11月26日、土曜日の昼、渋谷でみました。 『母の残像』
“Louder Than Bombs”ていうとThe Smithsの87年のコンピレーションなんだけど。
冒頭、Jonah (Jesse Eisenberg)は子供が産まれる妻の病院にいて、外に食べ物を買いに出ようとしたところで昔の彼女に出会って、彼女は同じ病院にいる母を見舞ったところでめそめそしていて、あなたもなのね... ってJonahのことを慰めてハグしてくれて、Jonahはとっても気まずくなる。
そういう小さくて微妙な気まずさが、ひとつの家族のなかでそこらじゅうに転がっていてなんだかとっても愛おしくなるの。
Jonahの母親Isabelle(Isabelle Huppert)は戦地に赴く報道写真家で3年前、地元に戻っていたときに自動車事故で亡くなってしまう。 彼女の回顧展の準備で、遺された作品の整理(+育児でやかましい妻からの逃避)のために実家に戻ってきたJonah - 大学で社会学の教授になることが決まっている - の彷徨いと、思春期なのか少しぼんやりして危なっかしくなっている次男のConrad (Devin Druid)と、そんな彼をどう扱ったらよいのかわからずおろおろ見守っている元役者の父(Gabriel Byrne)のすれ違って気まずさだらけの日々 - その中心にはまだきちんと受けいれることのできない母の死が ... を描く。
そして母の死についても事故だったのか自殺だったのか、自殺を仄めかす視線で彼女の追悼記事を書こうとしている同業者 - あとで彼女と関係があったことがわかる - とのやりとりとか、そんなこと何も知らないConradに与える影響はどうなるんだとか、そもそもなんでいなくなっちゃったんだよう、とか、ぜーんぶ彼女のせいにする。 彼女が戦場の取材のとき至近距離で炸裂した爆弾のように暴力的に鳴り止まない耳鳴りのようにずっとわんわん襲ってきて止まない。
ただ全体としてはみんなどん底で苦しんで救いを求める家族も修羅場のぐさぐさ大喧嘩もなくて、地雷原をこわごわ避けながら互いにそうっと近寄ったり遠ざかったり、ちぐはぐで噛みあわない家族を遠くから透明な目線(幽霊?)で眺めているかんじ。 これをさらさら緊迫したドラマとして成立させている俳優さんの演技がすばらしい。 でも地雷は。
Conradがパーティで酔っ払った女の子を夜明けまで歩いて送っていくときのどうしようもない/どうすることもできない底抜け途方に暮れたかんじがたまらない。 ここの数分間だけでとてつもない青春ドラマになっている。
これと”Every Thing Will Be Fine”と”The Childhood of a Leader”で11月に見たお小便3連作(最後のはおねしょだけど)になるの。 どれも意味ある放尿。
そしてIsabelle Huppert。 口をひんまげてつんとした彼女の顔、好きだなあ、て改めて思った。
ノルウェイ映画なのね。 ロケ地はスタテンらしいけど。
12.06.2016
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