1月 〜 2月のアート関係のつづき。
Ilya and Emilia Kabakov: Not Everyone Will Be Taken Into the Future @Tate Modern
ひとつひとつの作品の深みと広がりが余りにでっかく、消化するのに時間が必要な気がしたので間を置いて2回見た。ソ連~ロシアという国と、その上に暮らす人々の上に(プロパガンダ、とまでは行かないが)お天気のようにあれこれ降ってくる/吹いてくるいろんなこと、それが日々の作物とか生活にもたらす粒粒をこまこま拾いあげて標本箱に展開し、でもほれ、それがなに?のようなところに落としてなんとも言えない余韻 – ノスタルジア? 未来? うーむ.. の地点に置き去りにする。これってソ連~ロシアていう地域性、その歴史を外したところでどんなふうに成立するのかしないのか、とか。 その流れで、人がみんないなくなった部屋とか風景にどうやって人の影やぬくもりみたいのを浮かびあがらせることができるのか、とか。
最終日に行ったら£25のカタログを£9.95に割引してた。今度から最終日に行って買うことにしよう。
Red Star Over Russia: A revolution in visual culture 1905–55 @Tate Modern
TateのIlya and Emilia Kabakov展示の別の棟でやっているのだが、関連あるよね。
ロシア革命(100年)関連展示では昨年Royal Academy of Artsで見た”Revolution: Russian Art 1917–1932”が質量とも圧倒的にすごくて(British Libraryのは行けず)、これはそれより時間軸を広げてポスターとかの紙モノを中心に展示しているのだが、よくもまあ… なかんじは変わらず、こういうのを国を挙げてやっていたのだからすごいなー、でもそのすごいのでも、当然のようにかっこいいのとださいのといろいろあって、でもぜんたいのかっこいい比率はいまのどっかの国が代理店に頼むださくて気持ち悪いキャンペーンなんかよか、数段上なの(あたりまえか)。
Ocean Liners: Speed and Style @Victoria & Albert Museum
豪華客船を使って旅行するのが最高の贅沢だった時代、上客を呼びこむために豪華客船を豪華に飾り立てていたいろんな装飾とか調度品とかのゴージャスでかっこいいところをどーんと展示する。アールデコ調のが多い装飾、家具、絵画、食器、鞄、制服に室内着、エンジンの模型から工程からなにから、当時の貴族・お金持ちの生活をそのまま船の上に移植しようとしたらこんなふうになった、と。すげえ.. しかないのだがおもしろい。というか社交って大変だねえ、とか。
Robert Wyattの”Shipbuilding”のシングルのジャケットのあの絵(横に長い)とか、タイタニック号のダイニングのドアの破片とか。 あと、昔のBritish Airwaysの広告で、QE2とコンコルドでNYへ、£995!とか。また見に行きたいかも。
Into the Woods: Trees in Photography @Victoria & Albert Museum
Freeの展示。雲とか木とかの写真が好きなので、ていうだけ。ふつうにAnsel AdamsとかAlfred Stieglitzとかのでっかい木の写真があって、他にAbbas Kiarostamiとかもある。
Opera: Passion, Power and Politics @Victoria & Albert Museum
V&Aに新しくできた地下のギャラリーで。 ここのBowieとかPink Floydの展示でやった聴きながら見ていく展示をオペラを題材に。オペラの起源から上演・演奏・舞台形態の変遷、イタリア、オペラの大作家、フランス、ロシア、近代まで、国(権力)や貴族のバックアップを受けて(それらと不可分で)発展していったアート形態であり、他方でひとの声というプリミティブな道具を駆使する、その点ではスポーツに近いなにかかも知れないが、オペラにまつわる当時の絵画や資料をどっさり纏めて展示している。絵画だとManetの”Music in the Tuileries Gardens” (1862) があったり、Käthe Kollwitzの肖像まであったり。 最後の部屋は近現代のオペラでRobert Wilsonの” Einstein on the Beach”とかStockhausenとかの抜粋が大スクリーンでがんがんに。いようと思えば貴族の気分で半日だらだらしていられそうな – でもほんもんの貴族はこんなとこに来ないよねたぶん、なのだった。
Andreas Gursky @ Hayward Gallery
リノベーションが終わって再開されたHayward Galleryの第一弾がこの展示。
だいたいでっかい、圧倒するランドスケープの写真がどかどか並んでいて、でも圧倒されるのって彼の写真そのものというよりは、彼が写し取ろうとした対象の向こうとか奥のほうにあって、それらはなんなのだろうね、って。たぶん、こんなふうにしちゃって.. どうすんのよこれ、みたいな溜息とともに見るこれら(の威圧感みたいなの)って、なんなのだろう。 写真の解像度と映画の4Kとかって根本的になにかちがうよね、とか。 会社のロビーとかに置いてあるとかっこよさそうなやつ、とか。 これでもアートなの、ていう自嘲と共に壁みたいに聳えているのだった。
Charles I: King and Collector @Royal Academy of Arts
英国史とか全く知らないのだが、チャールズ1世っていうのは絵画のコレクターとしてヨーロッパ中から当時のいろんなのを集めまくって、1649年に斬首されたあとに散逸してしまったのだが買い戻した分もあって、それらを一同に集めてみたので見て、ということらしい。
というわけでTitianにRubensに MantegnaにHolbeinにDürerにお抱えのAnthony van Dyck に、国王自ら集めたのだからどれも国宝に決まってんだろ、みたいに乱暴などっしりした節操のなさで西欧絵画のすごいのがどかどか並んでいる。なかでもMantegnaの壁4面を埋めつくすテンペラ画 – “Triumph of Caesar”なんて、今は女王陛下のコレクションらしいがこんなの普段どうやって置いているのかしら? これらって、良くも悪くも現代の我々がイメージする「西洋絵画」の典型的な寄せ集まり、と言ってよいのではないか、と。 なので知り合いとか連れてきて西洋絵画リトマス試験紙に使うことができるよ。そんな知り合いいないけど。
William Blake in Sussex: Visions of Albion @Petworth House and Park
https://www.nationaltrust.org.uk/petworth-house-and-park/features/william-blake-in-sussex---visions-of-albion-exhibition
17日の土曜日に行ったばかりなのでまだ生々しい。場所はロンドンから南西に電車で1時間ちょっと、1時間に1本のバスで15分程行ったとこにあるのだが、信号故障で途中の駅で降ろされ、振替バスにえんえん乗せられて目的の駅まで行って、更にそこから普通のバスで、軽く1時間以上ロスした。
会場はNational Trustが管理している公園と邸宅で、展示はここの2室、50点程でそんなに多くないのだが、内容はすばらしく充実していた。Blakeがペンとかでこまこま描いていきながら幻視しようとした神とかその国とか天国とか地獄とか。ごちゃごちゃしているようで細部の線を追っていくとその線の流れが渦を抜けて不思議と透明なところに連れていってくれる。この幻視感覚はちょっとびっくりで気持ちよくて、めちゃくちゃちっちゃい文字が書いてあるだけの小さな作品ですら、そうなの。
旅行者が足を延ばすのはちょっと大変そうだけど、ロンドンにいるひとは行ったほうがよいかも。
カタログとMiltonの詩の序文がプリントしてあるティータオル買った。
建物の横の公園というか庭園もとんでもなくでっかくて、ふつうに回ると軽く2時間かかるらしく、池のとこまで行って鳥を眺めてから戻った。 春になってから来たらよいかんじかも。
William Blakeの住んでいたコテージも近所にあるらしいのだが、車がないと無理そうだったので諦めた。 帰りも信号は復旧していなくて振替が面倒で。
地道に続けているちょっと遠めの美術館まで行ってみよう、のシリーズ、次はTate St IvesでやっているVirginia Woolf : An Exhibition Inspired By Her Writings に行きたいのだが、ちょっと遠すぎだねえ。
2.20.2018
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。