11.28.2019

[log] Saint Petersburg

22日の朝7時発の電車で11時に着いた。外が明るい夏だったらすばらしい車窓になったであろうに。 モスクワよりもほんの少し暖かい。それでもマイナス3℃くらいだけど。

Hermitage Museum

絵を見るのが好きであれば、それも自分の目で直に見つめるのが好きなのであれば、エルミタージュ美術館というのはたとえ浦島太郎になっても最後の約束の地であり向かうべき御殿であったので、どれだけ体調を崩していようが目が開いててなんか見えるのだったら行く、だったの。 散々並ぶだの混むだの聞かされていたのでオンラインで -  1日ではぜったい見切れるわけないと思ったので、2日券を取った(実際そうだった。2日あってもぜんぶは見れない)。

ネットでチケット買ったひとの入り口は別の裏口みたいなとこで、列なんて欠片もなくて、プリントした紙のバーコードかざすだけですぐに入れてしまう。そこから倉庫みたいなところを抜けて遠足の児童みたいな連中の間を抜けるとばーん、てでっかい宮殿みたいな(いや、宮殿だったんだけど)階段が現れて、こいつかぁー、になる。

むかし見たソクーロフの『エルミタージュ幻想』(2002)で、美術館なのになんで絵を見ないでぐるぐるやっているんだろ?  と思ったが、通ってみてなんとなく理由がわかった。ここのなだらかな回廊の、迷宮というほど混みいっていない導線のありようはおもしろくて、絵を見ていく快楽とは別の気持ちよさが湧いてくる。視界のすべてをアートに囲まれて塞がれて、そこを抜けていく快感と抜けられない誘惑のせめぎ合い。建物を作ったひとが偉いのかも。

新しいホールや部屋に入るたびにわぁ、廊下を抜けてはうぅ、ばかりで、ウィーンのシェーンブルン宮殿に行ったときのようで、あの宮殿仕様にすばらしい古典の絵画がいっぱい付いてくる、みたいな。 部屋に入ると天井みて窓とその向こう側を見て、装飾品とかみて、最後に絵(落ち着け)、になるので慌しいのと、部屋の調光はもうちょっと絵に優しいのにしてほしいなー。反射して見難いのがいっぱいあったし。

でもとにかく、絵はすばらし。 ダヴィンチは例のルーブルのに行ってしまっていたし(まってろ)、ラファエロの”The Conestabile Madonna”も貸し出されていたし(まってろ)、でも替わりにUffizi Galleryからボッティチェリの”Madonna Della Loggia”が来ていた。
あと、ユベール・ロベールもいっぱいあった。

Alexander Pushkin Museum and Memorial Apartment

暗くなるまでずっとエルミタージュにいるのもあれなかんじだったので、そこの近所のプーキシンが決闘の後に亡くなるまで住んでいたアパートに行った。そこがそのまま博物館になっているの。 オーディオガイドをもれなく持たされ、ヘッドセットを付けて部屋ごとに回っていく。

妻と子供との生活以上に、決闘の前後とやがて訪れる死までが、結構生々しく説明されて部屋とか家具とか日用品と一緒に説明されるとなかなかしんみりしてしまうのだった。でも彼の書斎はとても居心地よさそうで、いいなー、って。

晩はプーキシンが決闘前に食事したLiterary Café にも行った(明るくてちょっとイメージちがう)ので、数時間でプーキシンがとっても身近になった。

Saint Isaac's Cathedral

23日の午前に行った。聖イサク聖堂。 今も普通に使われている聖堂で、入った時もお祈りの時間だった。でっかいお堂に天井までびっちり、は同じなのだがやや端正でモダンなかんじも。お堂の天辺に昇っていくチケットも買っていて、寒いのにバカ、だったのだが段数は180くらいでベルリンやフィレンツェのやばさはなかった。 眺めはよかったけどやっぱり寒かった。

Dostoevsky

サンクトペテルブルクには猫のいるドーナツ屋 –Pyshechnaya - があって、猫もドーナツもどちらも好きなので行ってみたのだが、その近辺に『罪と罰』のK橋とかラスコーリニコフの家とかソーニャのアパートとかいろいろあったので、ざーっと歩いてみた。あまりぱっとしない川があって、川辺で鴨が震えてて、ここ、天気が悪かったら滅滅してあんなふうになるよね、のかんじは十分。

猫には会えなかったのだが、リングドーナツ1種類しかないここのドーナツは劇物で、これ、Café du Mondeのベニエよかやばいやつかもしれない。昔の揚げパンのかんじ。 子供とかみんな10個くらい粉砂糖まみれになって食べていて、確かにこれなら.. だった。

Church of the Savior on Blood


午後に『血の上の救世主教会』。外側が修復中で玉ねぎが隠されてロケットみたいになっていたが中は普通に見れた。 光が十分に入ってこないせいもあったのか、血の上のかんじがなかなか。ここ、夜にひとりでいたらぜったいこわい。

Hermitage Museum


別ビルディングにある近代絵画たちを見ていなかったので、再び戻る。
こちらの建物はややモダンで、見れたのは3フロアのうち、これらが固まっている1フロアだけ。

カンディンスキーがあって、マレーヴィチの『黒の正方形』(1915)があって、大量のマティスがあって、ナヴィ派もいて、ドガもルノワールもたっぷりなのと、セザンヌの静物の時期を隔てた4点は、とってもおもしろかった。 あと5時間だっていられたかも。

この後はバレエだったので、観光はここまで。 ペテルゴーフもエカテリーナ宮殿(TVドラマ “Catherine The Great”、おもしろい)も行けなかったので、また来るしかない。

翌日は朝9:00の電車でモスクワに戻って、モスクワ着いたら空港にそのまま向かった。

電車の窓からの光景は半凍りの河と枯れ木のコントラストがタルコフスキーの世界になっていて、痺れた。

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