10.29.2011

[film] Kings & Queen (2004)

22の土曜日は、いつものように低気圧でしんでて、午後にようやく1本だけ見た。
シネマヴェーラで"Kings & Queen"。 

もう3回目か4回目くらいなのだが、こないだの日仏のMaurice Garrelの追悼特集でも見れなかったので、改めて。 この映画で、死んでしまってもなお自分の娘に呪詛の言葉を吐く彼の姿を、改めて目に焼きつけておきたい。

改めて、しみじみ、なんて豊かで深くて、でもどろどろではなくて、すばらしいドラマだねえ。

筋は複雑でもなんでもなくて、Nora (Emmanuelle Devos)の家族と彼女が愛した4人の王のお話。
最初のPierreは死んじゃって、彼の子供を育てながらヴィオラ奏者でちょっと頭のへんなIsmaël (Mathieu Amalric)とつきあった後、今はそんなに好きでもない大金持ちと結婚して幸せになろうとしている。
いや、ずーっと愛と幸せと安定を求めてきたのよ、って。

そんなふうに過去を振り返る彼女の半生に作家である父(Maurice Garrel)の病とその死が被ってくるの。

Noraはエモーショナルにびーびー泣きまくるもののそんなに不幸でも苦悩に満ちているわけでもなく、寧ろPierreの自殺に近い死の後、彼との婚姻証明をもぎとったり、金持ちとの結婚の前に息子をIsmaëlの養子として押しつけようとしたり、Noraへの憎しみと怒りに満ちた父の遺言を焼いてしまったり、そういうずるさ - 父はそれを見抜いて責めた - を淡々と描く。
そうされたって、彼女は分厚い胸板で堂々として揺るがないの。 Queenなの。

そして勿論、同様に、男共だって、ろくなもんじゃないのね。
Pierreは癇癪起こしてロシアンルーレットで死んじゃうわけだし、Ismaëlは病院に強制入院されて、それでもこれっぽっちも自分が変だなんて思っちゃいない。彼の家族もみんなそうだし。

このへんの、ぜったい自分が悪いと思わない、間違いを恐れない、でも決して他人に依存しない強さが登場人物の基本にあるので、ぜんぜん暗くなくて、「それがどうしたのよ」て、つーんとできる。 ところどころに現れる神話のモチーフはその辺をくっきり浮きあがらせる。

このへん、Noraのダイアログよりは、最後にIsmaëlが彼女の息子に語る言葉に全部出ているの。
(この博物館でのシーン、Ismaëlはもう死んじゃっているのかも、と思って。服が幽霊として出てくるPierreのと同じだし、病院とか博物館は死者が出てくる場所だし)

NoraとCatherine Deneuveが並んで歩くシーンは圧巻だねえ、と思う一方、やはりMathieu Amalricだよねえ。 彼が病院でダンスを踊るとこと、彼のパパのデリが襲撃されるとこのとてつもないおもしろさときたら。 このふたつのシーンだけでも、再見する価値あるわ。

この映画の音楽もまた、すばらしいの。
Moon River、Randy Newman、いろんなヒップホップ、RavelにWebern。

んで、まあ、ここは日本でここの現実は、この映画にあったようなのとはぜんぜんちがうわけだ。
この違いってなんなのか、っていっつも思うのね。

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