25日にManhattanのOther Musicが閉店する(ついさっき、した。はず)。
アナウンスがあってから、BoweryでTributeライブ(すごいメンツに膨れている)があったり、MSNBCで特集が編まれたり、映画になるとかいう話もあるし、広がりかたがすごいのでびっくりしている。
みんなそんなに愛していたのか...
このお店ができたのは95年で、音楽史的にはオルタナが爛熟期にあったころで、つまりはみんなが割と世界中の変てこな音を求め始めた頃、こんなのもあんなのもあり状態がふつーになりつつあった頃、でもあった。
それ以前は、欧州とか南米のプログレとかアヴァンギャルドとか(あとヨーロッパのじみな映画 - ロッセリーニとか - のビデオ)を探そうと思ったらBleeckerにあった穴ぐらのようなKim’s Undergroundていうとこくらいしかなくて、あとで聞いたらここにいたスタッフが始めたのがOther Musicだったと聞いてなるほどー、だった。
つかのまの黄金時代には、West 4th Stをはさんで反対側に結構でっかいTower Recordsがあって、マイナーでよくわかんない系のアナログをOtherで買ってからメジャーなCDをTowerで買う(両者の品揃えは重なっていない)、それでも物足りなければ少し歩いてVirginも、というとっても贅沢で理想的な音楽調達環境が、あの界隈にはあった。 ネット配信なんて、まだなかった頃よ。
そこから2度の米国お別れ直前にはどさくさで相当バカみたいに買ったし、出張の都度立ち寄って時間のせいにしてあんま考えずにひっつかんで買う、みたいなことをしていたので、ここはたぶん、これまでの人生で一番お金を費やしたお店Top10には入っていると思う。 でも集中してどの辺のを殿程度買ったのか、はあんま憶えていない。新譜も中古もノイズも実験音楽もエレクトロもフレンチもラテンもジャズもサントラも"Other"なのは、ぜんぶここにあるかんじがして、いつもその海に乗り出していくようだった。 “Other Music” - 看板に偽りなしだったねえ。
Other Musicの白板に手書きされた21年間のTop Sellers、なかなか感慨深い。
ここは年末にスタッフ全員のベストを同じように白板に手書きして発表していたのだが、一位になったBelle and Sebastianの”If You're Feeling Sinister” (1996)は、その年末、スタッフ全員がみごとに一位にしていて、なんだこれ? と思って自分も買って、なんだこれ? (ふうむ)っておもったの。
NYのベルセバ受容をドライブしたのがこのお店であったことは間違いない。
どんなにすてきなレコード店も本屋もいつかはなくなる、消えていくものだ、ていうのはわかっている。
御茶ノ水にあったCISCOだってパイドパイパーハウス(もうじき復活するねえ)だってなくなった。 でも本屋よりもレコード屋のほうが悲しみが深いようにおもう。本屋は本棚の前に立って本の背表紙を眺めて、本と世界に対峙する、自分と本と世界、その間の隙間を共有するコミュニティ感があるので素敵に気分があがるのだが、レコ屋って、何が入っているか他人にはわからない謎のエサ箱を個々が押しあいへしあいかりかり掘ったりつまんだりばかりで、とっても後ろ向きなかんじで、じっさい、未だにエサ箱を掘っていると、こんなとこでなにしてんだろ、て思うもんね。
でもだからこそ、宝の山かもしれないエサ箱を並べてくれたお店とそこで過ごした時間には愛と感謝が溢れてくる。こんなろくでなしのノラにおいしいエサをありがとね、って。
(映画館もレコ屋のほうに近いかも。 暗闇のなかでじーっとひとり)
でもなあ、ここにきて、West VillageにあるRebel RebelもSFのAquarius Recordsも閉じる、ていわれるとさすがにへっこむ。
(Rebel Rebelは90年代初め、ちょっと割高だけど英国盤を調達できる貴重なお店だった)
アナログレコードの復興、とか言っても、ビジネスとか消費のありようを変えるわけではないのね。 売れないお店は結局消えてしまうってことなのね。
これからNYでのレコードの調達はBrooklynまで行かなければならなくなってしまうのだわ。
でも、またどこかで会えるよね。
そうそう、なくなるといえば渋谷のパルコブックセンターであるが、Joseph Beuysのサイン本が70% offで置いてあったよ。
6.26.2016
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