5月24日、水曜日の晩、ヒューマントラストシネマ渋谷で見ました。
ヴェネツィアやロッテルダムでいくつか賞を受賞したGabriele Mainettiの監督2作め。
1943年、ローマの郊外でユダヤ人のIsrael (Giorgio Tirabassi)のやっているサーカスの呼び込みで4人のフリークスが紹介される - 全身毛で覆われた怪力の野人Fulvio (Claudio Santamaria)、アルビノで虫(ただし蜂をのぞく)をコントロールできるCencio (Pietro Castellitto)、小人で金属を体にくっつけたり動かしたりできるMario (Giancarlo Martini)、体が電気を帯びてて触れた電球を点灯したり感電させたりできるMatilde (Aurora Giovinazzo)で、みんなぼちぼち楽しくやっていたものの戦争がひどくなりそうなのでIsraelの提案でアメリカに渡ろうよ、と、各自が渡航許可に必要な金を持ちよってIsraelに託すのだが、彼は出ていったきりそのまま姿を消して、Israelを父のように慕うMatildeは彼を探しにでるが、残りの3人はベルリンサーカスに行けば拾って貰えるし、ってそっちに行くことにする。
ベルリンサーカスは6本指のピアニストのFranz (Franz Rogowski) - 彼の弾く”Creep”や” Sweet Child O' Mine”とかが評判らしい - が仕切っていて、未来を予知する能力がある彼はTVゲーム機やiPhoneの絵も描いていたり、ヒトラーの自殺も既に予測してて、でも4人の異能者が現れるというのも見えているので彼らをナチスの幹部である兄に献上しよう、と狂おしく探したり待ちわびたりしている(そんな彼自身も奇形の者として自分の家族から蔑まれている)。
Israelを探すべく仲間と別れたMatildeはひとりで歩いていたところをナチスの兵隊に襲われて、電撃でやっつけたものの動けなくなり、そこを拾って介抱してくれたのがせむし男の率いるパルチザンの部隊で、ナチスと野良でゲリラ戦をしたりしているのだが、どうしても敵というか人を殺すことができないMatildeはやっぱり無理、とそこから抜けて3人のいるところに向かう。
Franzのところで拷問を受けていた3人にMatildeが合流して4人になり、こいつらがあの4人に違いない、と確信したFranzは彼らをメインに据えたショーを賓客を招いて華々しく開くのだが当たり前のように大失敗して逃げられて、4人はちょうどやってきた収容所に向かうユダヤ人を乗せた列車にいるIsraelを助けようとしたところで追ってきたFranzたちナチスの軍隊とぶつかり、それを横からパルチザンが狙い撃ちして、結構陰惨な戦争絵巻が…
お話はキャラクター設定も展開も含めて結構雑にあれこれぶちこんで、殴り書きの勢いで一気に撮ってしまったような感があり、でもその勢いがどうして、なんのためなのかがあんましよくわからないのがやや残念かも。例えば、Guillermo del Toroの映画が丁寧に滲ませようとする異なるものへの愛や哀しみがあまり感じられない、というか。
ヨーロッパに昔からある異形(フリークス)のアイコンを並べて、それを見世物にするサーカス小屋を置き、そのありようを揺さぶってユダヤ人を含めて排除し、クリーンな世界征服を目論むナチスドイツを反対側に置いて、その衝突のなかで放たれたフリークスたちのパワー。というとX-Menのシリーズにあった、よいミュータントとわるいミュータント(Magneto)と人類の戦いを思い起こすのだが、この映画には「ふつうの人類」、みたいなのがほぼ出てこない – Israelくらいか。そういえばMagnetoの起源も収容所だったので、欧米におけるミュータント問題はナチス起源、と見てよいのかしら?
それぞれの能力や表象をきちんと追っていけば割といろんなものも見えてきそうな気がするのだが、なんかどうしても簡単にX-Menのあれらが思い浮かんでしまったのはちょっと残念だったかも。特に最後に爆発するMatildeのパワーのとこなんて、Jean Greyのにそっくりで、ああいう娘は怒らせたらこわいぞ ... ってミソジニーの連中がいう典型みたいな描き方だし。
Franz = Franz Rogowskiの狂いようもいかにもなドイツのパラノイアックなそれで、最近のいろんなドイツ映画 – “Undine” (2020)とか”Transit” (2018)とか - に登場するFranz Rogowskiさんがあんなふうに - 芸達者なのはわかったけど - カリカチュアライズされてしまうのは、ちょっと勿体ないかもー、とか。
6.01.2023
[film] Freaks Out (2021)
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