5.21.2017

[log] Lisboa - May 2017

19日の金曜日の朝から20日の晩まで、いっぱく二日の休暇でポルトガルのリスボンに行ってきました。

その前、15日~16日に仕事で行ったマドリッドのことを少しだけ書くと、スペイン初めてだったし人に連れられて右も左もまったくわかんない状態で動いていたたので、15日の晩と16日の昼の食事くらいしか書くことがない。

15日月曜日、マドリッドはサン・イシドロの祝日で、お店がほとんど開いてなくて、ホテルの近所の開いているところに入っただけ。あとから調べたら”Restaurante El Principado”ていうとこ。 でもハモン・セラーノの生ハムはありえないくらいのやさしさで、トマトソースにのっかったアンチョビも、石焼きの牛の赤身もすごいねえ、としかいいようがないやつだった。これがふつうの居酒屋のレベルだとしたらこわい。  食事が終わって解散して、喉が乾くに決まっているので水を求めて駅(と思われる)の方に行って、水は入手できたのだが、駅の構内にでっかい熱帯植物が植わっていてその下で大量の亀とか鯉が群れていた。 あれはなんだったのか。 しばらくその辺をうろうろしたのだが、夜の10時くらいでも店の外にテーブルを出してわいわいやってて、楽しそうだった。
16日、移動中に車の窓からプラド美術館 が見えて、泣きそうだった。今度必ずいくから待っててね。それからMuseum of the National Libraryの前も通った。 Barbieri (1823-1894)の特集をやっるのが見えた。そのうちね(以下略)

ランチはリオハ州が経営しているというレストラン - “Centro Riojano de Madrid Restaurante”ていうとこで、デコールはえらくゴージャスで、前の日に豚と牛はいっぱい食べたので、Red Legged Partridge - “Partridge”て「山うずら」だと思っていたのだがこれをそのまま辞書にかけると「アカアシイワシャコ」 - キジの仲間なのね - のエスカベッシュ(酢漬け)にしてみた。 大きさはうずらの3倍くらいあって、ものすごく上品でまろやかな酢漬けで、あっという間に消えた。

さてポルトガル - リスボン。
どうでもよいことかもしれないが、ロンドンとの間に時差がないの。 マドリッドは - マドリッドってロンドンより西にあるのに、1時間早くて納得いかなかった。少しは時差があったほうが旅行しているかんじがでるのね。 

もともとポルトガルは90年代、ブラジルに何回か通っていたときからいつか絶対に行ったる、と誓っていたところなので、ブラジルの食べ物があそこまでおいしいのだからそのルーツであるここは悪いわけがないし、銚子という野蛮でイワシばっかり食べている町で生まれたのでここのイワシを食べないことにはご先祖様 … には関係ないけど。

というわけなのでチケットと宿だけは早めに(ろくに調べないでBAのサイトで誘導されるままに)取っておいたのだが、そのあとは事前調査しなきゃ、と思いつつほとんどなんの手も動かしていなくて、ひとつだけ、ポルトにもできれば一瞬行きたいんだけど可能かしら、とやってみたが時間切れで諦めた。 こんな状態でホテルの名前すらメモしてない状態でじたばたしていたくらいなので、たぶん何の参考にならないかもしれないが、あくまで備忘で、以下、ポイントのみ。

最初に行ったのが、Museu Nacional de Arte Antiga - 国立古美術館で、ボッシュの「聖アントニウスの誘惑」を見たくて、平日の昼間、がらんとしたとこでほぼ独り占めでじっくり見れた。 いまブリューゲルのあれが行っているはずだが、あれの数倍変てこだと思う。 もういっこ、この日から始まっていた企画展、”Madonna”ていうヴァチカン美術館から聖母を描いた絵画、ドローイング、彫刻、タペストリーなどをごっそり運んできて展示してた。

美術館の3階にはポルトガルの宗教画や木彫りの彫刻とか、とっても素朴でほんわか趣のある聖母とか女神とかがいっぱいいたのだが、ヴァチカンの聖母さまたちに漂うセレブ感というか育ちの違いみたいのはなんかとんでもないねえ、と見ていくと、ラファエロの「受胎告知 - マギの礼拝 - 聖母の神殿奉献」の3連が出てきたのでまじか、とかミケランジェロの「ピエタ」がでーんとあったので、これレプリカよね? と思ったらやはり75年に造られたレプリカだった(それにしたってとんでもねえわ)。あとは大好きなバロッチの「エジプトへの逃避途上の休息」。 聖母さまとやらが幸せを与えてくれるなんかだとしたらこの絵がそれ、というロバですら後ろ向きでほんわか微笑んで輝いているやつ - があって跪きたくなった。

ボッシュの魑魅魍魎たちが頭蓋の裏側を気持ちよく這いずり始めていたのに大量の聖母さまが除菌して浄化してしまった気がして少しだけ残念なかんじもした。でもこれだけの聖母さま御一行をリスボンに持ってきちゃったということは、いまのヴァチカンは聖母不在の闇のなかにある、ということではないか。 そんなことでだいじょうぶなのだろうか、とか、展示初日でこんなにがらがらで許されるのか、とか、特別料金とらないで平気なのか、とか、いろいろ心配になって、お賽銭のかんじでカタログ買ってしまった。 あと、ボッシュの「聖アントニウス」に出てくる魔物のフィギュアをどうしようか悩んで、あと数ミリの繊細さに欠ける気がして買うのやめた。

美術館の次は本屋、ということで「世界で一番古い本屋」 - ほんとかな~「本屋」の定義にもよるよね - であるという”Livraria Bertrand”とあとその山だか丘の上のほうの古いおうちがいっぱいあるあたりも散策した。本屋はここのほかにもいくつか見たのだが、どこにでもフェルナンド・ペソアのコーナーがあって、Tシャツとかフィギュアもあるんだねえ、と記念に英語訳のを一冊かった。 ペソアについては博物館になっている彼の家に行くつもりだったのに土日は休みである、ことを金曜の晩に知って、泣いた。

映画は、リスボンのシネマテーク- Cinemateca Portuguesa - になんとしても行っておきたくて、金曜の夕方、プレミンジャーの「悲しみよこんにちは」(1958)をやっていたのでこれを見た。外壁に貼ってある垂れ幕にはでかでかとFUJIWARA / PREMINGERとあって、Chris Fujiwara先生が特集に加わっているらしかった。
とーっても素敵なシネマテークで、かんじとしてはNYのAnthology Film Archivesをお金をかけてリストアしたふうで、ああ近所にこんな映画館があったらなー(を世界中でいい続ける)のリストに追加しておいた。

“Bonjour Tristesse” - 「悲しみよこんにちは」についてはいいよね。前回これを見たのはLincoln Centerでのテクニカラーってこんなにすごいんだから特集だったが、カラーの美しさとJean SebergとDeborah Kerrたちの美しさが見事な調和を見せて、それがモノクロ・無調に転じていく顛末を、青春の終わりを、クールに - 決して残酷ではないの - 描いていて口あけて見ているだけで終わってしまう。

二日目は観光しようと思って、でもシントラに行くか近場のジェロニモス修道院とベレンの塔にするか直前まで悩んで、結局後者にした。 現地に着いたのが9:40くらい、10時オープンでみんな並んで中に入ってすごいなーでっかいなー、だった。ふーん、だったのはペソアのお墓があったことで、死後50年のときにここに持って来たんだって。

そこからかんかん照りのなかベレンの塔まで歩いて大西洋をみて大砲を撃つ部屋のなかに立って、この窓から見えたらとにかくどーん、てやったのかしら、でもこの部屋でみんなが一斉に射ったらすごくやかましかったんじゃないか、とか。

戻る途中でMuseu Coleção Berardo - ベラルド近現代美術館 - ていうのがあって、暑かったし、入ってみた。地下も含めた3階建てくらいで、ながーい回廊に1900- 1960のと1960 - 1990までのモダンアートがビデオやインスタレーションやでっかいブツまで、いっぱいあって、だいたい一作家一作品の余裕たっぷりで展示しているようだった。 歴史みたいなところはシュールレアリスムから表現主義、CoBrA、未来派、といった括りでそれぞれに一部屋づつ使って、ヨーロッパのはどれもしれっとかっこよくてつい見いってしまった。Mark Rothkoの30年代の素朴なやつとかもよくてねえ。

食べもの関係は3食くらいだし。
着いてすぐのランチはホテルのひとに聞いて、近くのChampanheria Do Largoていうとこでイワシと鮭とムールの3色丼 - じゃない皿、みたいなやつで、晩は同じくホテルの人に予約して貰ったのだが、希望していた9時頃のは取れなくて10:30になってしまい、お腹へってしにそうになった。

Cantinho do Avillez、ていうポルトガルのスターシェフである José Avillezが開いた高級ビストロ系のお店で、Daniel Bouludのdb bistro moderne、みたいなもんだろうか。 ハンバーガーもあったし。 メニューにベストセラーと書いてあった前菜のFish Soupはそんなでもなかったが、メインのAlentejo black porkのグリルはなかなかとんでもなかった。柔らかいのだが、自分の知っている豚の柔らかさとは違うなんかがあって、どういう処理しているのかしりたい。
あと、こういうお店のサービスがしょうもなくなるのはどこも同じだねえ。

2日目はまず、あの近辺に行ったらこれを食べとけ、のPastéis de Belémていうとこのエッグタルト(Nata)から。 エッグタルトだけだとつまんなかったので、揚げクリームパンみたいなの - をどう言ったらよいかわからなかったが、とりあえずなんか説明したら当たった。エッグタルト、皮が絶妙だったのと、揚げパンはクリームがほとんど黄身みたいな色で、とっても濃くておいしいんだけどこれ毎日食べてたらたいへんなことになる。 鳩が寄ってくるのもたいへんだったし。

ランチはこれも定番のCervejaria Ramiro、ていうシーフードのお店で、生牡蠣たべて、アサリ一山を蒸したのたべて、でっかいカニいっぴきたべて、アイスクリームたべた。 この手のシーフード屋って鮮度があれば、ていうのかもしれないが、アサリを鍋で茹でただけであんなんなるとは思えないし、カニを茹でてざく切りしただけであんなんなるとも思えない。 カニはとんかちで各自叩き割りながら甲羅に満たされたカニミソに浸して食べる。iPhoneがあっというまにカニの破片まみれになって、そういうのも含めてすごいとしか言いようがなかった。カニさんたちのあいだからあまりにむごいって声があがりはじめているのは当然だとおもった。

お店を出てからイワシまるごとを食べていないことに気づいたので、また今度、ということにした。

あとは公園にいた変な鳥とか。鶏とアヒルを足して割ったみたいなやつ - たまにすごい喧嘩してた - と、なぜか放し飼い(なのか?)にされていた立派な雄鶏と。 食べちゃうひといないのだろうか?

あと坂で足がしんで、サンフランシスコに最初に行ったときのことを思いだしたり。 坂の途中とかに建っているおうちはほんとに大変だろうな、うちの階段の比じゃないな、って思った。 ケーブルカー、結局乗らなかったのでこれもまた次回に。 イワシもあるのでまた行かないわけにはいかないし、次はポルトも。


なんかほんとにバカみたいだし、スタンプラリーしてるでしょ? と言われたら、う.. うん、と目を逸らして返さざるを得ないのだが、明日 - 月曜日の夕方からトロントに飛んで木曜日の朝に戻ってきます。
きっとそういう星回りなんだ、と星のせいにして、再びカバンひろげてパッキングする。

ではまた。

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