5.01.2016

[theatre] A View from the Bridge

10日、日曜日のお昼、モランディに浸っていて時計をみたら開始まで15分だったのでびっくりして大慌てで日本橋に駆けこんだ。 シアターのいつものくだんないCMのおかげで助かった。
National Theatre Live。 原作はArthur Miller(初演は1955年)。演出はオランダのIvo van Hove。

1幕もの(2幕バージョンもあるらしいが)で舞台は裁判の審問が行われる法廷(or 格闘のリング?)のように四角に切り取られていて、その辺上に法律家(or セコンド?)の背広姿の男が座ったり立ったりずっといて、たまに公正中立な立場からなんか言ったりする。

あまり治安のよくないBrooklynのRed Hookで港湾労働者をやっているイタリア系移民のEddie Carbone(あのレストランの…)(Mark Strong) は妻のBeatrice (Nicola Walker)と妻方の姪で両親のいないCatherine (Phoebe Fox)と3人で幸せに暮らしていて、そこに妻の従兄弟のMarcoとRodolphoがイタリア - シチリアのほうから渡ってくる。彼らは不法滞在になるわけだが、今のままイタリアにいても望みがないのでやってきたのだと。Eddieもその辺の事情はわかるよ、と彼らを家に置いてあげることにする。

兄弟のうち兄のMarcoは寡黙で力持ちで真面目な働き者で、イタリアに残してきた家族のために仕送りをいっぱいするんだと張り切っていて、弟でブロンド髪のRodolphoは割とちゃらちゃら自由で無邪気で、アメリカで歌手になって成功したいんだ、とか言っている。

やがてみんながおそれていた通りにCatherineとRodolphoは簡単に恋におちて結婚したいとか言い出して、Eddieはそんなのあいつが永住権ほしいからに決まってるし、結婚したらすぐ捨てられる俺にはわかるぜったいにだめ、と懸命に説得するのだが彼女は聞く耳もたないので、最後の手段でEddieは兄弟のことを移民局に通報してしまう ...

Arthur Millerの他の作品がそうであるように始めから(彼らが家にやってきたときから)そのどん詰まりの結末、悲劇は見えていて、Eddieの養娘への強すぎる愛、広い意味での家族 - 同郷愛、素朴な労働に対する誇り、それらをもって地道に一途にやってきたんだ、という圧倒的な思いが、横から現れた若者と、彼らのいう「愛」によって裏切られ引き裂かれたとき、それらは誰にも止められない、誰も引きさがりようのない野蛮な力へと変貌して辺りを血の海に変えてしまう。

その始まりには愛しか、心地よく汗を流してくれるシャワーしかなかったはずなのに、なんで? なにが? どうして? を俯瞰して一挙にみせる後半の演出が見事だった。 とてつもない緊張感と、溢れかえるそれぞれのエモが音をたてて正面衝突する轟音と。

いまの移民問題に結びつけて考えることは可能なのだろうか。 人道支援と家族・身内への愛が同心円上でぐるぐる回って衝突すること、或いはこれってどこにでも起こりうる陣取り合戦のようなものなのか、とか。 アメリカという国(合衆国)はよくもわるくも数百年以上に渡って、いまだにこういう課題問題に向かい続けていて、曝し続けていて、なんだかんだえらいと思う。
お金だけ出して、みてみてうちが一番!て言い続けているしょうもない子供の国よりは。

Eddieを演じたMark Strongの力強さと哀しさはすばらしくて、スパイ映画の悪役とかよりもこっちのほうがだんぜん、と思った。使うの難しいかもしれないけど。
生の舞台で見てみたいなー。

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