2.14.2024

[film] The Disappearance of Shere Hite (2023)

2月6日、火曜日の晩、Curzon BloomsburyのDocHouseで見ました。

1976年に出版されてベストセラーとなり、当時のフェミニスト運動に貢献しながら近年はすっかり話題にものぼらない”The Hite Report”について、レポートをまとめたShere Hiteの足跡を辿りながらあれはなんだったのか、を追っていく。2時間近い内容だったがまったくだれない。監督はNicole Newnham、ナレーションとHiteの声を被せていくのはExecutive producerでもあるDakota Johnson(ものすごくうまい)。

60年代後半にコロンビア大学の貧しい大学院生(社会史専攻)としてセントラルパークの脇の半地下のアパートで穴倉の生活を送りつつ、男性の教員陣からやりたいことを端から削られ落とされ、お金のためにモデルやピンナップの仕事をこなしつつフェミニストの集会や抗議活動に参加するようになり、その流れで数千人の女性に手紙のアンケートを送ってその結果を元に男根に依存しない(と思われる)女性の性のありよう - 自慰やオーガズムや得られる満足などまで含めて幅広い世代に調査して、それを纏めて本にする。映画のなかで「男性」が指摘しているように「科学的ではない」のかもしれないが – たぶん実際にあんま科学的ではなさそう - 間違いなく隠れていた/表に聞こえなかった(誰も聞こうとしなかった)声を拾いあげて並べることには成功して、この本は売れて、彼女はTVを始めとしたメディアに出るようになり、ホテルに暮らしてセレブの日々を送ることになる。

が、3冊目のレポート - 男性の性にフォーカスしたあたりからバックラッシュが酷くなり、彼女がTVに出演した際のクリップも出てくるのだが、まあひどいことゲスだこと。男性のゲストたちが、「おれはこんなんじゃない」「友達に聞いてもちがうって言ってる」「勝手にこんなことを言われるのは我慢できない」等々。クリップされた番組で司会をしているOprahもあきれて顔色を変えるくらいなのだが、今のホモソーシャルのありよう100%そのまま、標本ビデオのように露わとなるあの男たちの醜さを見てみ。そしてSNSでヒステリックにわーわーわめきたてる今の幼稚な連中となにひとつ変わっていないことにびっくりするがよいのだ。 「なんで変わらなきゃいけないんだ(怒)」とか平気な顔して言うことでしょうよ。くそ野郎ども(って怒りに震えるよ)。

こうしてアメリカにいられなくなったのか嫌になったのかShere Hiteはヨーロッパに渡って、メディアから一切姿を消して、2020年にロンドンでひっそりと亡くなった。

そもそものコロンビアの教官の指導からして、女性が何かを書いたり表明したりすることに対してまずこちら(男性)の言うことを聞いてほしい、こちらの想定していなかったことを書いたりやったりしないでほしい、そしてそういうことをした場合の、見たくないし聞きたくないしなかったことにしてほしい、というような服従してもらって当然の俺様欲求/思考の謎 - ってシンプルにただの病気だよね。すでにそこにあるもの、そうなっているものに対してなに偉そうにわがまま言ってるのあんた? と。 Shere Hiteの場合、ルックスがお人形さんのようだったので、ああいうことをされたり晒されたりしたことに対するショックとか恨みも小さくなかったのではないか。

後半はそんなことばかり思ってしまったのであまり集中できなくなってしまったのだが、日本でもなんとか公開されますようにー。

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