10.17.2013

[music] Nine Inch Nails - Oct 14 2013

14日のBarclay Centerのライブ。 New YorkではあるがロケーションはBrooklynで、BAMのすぐ隣で、この新しいアリーナを見ておきたい、というのもあった。
これまでのMadison Square Gardenと比べると、飲食関係は明らかに充実していて、近所のFort Greenのおいしいレストラン(いくらでもある)で食事してからライブに行く、という贅沢ができるようになったの(MSGだと隣のKorean街の焼肉くらいしかなかった...)。

そういうわけで、夕闇に沈んでいくRoman'sでNilssonを聞きながらおいしいイタリアン(別に書きます)を戴いていたらこのまま世界なんてなくなっていいや、のかんじにいってしまい、会場に辿り着いたのは8時過ぎ、前座のGYBEの最後の轟音が消えていくところだった...

会場内の食べもの屋群もすばらしくて、Fatty 'CueとかElbow Room(Mac and Cheeseの店)とかを眺めていいなー、とか言っていたら、20:50くらいに突然"Copy of A"が聴こえてきたので慌てて席に戻る。 あんな突然はじめなくたって。

復活初日の、しかも悪天候下の苗場と比べるのはよくないのかもしれないが、もう音の硬さ、圧力、風速、ぜんぶがちがう。 もちろん手で装置動かしたりしない。
タンバリンなし。 3曲目の終わりででギターを後ろのほうにおもちゃみたいに放り投げ、続く”March of the Pigs”では客席に突っこんでいった。
あとは山海塾というか、ビルドアップした僧侶みたいな佇まいになってしまった彼のくねくねした踊り - あれはなにかの意志をもって踊ろうとしているような踊りだった -  よね。

苗場にはいなかったPino Palladinoのベースは、The Whoのライブではあんま感心しなかったのだが(ま、あのポジションはだれがやったって...)、すばらしい太ゴシックと細やかさでのたくり、Ilan Rubinの爆裂どしゃばしゃドラムスと絶妙のコンビネーションを見せる。

サックスがぶりぶり鳴り響くアンコールでの"While I'm Still Here"も含め、このラインナップははっきりと新譜の緻密な電子音とぐるぐるまわるグルーヴを最適なかたちで再現するためのものなのだな、とおもった。
更に女性ヴォーカルふたり(うちひとりはもうじき日本でも公開される"20 Feet from Stardom"にも登場するLisa Fisherさん)が音に加えた幅の広さ、とくにアンコールの"Even Deeper"の間奏部なんて、Pink Floydみたいな浮遊感をもたらす。

「ぼくはコピーのコピーのコピー」ではじまって「ぼくがここにいる間だけそばにいて」と呟き、どす黒く渦を巻く"Black Noise"で終わるライブ。 べったりとした何かが残ることは確か。

ライティングは、毎回の度肝ではあるのだが、今回もすさまじい光量とコントロールの嵐と。 新譜の音との連携はよりくっきりと出ている。

あとはクラシックとの共存、というか再演のところで、"Somewhat Damaged"とか"The Day the World Went Away"とか、聴いたことのないアレンジで来るのもあれば、"Wish"や"Burn"のごりごりのハードコアでぶちかますものもあり、様式としてはまったくもんだいなく、すばらしい。

但し、これはNY Timesのレビューでも指摘されていたが、これらの曲が作成された当時に渦巻いていた怒りとか自己破壊とかゴミだのジャンクだのいろんな衝動の殆どが90 - 00年代の約20年をサバイブしてしまった40代、こういうライブに来れるくらい経済的に安定した生活を送っている40代であるファンの間ではもうほんとうに「クラシック」 - もちろん弩級のではあるが - としてしか機能しないかもしれない、という点はどうなるのか。 ハイアートとして緻密に構築された新譜との乖離(我々のあたまの中にある)はどこに向かうのか。

萎れたじじい達の間で愛玩されるビートルズやストーンズだったらわかる、ファッションとして消費されるパンクもしょうがない、けど、今回の新譜のようなかたちで進化し続けるバンドの音を、かつてぼろかすでヤスリのように聴いていた我々はどう受けとめていくべきなのか、これはTrent Reznorがむきむき悩んで考える、というよりはかつてのインダストリアルやグランジの今を、どうやって生きるのか、聴くのか、という自分の問題なのだねえ、と少しおもった。 "TENSION"ツアーで溢れまくるいろんなTension。

というようなことをぜんぜん若者がいない会場を見ながら考えていた。やっぱしチケット代かしら。

あーでもよかった。何回でもみたい。

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