12.12.2016

[film] 俠女 - A Touch of Zen (1971)

11月27日の夕方、有楽町でみました。 
フィルメックスで1本くらいはみたいかも、て思っているうちに最終日になっていて、ほとんど最後のほうに滑り込んだ。
コンビニでチケット買わされて、幕前にたけしの説教臭いCMばかり見せられる、そんな映画祭な。

70年代の中国の格闘劇、昔リンカーンセンターでリストアされた同じようなのを見た記憶があって記憶を掘ってみたら、なんか違ってたもよう。  
これ、原作は「聊斎志異」なのね。 部屋の本棚の奥の奥の、中国の奥地みたいに届かないどこかにいるはず。

冒頭、白い蜘蛛の巣が闇夜に怪しく瞬き、中国の人里離れた山奥になんとか砦ていうのがあって、むかし何があったのか寂れて廃れてぼろぼろの一角に母親と独り身の息子が暮らしていて、息子は町に出てバラックの一角で肖像画を描いて生計を立てている。ある日少し身なりのよいお武家さんみたいな男が訪ねて絵を描いてくれと言って、はいはいと受けて、そのあたりから砦の周囲も含めてざわざわ騒がしくなっていく。 砦では突然よぼよぼの老婆とものすごくきりっとした若い娘が隣の廃屋に住み始めて、母親は嫁に貰えとせっつくのだがあっさり断られて、でもそんなことでくよくよしていられないくらい周囲は更にざわざわしてくる。

やがてその娘は国の偉いとこのお嬢さまで、官僚の間の覇権争いで父親は殺されて、追手から逃れてきたようなのだが、砦のまわりにも不穏な影が蠢きはじめて、娘のまわりにも味方がぽつぽつ現れ、肖像画描きからすればそんなの勝手にやってろ、なのだがなんとなくお嬢さまのほうについて、でも武力のほうは全くだめなので知恵(でもたいしたことないのがなんとも...)をだすことにして、砦を囲んだ敵方とぼろ屋の扉・壁の裏表、藪、獣道、などなどを潜ったり隠れたり襲ったりの攻防が繰り返されていく。

70年代の中国のこういう映画にある至近距離、血まみれの痛そうなぼこぼこの殴り合い肉弾戦にはならずに、カメラは相当な遠くでじたばたしている人影とランドスケープ - 蜘蛛の巣にひっかかる虫みたいなシルエットをとらえようとする。 闇夜の雨風、虫や鳥のざわめき、夕刻の光の層、その縞々と、そこに渦を巻く殺気に妖気に邪気に侠気 - いろんな気配と、それらのコントラストを切り裂いてカンガルーみたいにぴょんぴょんものすごいスピードで跳ねまわって敵を倒していく剣客たちのシルエット - 全体としてとっても美しい円舞になる。

終盤の引っぱりかたもすごくて、森の奥からジェダイのような僧侶たちが現れたあたりから敵味方も善悪も超えた彼岸での延々終わらない闘いになだれこんで最後には空(くう)が見えてしまうかんじ。- “A Touch of Zen”ていうのはそういうことね。
銃や矢ではなく、自身の体を飛び道具にして闘う反重力/無重力の世界、そこにおいて権力だの妄執だのなんて一体なんになるというのか、とか。

あのお嬢様の目、すごいねえ。
1月の終わりにユーロスペースで公開されるらしいが、”Dragon Inn”、見たくてもその頃はたぶん …

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