11.23.2016

[film] Genius (2016)

10月14日、金曜日の晩に日比谷で見ました。 『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』

20世紀初のアメリカ人作家Thomas Wolfeと彼を見いだし育てた編集者Maxwell Perkinsの交流を軸に、この編集者と当時のアメリカ文壇 - とまではいかないが - を描く。

大恐慌前夜のNYで、出版社Charles Scribner's Sonsの編集者 Maxwell Perkins(Colin Firth)のところにトーマス・ウルフ - Thomas Wolfe(Jude Law)の大量の紙束原稿(1100ページ)が持ちこまれ、少し読んで紙束のなかに何かを見たMaxは、その紙束を辛抱強く摘んで編集して彼のデビュー作 “Look Homeward, Angel”に仕立てあげて、それは成功して、それだけじゃなくてMaxは恋人のAline Bernstein(Nicole Kidman)と昭和枯れすすきみたいな切ないごろつき文士生活をしていたThomasを郊外の自宅に呼んで家族(奥さんはLaura Linney)に会わせて食事して親密になって、そうするうちに更にとてつもなくでっかい第2作も仕上がり、評判もよかったのだが、2作の成功がThomasを鼻持ちならねえ我儘高慢ちき野郎に変えていって、どーする どーなる。

史実なのでThomasがいきなり更生して聖人のようになるわけはなく、こういう人にありがちなように37歳という若さでこの世からすうっと消えてしまうのだが、Maxの彼に向けられる目は最後まで変わることはなく穏やかで暖かくて、”Kingsman: The Secret Service” (2014)でもそうだったように、こういう無軌道な若衆を相手にするときのColin Firthの落ち着いた教育者というか編集者っぷりってすごいなあ、て思った。

あと、Maxって、Ernest HemingwayやF. Scott Fitzgeraldも世に出して、ということからこの映画のなかにも彼ら - Zeldaも - は登場するのだが、Thomas Wolfeはともかく、HemingwayとFitzgeraldがいないアメリカ文学史なんて考えられない今の時代、よくもまあこういう連中を右に左に、というかまったくキャラの異なる彼らの作品を彼らの作品として成立させたのってすごいことだねえ、とかあたりまえの ー

おそらくもっとねちっこい、匂いたつような文壇サークルドラマにすることもできたのかも知れないが、イギリス人監督だからだろうか、メインのふたりがイギリス人俳優だからだろうか、その辺はとってもさらりとした駄々っ子と動じない大人のやりとりになっていて感心した。
そんななか、Nicoleだけはつーんと突出して毒を吐き続けていてすごいねえ、としか言いようがないのだった。

Thomas Wolfe、読んでみたいなー。

そしてWilliam Trevorさんが。 R.I.P.

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