11.04.2019

[film] La Maison des bois (1971)

先月からBFI Southbankで始まった特集 “Maurice Pialat and the New French Realism”は、Pialatの作品だけでなくて彼の周辺のJean-Claude Brisseau, Claire Denis, Cyril Collard, Olivier Assayas, Arnaud Desplechinといった作家の作品もカバーしていて、見始めたらどれもおもしろくてたまんなくて、とにかくPialatの初期作品とかものすごくて、自分の中ではJohn Cassavetesくらいのところまで来ていて、できる限り見たい。 けど時間が...

これは10月26日の土曜日に上映があって、でもぜんぶ見たら364分で一日なくなってしまうので、まず午後に、part1-3まで(156分)を見て、それでおもしろかったら後のも見ることにしようと思ったら、あまりに感動して、これは残りのも絶対見なきゃだめでしょ、になって、part4-5を29日-火曜日の晩に、part6-7を31日-木曜日の晩に見た。 こんなのがTVで流れていたなんて。 TVシリーズとしてはR. W. Fassbinderの”Berlin Alexanderplatz” (1980)に匹敵するくらい歴史に残る、歴史を描いたドラマだと思う。

英語題は”The House in the Woods”。 Pialatが46歳の時に撮った全7話からなるTVシリーズ。 それまで彼が撮った劇場用作品は”L’Enfance nue” (1968)のみ。

第一次対戦時のフランスの田舎で、小さな子供たちの学校があって(Pialatが先生役をしている)、そこから3人の子供達がお家に帰って、母というほど若くはなく祖母というほど老いていない女性からおやつを貰う。やがて彼ら3人は大戦でこの地に疎開してきている子供達であることがわかって、物語は3人の中でもいろんないたずらを含めて元気いっぱいで家族から特に注意を払われているHervé (Hervé Levy) - 他の2人には定期的に訪ねてくる母親がいるのにHervé にはいないの - を中心にいろんなエピソードが重ねられていく。

家には猟師をしているパパAlbert (Pierre Doris)とやさしいママJeanne (Jacqueline Dufranne) と息子のMarcelと娘のMargueriteがいて、やがてMarcelは兵隊として前線に向かい還らぬ人となるのだが、戦争は終わり、子供たちは実親の元に引き取られて、Hervéも再婚した父 - 義母にはHervé と同じくらいの齢の娘がいる - が暮らすパリに越していく。

パリでのHervéには新しい家族の元で当然のようにいろいろあったりして、お別れしてきた昔の家ではMarcelを喪い、大好きだったHervéもいなくなってしまったJeanneが寂しさのあまり病の床について、Hervéは家出してお見舞いに向かうの。

パパが再婚することを知ったHervéが癇癪おこして手紙をぜんぶ捨ててしまったので子供に会いにきたのに会えずに途方に暮れるふたりのママと楽しくピクニックしていた家族のすれ違いとか、子供たちがフランスとドイツの戦闘機の空中戦で落ちてきたドイツ機の操縦席にあるドイツ兵の遺体をこわごわ見るところとか、土地のお屋敷に住む侯爵とHervéとの交流とか、大好きなシーン(これから何度でも見返したくなる)がいっぱい。

カメラはHervéを多く映すけれど、彼の辛さや想いを決して代弁したり語ろうとしたりしない。それはかわいそうなJeanneに対しても誰についてもそうで、そうすることで距離感が際立って、車や列車で遠ざかっていくシーンがどこまでも目の奥に残るの。布をかけられたドイツ兵の遺体とその傍らに立っているフランス兵の間の距離とか、Marcelの幽霊とか。それらのカメラの置き方とかゆっくりしたズームとか。 今からだいたい100年前の人々の暮らしがこんなふうにどこまでも忘れがたいものに。

あとはフランスの田舎の美しい風景や人々で、これはNew Yorked誌のRichard Brody氏も書いているように、ルノワール - オーギュストとジャンの両方 - がたっぷり入っていて、どこを切ってもそんなふうに見えてしまう。

毎回のエンディングに流れるのはラヴェルの声楽曲 ”Trois beaux oiseaux du paradis” -『3羽の美しい極楽鳥』で、大好きな曲になった。

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