先週の10日、体育の日なんてくそくらえ、と。 でも2本だけ。
ワン・ビンのレトロスペクティブ、「鉄西区」制覇の野望は今回も果たせそうにないが、他のやつは見ておこう、ということで。
『名前のない男』(2009) - "無名者"から。
冒頭、地中の穴からごそごそ這いだしてくるおじさんがいて、雪がうっすら積もった地面を歩いてどっかに行って、どっかから帰ってくる。 あるいは、穴の中であったかいゲル状の汁麺(のようなすごいモノ)をずるずるすするおじさん、あるいは、凍った道路に散乱しているなんかの糞をこそいで、丁寧に袋に集めていくおじさん、あるいは、泥の川とか水たまりみたいなとこでペットボトルに水を汲んでいるおじさん、がいる。
言葉も音楽もナレーションもない。
でも、未知の生物ではないので、おじさんがなにをしているのか、はなんとなくわかる。
食べて、寝て、はたらく(土を掘って、なんか育てて、収穫する)。
おじさんはほとんどしゃべらず(収穫した瓜みたいなのを調理して食べるときだけ、なんかごにょごにょ言ってすこし嬉しそうだ)、たまにちらっとカメラのほうを見る。 カメラが撮っていることはおじさんにもわかっている。
この穴がおじさんの住処なので、ホームレス、ではない。 エコとかサバイバルとか、そういうのともぜんぜんちがう。
帽子は季節に応じて3種類くらい違っていたし、ライターも持っているようだし、煙草だって吸う。
名前はあるのだろうが、どうでもよいかも。 生年月日も、どうでもよいかも。
おじさんはこうやって1年間過ごす、というか生きている。
これだけでもひとって生きていけるんだ、という感嘆よか、生きるっていうのはこういうことなんだねえ、というのがダイレクトにわかる、そういう強さをもった映像であり、おじさん、である。
例えば、このおじさんの手前で、家族とか共同体とか国家とか、或いは歴史とか法とか、そういうのって何ありうるのだろうねえ、とか、そういう問いがふと浮かんでくるのね。
そのへんが、(例えば)Discovery Channelとかの(単なる)記録モノとは違うところなの。
しかし、休暇で山奥にドライブに出かけて散策していたら、穴から野人のようなのが出てきてなんかやってるので興味がわいて撮りはじめた。
というのを後のトークで監督はしれっと言っていたが、すごいよね。
それを1年以上やっていったわけだから、ワン・ビンもおじさん並みにすごいとおもうわ。
これ、においがでる4Dでやったら、すごいのになー。
おじさんは、今も地球のどっかに開いた穴のなかにいて、ごそごそしているんだろうなー。
10.19.2011
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