BFI Southbankの特集 – “A League of Her Own: The Cinema of Dorothy Arzner”を見ていく続き。
BFIのサイトにはどこから見るべきか、っていうガイド(https://www.bfi.org.uk/features/where-begin-with-dorothy-arzner)もあったりするのだが、各作品の上映は2回くらいなので、見れる順に端から見ていくしかないの。以下、見た順で。
Blood and Sand (1922)
2月10日、土曜日の昼に見ました。これ、シネマヴェーラでも見たことがあったサイレント『血と砂』で、Dorothy Arznerはuncreditedで編集と監督に関わっている。
原作はVicente Blasco Ibanezによる同名小説(1908)で、舞台化もされている。
幼い頃から闘牛士になるのが夢だったJuan (Rudolph Valentino)が夢を叶えて、幸せな結婚もしたのに魔性の女Doña Sol (Nita Naldi)に魅せられて転落していくのと、並行して同じ運命を辿ることになるならず者のPlumitas (Walter Long) – いっぱい殺していてみんなに恐れられている - の運命が哲学者によって語られて、Juanもならず者も同じようなタイミングで亡くなる。というのがスペイン絵画のような影と光の造型のなかで仰々しく語られていって荘厳でかっこいいのだが、結局オトコのバカなのってバカよねー、に尽きるかも。
Honor Among Lovers (1931)
2月11日、日曜日の晩に見ました。
pre-Codeドラマで元のタイトルは”Sex in Business”だって。邦題は『女の名誉』。
超有能な秘書のJulia (Claudette Colbert)に何から何まで面倒を見て貰っているウォール街のトレーダーJerry (Fredric March)がいて、Juliaのことが好きでなんとか打ちあけようとして言い寄っていくのだが決定的な機会がなく空回りしてて、他方でJuliaにはやはりトレーダーをしている婚約者のPhilip (Monroe Owsley)がいて、ちょっとこのところのJerryの挙動が怪しく怖くなってきたのでPhilipとさっさと結婚してしまう。
一年後、Jerryの友人で投資をしているMonty (Charlie Ruggles)が日本の絹が大暴落したと言うとそこに他の客の預り金含めて全部ぶっこんでいたPhilipが青くなって、このままだと牢獄行きになる助けて、ってJuliaに泣きついて、困ったJuliaはJerryのとこに相談して..
お仕事とお金と恋愛と結婚をめぐる、ものすごくよくできた、どきどきしておもしろくて洒落た都会のrom-comで、上映後も大拍手だった。真ん中のふたりが最高に巧いし、Philipみたいなバカはいかにもいそうだし、あんな有能でしっかりしたJuliaがなんであんなバカと一緒に、もどこかにあっておかしくないし、Montyの恋人のGinger Rogers -映画出演の最初期だそう - のとぼけた風味もたまんないし。
Nana (1934)
2月12日、月曜日の夕方に見ました。
これもpre-Code映画扱いで、監督はGeorge FitzmauriceとDorothy Arznerの共同。Samuel Goldwynの肝いりで主演のAnna Stenを次のGreta Garboとして打ち出そうとしたそうなのだが、興行的にはそこそこ当たったものの結果的には… 邦題は『女優ナナ』。英国では”Lady of the Boulevards”というタイトルだったらしい。撮影はGregg Tolandだし、音楽はAlfred Newmanだし、画面はきれいでプロダクションはすごいのだけど..
同じÉmile Zola原作の映画化だともちろんJean Renoirの”Nana” (1926)があって、あの肉感の生々しさと迫ってくるなにかには勝てるわけがなくて、愚かな貴族たちを得意になって翻弄していくNanaの前半の勢いが後半に空回りして萎れていくのはきつくて、その切なさ悔しさをあとちょっとでも演技で補えたら… となってしまうあたりが残念だったかも。
Anybody's Woman (1930)
上のにそのまま続けて、12日、月曜日の晩に見ました。平日の夜に2本続けて見るのはしんどいのでやめたいのだが、1本の上映時間が80-90分くらいなのでしょうがないけどがんばれるかも、になる。こういう2本立てならほんとによいなー
脚本にZoe Akinsが参加している。 邦題は『夫なき妻』?
弁護士でいじけ虫のNeil (Clive Brook)は突然妻がどこかの富豪と一緒になって出ていっちゃったことを新聞で知ってぐでんぐでんに酔っぱらって、向かいのアパートで同様に飲んだくれていたバーレスクの踊り子Pansy (Ruth Chatterton)を部屋に呼んで一緒に飲んで騒いでいるうちに結婚してしまう – というか朝に目覚めたら結婚したことになっていた。
階層も話す言葉も違うし、互いに、周囲の友人たちすら長続きするとは全く思っていなかったのにとにかく一緒に暮らし始めて、それぞれが個別に勝手に反省してよくなろうとしたり辛抱したり、はっきりとした別れのきっかけもタイミングも作れないままになんとなく続いていって、Neilの友人でお金持ちのGustave (Paul Lukas)がPansyに惚れて結婚を申し込んできたり、Neilの前妻も未練あるかんじで彼のもとに寄ってきたり、いろいろあってずっとはらはらしどおしな(8割くらいはだめだとおもった)のだが、でも最後はAnybody’s Womanじゃなくてやっぱり君じゃなきゃだめなんだ、ってなるの。きれいごとも奇跡もジャンプもなしに、そうなってしまうのでなんだかわかんないけど見事な着地、としか言いようがない。
これも終わって大拍手だった。
ここでいったん切る。
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