10.11.2011

[film] Music According to Tom Jobim (2011)

2日の日曜日2本目。 BAMの後で、マンハッタンに戻ってNYFFに。

1本くらいは軽めの、音楽ものを見ておこうと思って、前半でかかったのはこれと、"Andrew Bird: Fever Year"というのがあった。
もちろん、Andrew Birdは大好きだし、映画だって見たいのだが、彼はまだこれからのひとでもあるし、そのうちどっかで見る機会はありそうだ、ということで。

時間を間違ってて、6:30だと思っていたら6:00開始だった。
地下鉄の駅に着いたらもう6:00になってた。Walter Readeの窓口に駆け込んだら、ごめんもう売切れてるの、あーでもさっき1枚いらないって置いてったひとがいるからあげるわ、ってただでくれた。 で、中に入ったらまだ始まっていなかった。 さらに、前のほうはがらがら空いてた。
この映画祭のこんなふうにゆるいとこ、好き。

Antonio Carlos Jobimが94年に亡くなってからかなりの時間が過ぎてしまったが、彼の音楽が風化することはないし、映像としてちゃんと遺すべきところは遺しておこう、とTom Jobim財団と巨匠Nelson Pereira Dos Santosが一緒になって作り上げた記録映画。

彼の公の場での最後のライブとなったCarnegie HallのVerve 50周年コンサートは、チケットが高くて手がでなかった。くやしかったので95年の追悼公演はAvery FisherとCarnegieのと、両方行った。 どちらも、とんでもないクオリティで自分のなかのブラジル音楽ライブ史上の決定版のままー 。

ただJobimの音を聴くのはほんと久しぶりで、どんなもんじゃろ、と思っていたら冒頭から、リオ上空を飛ぶジェットの映像(モノクロ)をバックに、ジェットの爆音並みのやかましさで"The Girl from Ipanema"のオーケストレーションががんがんに鳴りだしたので、一挙にあがった。 これだよねえ。

モノクロのフィルムはまだ開発中のRioの海岸や建設中の道路を映していく。 
これがBossa Novaが生まれた原風景、と。

このイントロに続いてGal Costaがでて、更にElizeth Cardosoへと続く。 
そっから延々、ライブ映像、TV番組の映像、PV、等などが切れ目なく続いていく。
Jobim本人のは勿論、Ella Fitzgerald、Judy Garland、Dizzy Gillespie, Chico Buarque、Caetano Veloso、Paulinho da Viola、Carlinhos Brown あたりまで。いっぱい。
日本からはなんかのTV番組に出て歌うマルシアと、小野リサが。

そろそろコメンタリーとかナレーションのひとつでも、と思う他方で、あれよあれよといろんな映像が流れていくのにわーわーしていると、結局最後までこの状態で、88分、走りきってしまった。

上映後のQ&Aで監督は、音楽が全てを語ってくれていると思ったので、結局しゃべりは入れないことにした、と語っていた。 ま、その通りか。

殆どがひとり1曲なのだが、シナトラ(& Jobim)は例外的に2曲続けて。
これがよくて、さっき見たばかりの"Some Came Running"との流れもあって、あ、Daveだ、と。
リオ上空からの海のばーんとした俯瞰とあの映画のラストはなんか繋がるねえ、とか。

個人的によかったのは、Elis & Tomの"Águas de Março"のPV(かな?)。ヘッドフォンつけたふたりが向かいあって歌って踊るだけなのだが、ほんと幸せそうなの。

これもQ&Aで出た質問で、訊くまでもなく、だったのだが、João Gilberto(1stのジャケ写のみ)とStan GetzのFootageがないのは何故? と。
監督曰く、Joãoは今、自分で自分の映画を作ろうとしているので貸してくれなかったのだ、と。
たぶん、とんでもない金額をふっかけてきたのだろうな。

そういえば、95年のAvery Fisher HallでのTributeライブのとき、Joaoの扱いはさすがに別格で、休憩時間後にソロで4曲、ちゃんと枠が取ってあったのだった。 でもそのあと、Astrud Gilbertoのところで、AstrudがJoãoを呼んできなさいよ、ときーきー騒いで、急遽ものすごく不機嫌そうな表情のJoãoが呼ばれてセッションがはじまったのだが、バックのミュージシャン(Lee RitenourとかMichael Breckerとか、すごい面々)ががちがちに緊張して総崩れした、ということがあったの。 いろいろ複雑みたいだねえ。

要するに、Joãoが登場しないこれを”Music According to Tom Jobim”と呼んでしまってよいものか、Joãoのあの様式なしにBossa Novaはありえたのか、という例の問い、最後はいつものそこに行ってしまうのであったが、そこさえ除けば、とっても楽しい時間と映像でしたわ。

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