ぶ旅になるの。
物語を膨らませるような回想シーンも特別な達成感もない、地味でよれよれの3人がぼそぼそ言い合ったりしながら埋葬に向かって旅をしていくだけの映画なのだが、それだけでもすごくおもしろいのと、見ている我々も含めて誰もが会ったことのないDocの息子のこととその死を想って、これはどういうことなのか?なんなのか? と考えさせるような内容になっている。
“Boyhood”でも”Everybody Wants Some”でも--hoodのことを、時間と共に旅をする人の居場所はどこに、どんなふうにあるべきなのか、を描いてきた(と勝手に思っている)Richard Linklaterはここで、亡くなったひと – 時間が止まってしまったひと - この場合は兵士 - の居場所は果たしてどこにあるのか、もはやその声を聞くことができないのであれば、その居場所を決めるのは誰なのか、という問いを投げているように思える。
この場合は、父であるLarryでよいのだろう、けどなぜ彼は何年も音信の途絶えていたSalとRichardをわざわざネットを掘って探しだして、会いに行って同行を求めたのか?
いろんなことが考えられると思うが、いっこあるのは、死ぬ時は(いつも)ひとりだけど、その死を継ぐのはひとりではできない、ていうこと。ただ悼むのではなくて、ベトナムを経験し、イラクの背後にかつてと同じような国の傲慢を見てしまった者として、なんとしても継ぎたい/継がなくてはならないなにかが噴き出してきて、それを彼らは”The Last Flag”として掲げて揺るがず、降ろそうとしない。
これって、萎れた老人たちの我儘でも筋間違いでもなんでもなく極めてふつうの倫理観であり行動だと思うんだけど。
なんとしてもアーリントンに(とか靖国に)とかほんっとバカにしてるわ、ってしみじみして、こういうのこそ筋金入りの「反戦映画」ていうのだと思った。
(この作品は、Hal Ashbyの”The Last Detail” (1973)と繋がっているらしいのだが、未見。けど例えば、”Mash” (1970) の連中が今も生きていたら彼らみたいになったのではないか、とか)
メインの3人はほんとうに見事なのだが、特にBryan Cranstonの立ち姿が泣けてくるくらいすばらしい。こんなにすごいひとだったのね。
亡くなったLarryの息子の部屋にはRadioheadの”Hail to the Theif” (2003)とMetallicaの”Kill 'Em All”のポスターが貼ってあった。イラクに戦争に行ったのは03年にこういうのを聴いていたふつうの若者だったんだよ。
音楽はラストのBob Dylanを含めて沁みて良すぎて泣いちゃうのばかりなのだが、あーこれはLevon Helmのドラムスだよねえ、と思ったらほんとにそうだったり。
2.07.2018
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