20日の日曜日のごご、シネマヴェーラのナチス映画特集で見ました。
アレクセイ・ゲルマンの映画、見たことがなかった。
「道中の点検」、英語題は”The Trial On The Road”。 モノクロ。
1942年の冬でずっと雪ばっかしのロシアの平原、ナチスドイツの占領下で、ロシアのパルチザンがいろんな作戦たてたり奇襲かけたりしている。
冒頭の、双眼鏡で偵察しているところからいきなりドイツ軍の小隊を襲うシーンのタイミングのすばらしさと緊張感に痺れて、そのまま最後まで行く。きついけど。
そのパルチザンの小隊にナチスに協力していたラザレフが投降してきて、隊の内部はそんな裏切り者信じるな、という派とまあ同じ民族なんだしなんかやらせてみては、という派に別れて、ラザレフは一部から冷たい目を浴びつつ黙々と言われたことを遂行して段々と認められていくのだが、やがてでっかい作戦を任されて。
終盤に裏切りとかどんでんがあるわけではなくて、なぜラザレフは一度ドイツに寝返ったのか、なぜまた戻ってきたのか、の細かな説明があるわけでもなくて、雪のなか、ひたすらドイツ軍を追っかけていくパルチザンの厳しい戦いとその中でただただ任務をこなして、やったりやられたりして白色の、雪の向こうに埋もれ、消えていく兵士の姿を描く。 勝ち負け?
ありがちな戦争の虚しさ悲惨さ残酷さ、というよりも雪とか寒さとかパルチザンの移動生活とかなにもかも難儀できつくて、そういうのが常態となってしまうこの世界とか歴史の因果とか、なんなのかこれは、という冷え冷えしたかんじがやってくる。
もういっこはこんなふうな戦争において、英雄って一体どういう奴なのか、なにしたら英雄と呼べるのか、とか。 そんなの冒頭でガソリンに浸されていたジャガイモみたいなもんじゃねえのか。
というようなことを、過去の償いのために黙って働くラザレフと、過去の功績から偉そうにふんぞり返る上官の対比を通して、従来のヒロイズムとは線を引いた地点からしらーっと眺める、その距離の取り方の正しさ(故に本国では15年間公開禁止だった、と)。
おまえらが見たがっている戦争映画なんてこんなもんだ。 くだんねえだろ? どうしろってんだ?
あと、パルチザンが爆破しようとした橋の真下を通過していた船の甲板をびっちりと埋めていたロシア人の捕虜(故に爆破できなかったの)、あのびっちり感には言葉を失った。
5.03.2014
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