12.01.2016

[film] Le cancre (2016)

もう12月かよ。 ありえないわよ。
11月19日の夕方、アンスティチュのディアゴナル特集でみました。 『劣等生』

ヴェッキアリのこともディアゴナルのこともよく知らなくて、お勉強として見る。
上映前に監督が出てきて「映画監督の仕事は夢を具体化することです」なんてさらりと言う。

筋はシンプルで、南仏の一軒家で老いてだらだらしている - でも十分なお金持ちらしい - ロドルフ(監督本人)がいて、その息子ロランも特に目的ももたずにてきとーに生きていて、父の健康がよくないようなので面倒を見たりしているもののふたりの間にはわだかまりのようなものがあって、距離を置いてて、どっちにしてもだらだら無為に、ろくでなしとして生きている。

過去にいろいろあったらしい父のところにはいろんな御婦人がたがひとりひとり訪ねてきて、過去にロドルフとの間にあったいろんなことや現在のことを一方的にまくしたてたり怒ったり泣いたり、いったいどうしてほしいのか、というかんじでやってくる。 インタラクティブな会話にはなっていなくて、だから、ひょっとしたらロドルフの妄想なのかもしれないし、死んでしまう前の走馬灯なのかもしれないが、とにかくいろんな女に手を出していったのねこのじじいは、ていうことはわかる。

ロドルフがいつもその消息を気にしているのは初恋のひと、すべての女達の出発点としてあったマルグリット(カトリーヌ・ドヌーヴ)のことで、彼女の甥であるロランに居場所を教えろ、て訴えていて、そんなに想っているのになんで一緒にならなかったのか、とか、それなのになんでいろんな女と付きあっては別れを繰り返したのか、とか聞きたいことはいろいろ出てきて、そういうのを男のロマンとか言うのはただのバカみたいで、そのへんを単に「劣等生」と呼びたかったのかもしれない、とか。 でも「劣等」って、なにとなにを比べているのかしら、とか。

そして終わりのほうでようやく登場するマルグリット = カトリーヌ・ドヌーヴは夢の人、としか言いようがない貫禄で薄青緑色のすてきな服でゆらーりとロランと話をして、果たしてロドルフと彼女は話をしたのかできたのか、これもまた夢のようでなにひとつ確かなかんじはしなくて、でもあの終わり方だとよかったねえ、でよかったのか、ひょっとしたらロランていうのはロドルフの頭のなかにいる仮想の分身みたいなもんで、だから「劣等生」なのかも、とか、ぜんぶまるごと死にかけた老人の白日夢なのかも、とかいくらでも広がっていって、その広がり具合がとても心地よくラストの海に溶けていく。
最後に遠くで鳴っている(ように感じられる)のは"Love, Reign o'er Me”(老人版)か。

監督はこれは自伝ではないと言い、でも会社のところとマルグリットが読む手紙は14歳のときにほんとに書いたものの抜粋だって。かっこいいよねえじいさん。
あと、ジャームッシュの”Broken Flowers” (2005)とはちょっと違う、と。

上映後のトークもおもしろかったが、とにかく彼とフランソワーズ・ルブランさんのふたりがあきれるくらいおしゃれでさー。 特にルブランさんの緑のスカーフ。

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