2月27日、日曜日の午後、ラピュタ阿佐ヶ谷の特集『番匠義彰;松竹娯楽映画のマエストロ』で2本続けて見ました。
この監督のことも「松竹娯楽映画」がどういうものかもよく知らないのでー。
橋 (1959)
大佛次郎作の同名小説の映画化。脚色は柳井隆雄。
戦後の東京、元海軍提督の大内田良平(笠智衆)のところに学生の松村(石濱朗)が家庭教師のバイトとして応募してきて、いやどちらかというと老人の話し相手をしてほしいのだ、と言われる。良平は同居していた長女敦子(福田公子)の夫・谷口(細川俊夫)と衝突して家を飛び出して、昔の部下の中山(渡辺文雄)たちが住む家も探して世話してあげてて、若い話し相手も、ということで松村が雇われた、と。でも良平は年寄り扱いされるのを嫌がって日雇い労働(ニコヨン – 日給240円)のバイトに出て喧嘩して怪我したりしているので、次女の良子(岡田茉莉子)が自分のアパートに引き取ることにしたり、なんだかみんなに大事にされている。
お話しは他にもいろいろ、父のおかげで職を失った良子がひとりで貿易商をやっている旧知の宮原(大木実)のところにアシスタントとして雇われて距離を縮めていくのだが宮原はずっとバーのマダムのおきく(水戸光子)の愛人としてお金を出して貰っていたり、なんとなく良平の傍にいる松村が良子のことを想っていたり、良平がニコヨンで知り合って連れてきた女性と中山をくっつける話があったりとか、いろんな人の間にいろんな橋が架かったり外されたり叩いたら崩れたり、その下を流れる川にはー、とか、秀吉の時代に海に沈んでいた骨董の壺を巡るやりとりとか、沖縄戦で失った部下のことを未だにいう良平とか – これらも橋なのか、とか。
そのうち良子と宮原は婚約まで行くのだが、おきくのことなんか聞いていなかったので良子はお金のケリをつけて宮原から離れて、それらを隅っこでしょんぼり眺めている松村がいたり。
娯楽映画というよりは老人も若者も向こう岸に渡れないまま川辺に立ち尽くしているようなアンサンブルとしてきちんと描けているのが素敵だと思った(ここに変人が入ってくるとアルトマンのようになる)。 家屋とかファッションもモダンなところとクラシックなところをうまく調和させながら機能していて、なんでこんなに沁みるのかというと、たぶんここに出てくる人たちとどこかで出会っているからではないか。小津や成瀬の昭和は別のバースだと思うけど、ここのは同じ気がして、ブリッジとかポータルがー。
でも、男たちは男たちのことをみんな大事にしすぎ/されすぎ、っていうのは少し。
空かける花嫁 (1959)
上のから続けて見た番匠義彰監督作品。原作は藤沢桓夫の「花粉」。脚色は笠原良三。
女子大生のまるめ(有馬稲子)-いい名前! - は下町の繊維問屋七宮商店のどけちでワンマンな七兵衛(志村喬)の大切な孫娘で、フランス留学生試験を受けて合格して3年間パリに留学することができる(いいなー)のだが、3年間の留学費用400万円はどけちじじいにはいろいろショックで痛くて、なんとか留学を思い留まらせようと、彼女のアパートの隣に住んで浅草のショーの座付作家をしている秋山(高橋貞二)と取引をして留学を思いとどまらせようとしたり、まるめの方は、うなぎ屋のおかみの浪花千栄子と七兵衛をくっつけよう(そうすればじいちゃんも寂しくなかろう)としたり、結局七兵衛の企てがばれてあったまにきたまるめはやっぱし断固フランスに行くことにする。
こういうのが大船調、っていうのがなんとなくわかるくらい当時の風俗 - メケメケとか野球チームとかデパート屋上とか - を散りばめて家族とその周辺の一喜一憂をぐるぐるに巻いて回してみんなの目が回ってなんかよくなった気がするからよくない? いいじゃん? になるやつ。(いちおう、空はかけないし花嫁にもならない)
とにかく志村喬のじじいが大変にいろんな意味でうざくて、ひとつ前の笠智衆もそうだったけど、なんでみんなああいうじじいをあんなに敬って大事にしてへいへい言うこと聞いてあげるのさ? って。
Rom-comだと飛び立つ直前の飛行機内で.. っていうのはよくあるけど、ここのはあんましこなかった。えーなんでパリ行かないの? 3年行って勉強できるなんて夢のようなのにさあー、がずっと。自分のことのようにざんねん。 だいたいさー、高橋貞二なんて、映画のなかでほぼなんもしてないじゃん? ただぼーっといるだけじゃん。なんでパリよりあんな幸せになれっこないようなのをとるのさ? ぜったい後悔するよ.. (以下えんえん大きなおせわ)
たんにほのぼのあったまる、というだけではない、でも毒というほど強くないなにかがうまく調和しているおもしろさがあると思ったので、この特集はもう少し通ってみることにした。阿佐ヶ谷はちょっと遠いのだが。
3.08.2022
[film] 橋 (1959)
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