2.05.2024

[film] Miúcha, the Voice of Bossa Nova (2022)

1月29日、月曜日の晩、Curzon Bloomsburyにあるドキュメンタリー映画専門のシアター(DocHouse)で見ました。

“Miúcha”として知られる歌手/コンポーザーHeloísa Maria Buarque de Hollanda(1937-2018) - Chico Buarqueの姉でありJoão Gilbertoの2番目の妻でありBebel Gilbertoの母であり、自分もCDは何枚か持っていたはず(Vinicius de Moraesと一緒のだったか) - 彼女が遺した膨大な映像、メモ、日記、などを網羅してBossa Nova黎明期のシーンの珍しい映像てんこもり! という以上にいろいろ考えさせられるところもあった。

監督はLiliane MuttiとMiúchaのいとこであるDaniel Zarvos。Miúcha自身による喋りの他に姪のSílvia Buarqueが彼女の声をあてたりしている。ブラジル・フランス・アメリカの合作映画。

父はリオの歴史家でボヘミアンの家庭で育ち、シモーヌ・ド・ボーヴォワールとジャン=ポール・サルトルがブラジルに来た時には彼らが家にやってきたとか、そういう環境で育って、ヨーロッパ~パリにいた時(ブラジルは独裁政権下だった)にJoão Gilbertoを紹介されて付きあって結婚することになり、Bebelが生まれて.. というのとは別に音楽の方ではVinicius de MoraesにTom JobimにStan Getzに、あとからChico Buarqueにー、と当時も今もの巨星たちがごくふつうに彼女の周りにやってきたり、一緒に歌ったり、それらの映像も沢山残っていて、わーとか、えーとか、ばっかりなのだが、そういうのが続けば続くほど、彼女のいた場所や歌声って矮小化されて見えにくくされたままだったのではないか、って。

もちろん、João GilbertoもVinicius de MoraesもTom Jobimも、音楽史に残る巨人たちであることは言うまでもないのだが、彼らがいくらすごかったからって、Elizeth Cardosoは?Elis Reginaは? Maria Bethâniaは? Tania Mariaは? Joyceは? … って (Elisの評伝映画はあったか)。

最初はJoão Gilbertoの(いかにもありそうな気がする)DVを告発するような内容だったら.. と少しどきどきしていたのだが、それほどでもなくて(ふつうに変な人、はあるけど)、であればあるほど、いろんなサークルの中心でいつも人なつこい笑顔で歌っていたMiúchaがより素敵にすばらしく、そんな彼女を掬いあげて想う映画、でよいのかな、って。(最初の方でボーヴォワールをきちんと紹介していたのでもう少しその辺を掘り下げるのかと思った)

João Gilbertoとの婚礼の時のフィルムに写真、夫婦でTVインタビューに出たときのとか、そこに乱入してくるよちよちのBebelとか、Vinicius de MoraesもTom Jobimのも見たことないような映像ばかりで、Bossa Novaって人を繋いで幸せにするよねー、って改めてあたりまえの。また聴き始めようかしら、とか。 数年前、ロンドンでCaetanoの公演に行った時、自分を含むブラジル人にとってロンドンは特別な場所なのだと強く語っていて、独裁政権下での亡命の経験は重かったのだろう、と思ったが、ヨーロッパって、ブラジル音楽全般にとっても決して小さくない場所なのだろうな、って。

数年前までの極右政権を経てあの国の音楽がどう変わっていくのか、少しだけ興味がある。別の極右政権のままずっときているにっぽんの音楽については、もうずっと腐って死んでる、と思うのでなんの期待もしていない。

ぜんぜん関係ないけど、グラミーの切り抜きのなかで、Tracy Chapmanのはほんとうにしみた。中野サンプラザの来日公演、それはそれはそれはすばらしいものだったのよ。

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