17日、土曜日の午後、BFIのCary Grant特集で見ました。一番でっかいシアターがほぼ満員で、終わるとみんなわーって拍手になる。これに限らずCary Grantのコメディは必ず拍手喝采で終わるの。
監督がGeorge Cukor、プロデュースがJoseph L. Mankiewicz、Philip Barryによるブロードウェイの舞台用脚本をDonald Ogden Stewartが脚色し(オスカーとった)、俳優陣はCary GrantにKatharine HepburnにJames Stewart(オスカーとった)にRuth Husseyに。とてつもない古典と言われているが胸のすくような感動的なフィナーレがあるわけではない、最後まで危なっかしくて、えー そっちかー そうかー そうだねえ.. って考えさせるところも、見るたびにそれが(何度でも新鮮に)起こることいろいろ含めての古典なんだと思う。
冒頭、フィラデルフィアの名家で社交家のTracy (Katharine Hepburn)の家の前で、彼女とC.K. Dexter Haven (Cary Grant)が大喧嘩して、Tracyが彼のゴルフクラブをへし折って、Dexterは涙目で家を出て行っちゃうの。
そこから2年後、Tracyは成り上がり(で頭からっぽ)のGeorge Kittredge(John Howard)と結婚することになって、式になんとか潜りこみたいタブロイド誌の”Spy”は記者のMike (James Stewart)とカメラのElizabeth (Ruth Hussey)と、切り札にDexterを加えて、Tracyの兄の友達とか適当言って屋敷に潜りこませて隠密に … とはならずに結果的にあれこれ引っ掻き回すことになる。DexterはTracyに彼女の父親の浮気の件をほのめかし、かつての彼女が自分にどう見えていたかを率直かつ親身になって語り、そんなのでぐらぐらし始めた彼女は、作家でもあるMikeに絡んだりぐでぐでに荒れていって、とうとう式の前夜に..
結婚式で新たに、今度こそ幸せを掴もうとしている花嫁に向かって、前夫から記者からDexter贔屓の家族までよってたかってみんな勝手なことを言って彼女の土台をぐらぐらにするのだが、誰も我こそがとか言わないし着地点も見えないまま、最後の最後にそれは起こって、結婚式のどたんばの逆転劇としてはそうとう際どいぎりぎりのやつで、どうせ、たぶんあの後だれも責任とろうとしない。こんなとてつもなく無責任・思いつき・いいかげんな顛末を”The Philadelphia Story”って、今でいうご当地Rom-comにしてしまうのだから呆れてものも言えないわ。土地の名前がつく“Sleepless in Seattle” (1993)なんて、これの500倍くらいまじめだわよ(べつにほめてない)。
でもこんなふざけたお話しがふざけているなりにリアルで身を乗り出して見入ってしまうのは俳優陣がみんな驚異的にすごいからよね。ほぼ目配せの連携でだいたいの物事が運んでいったり、薄ら笑いのタイミングが絶妙だったり、Mikeのしゃっくりが見事に転がったり(あれアドリブなんだよ)、Action speaks faster - 泣いて笑って絡んでのすべてがアクションとして極めて正確に機能してしまう驚異ときたら。
Holiday (1938)
12日、月曜日の晩にBFIの同じ特集で、同じくGeorge Cukor, Cary Grant, Katharine HepburnによるRom-com(更にPhilip Barry原作の舞台をDonald Ogden Stewart (& Sidney Buchman)が脚色しているとこも同じ)。しかしGeorge Cukorって、ここから”The Philadelphia Story”までの間に”The Women” (1939)を含めて4本撮っている(「風と共に去りぬ」は途中降板だけど)のね。
Johnny Case (Cary Grant)が休暇で出会ったJulia Seton (Doris Nolan)と結婚しようと彼女の家に行ってみるとそこは五番街の豪邸で彼女の父は超金持ちで、でもそこにはJuliaの姉でそこでの退屈な生活にうんざりしているLinda (Katharine Hepburn)とか兄でアル中のNed (Lew Ayres)とかがいて、JohnnyはLindaやNedと気が合って、逆に将来や仕事のことについて固いことばかりがみがみ言い始めたJuliaが面倒になってきて、Lindaは仕事より大事なことがある、って言うJohnnyのことを好きになって、やがてNew Year's Eveのパーティでの婚約発表が近づいてくる。
これも“The Philadelphia Story”と同じく結婚(or 婚約)式をどたんばでぶち壊す話で、この話でのKatharine Hepburnは妹の幸せをぶち壊す側にまわっているのだが、そういえば”The Philadelphia .. “ だって、彼女、自分で自分の式を壊していなかったかしら? とか、ここで壊されたものって結局なんだったのだろう? 高慢と偏見? JuliaもGeorgeもかわいそうだけど、彼らの相手ならまたそこらで見つかりそうだし、お金持ちってそういうもんなんでしょ、とか。
ここでもKatharine Hepburnの酔っ払いとでんぐり返り - 彼女の運動神経 - はすばらしいとしか言いようがないのだが、スタジオはこれの前年に”The Awful Truth”でGrantと共演したIrene DunneをLinda役にしたがったらしい。(最終的にCukorがKatharine Hepburnに決めた、と)
Irene DunneとCary Grantもそれはそれはすばらしいのだが、彼らは結婚した後のコメディをやるコンビで、Katharine HepburnとCary Grantは結婚する手前のコメディをやるコンビなの。
Irene Dunnとのやつはまた後ほど。
8.20.2019
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。