8.21.2019

[film] Irene Dunne & Cary Grant

ということで、今回のCary Grant特集でのIrene Dunneとの共演作を3本まとめて書いておく(見た順で)。

”The Awful Truth”は昨年の11月にもBFIのコメディ映画特集でかかったのを見ているのだが、今回2本見てから改めて見直したくなったので再見しちゃったやつ。

My Favorite Wife (1940)

15日、木曜日の晩に見ました。邦題は『ママのご帰還』。

プロデュースと一部原作はLeo McCareyで、”The Awful Truth”と同じく彼が監督する予定だったのだが自動車事故に巻き込まれてできなくなってしまったものだそう。

原作はテニスンの物語詩 "Enoch Arden" (1864)で、水夫のEnoch Ardenが水難事故にあい孤島で数年暮らして戻ってみると妻が結婚して幸せそうだった、ていうお話しの男女を逆転させ、ひねりついでにコメディにしたやつで、だから主人公の名前はNick Arden (Cary Grant)で、冒頭、裁判所で7年前の船事故から戻ってこない妻が死亡認定されて、Bianca (Gail Patrick)と結婚できる状態になるところから。

他方、Nickの妻Ellen (Irene Dunne)は7年ぶりに自宅に戻ってきて、自分が母であることを知らない自分の子供たちと会って、Nickの母とも再会すると、Nickはハネムーンに... っていうのでそのままハネムーン先のホテルに飛んでいき(すごい行動力)、Nickと目が合うと彼はびっくり大喜びして、でも同じ部屋に泊まるわけにもいかないので彼女用に別の部屋を取ってBiancaの隙をみて彼女に会いに行くのだが 、ホテルの支配人からめちゃくちゃ怪しまれておかしいったらない。

ハネムーンから戻ってもEllenは親戚としてちゃっかりNickの家にいて、夫の挙動が明らかにおかしくなったことからBiancaが精神科医を呼んだり、Ellenは死んでいないという噂を聞いた保険屋が現れて、Ellenが島でサバイブしていた7年間、Stephen (Randolph Scott)ていうムキムキ系の男とずっと一緒だった疑惑が持ちあがり、なにい、とか言ってるとNickは重婚の罪で引っ立てられ、互いにあんたってヒトは... 状態でどっちに転ぶかわからない、毛を逆立ててばかりの再会~衝突劇が楽しいこと。でも最後は結局”Favorite”のところに。

Penny Serenade (1941)

17日、土曜日の夕方に見ました。
これはコメディというよりしんみりした夫婦のドラマだった。 邦題は『愛のアルバム』。

冒頭、荷物をまとめてひとりしょんぼり家を出ていこうとしているJulie (Irene  Dunne)がいて、電車のチケットがくるのを待っている間に居間にあったアルバム - "The Story of a Happy Marriage" - を開いて、そこに挟んであるレコードを順番にかけながら回想に浸っていく、ていう音楽映画でもあるの。

Brooklynのレコ屋で音楽をかけているJulieに目がいったRoger (Cary Grant)は店に入ってその曲を試聴室で聴かせてくれないか、って彼女に頼んで、彼女を占有したいからそこらのレコードぜんぶひっ掴んでこれも聴きたい、って頼んで、結局閉店まで居座ってぜんぶ買っちゃって、両手いっぱいのレコードを抱えてふたりで一緒に帰るとき、うちにはプレイヤーがないから君の家で聴かせてくれないか、って。(... つっこみたくはないけどさ、なんだこれ)

こうして仲良くなったふたりはデートのフォーチュンクッキーでいちいちもじもじしたりかわいいのだが、大晦日の晩、記者のRogerが東京への特派員に指名されてすぐ日本に旅立つから結婚しないかって、で、その晩に結婚する。(え.. ビザとかないの?)

日本に着いたJulieは池にあひるが泳いでいる召使一家つきの一軒家(Rogerによると家賃は2000円、$1000かな、って)を借りて、Julieは妊娠して変てこな着物を着て幸せそうだったのだが、Rogerは遺産相続したから会社やめた、ふたりで世界中を旅しよう、とか言いだして、でもそんな大層な金額ではなかったのであんたなに考えてんの? になったところで大地震(関東大震災?)が東京を襲って、Julieは流産してしまう。

サンフランシスコに戻ってRogerは小さなタウン誌の発行を始めて、でもJulieは病院で泣いてばかりなので万能従業員のApplejack(Edgar Buchanan)は養子を貰ってみたらどうか、といい、試しに応募して面接に行くと希望されているような子(2歳くらい、青い目でカーリーヘアの男子)は数年かかるかもと言われ、でも親切な担当のMiss Oliver(Beulah Bondi)からある日連絡を受け、女の子の赤ん坊がいて、この子はいいわよ、というので連れ帰り、Trinaと名付けておっかなびっくり育児を始める。

で、一年間の里親としての試用期間を経て審査の時が来るのだがRogerは自分の会社を潰したばかりの無収入で、普通なら子供は取りあげられてしまうのだが判事の前でRogerが感動的なスピーチをして、Trinaは戻ってくるの。クリスマスにママの誕生日に、みんなで楽しく幸せに暮らしていったのだが、次の冬、Miss Oliver宛の手紙で、Trianaが病で突然亡くなってしまったことが明らかにされ、そこから塞ぎこんでしまったふたりはもう一緒にいないほうがいいね、になって冒頭のシーンに。 (でもこれで終わりじゃないの)

ドラマとして喜怒哀楽をとても情感たっぷりに描いて、Irene  DunneとCary Grantの夫婦のかんじもパーフェクトとしか言いようがないのだが、コメディではないの。 でもIrene Dunneさんはこれが一番お気に入りなのだそう。 朝の連ドラ向け、かなあ。

あと、メカから料理からおむつ作りまでなんでもこなしてしまうApplejack氏はJon Favreauの”Happy”の原型なのだと思った。

The Awful Truth (1937)

19日月曜日の晩、BFIで見ました。邦題は『新婚道中記』(←ありえない)
これもあそこで一番でっかいシアターがほぼ一杯で、やっぱりこれが一番おもしろいかなー、と。

もう別れましょ、て険悪になったJerry (Cary Grant)とLucy (Irene Dunne)の夫婦がいて、Lucyが再婚候補として連れてきた音楽教師Armand (Alexander D'Arcy)とかオクラホマの金持ち(Ralph Bellamy)とかがJerryには気にくわず、Jerryがつきあいだした金持ちのご令嬢のBarbara Vance (Molly Lamont)がLucyには気にくわず、互いに介入してぶち壊しあい眠れなくなったその先には。

あんた本当はヒトでしょ?と言いたくなるわんころのMr.Smithとか、なぜか懸命にドアをブロックしにくる正体不明の黒猫とか、動物が大活躍するのがとても楽しい。

あと、”His Girl Friday” (1940)でも引き続きCary Grantに散々虐められることになるRalph Bellamyがあれとほぼ同じポジション(しかも同様にママ付き)で登場している。

Irene DunneとCary Grantのふたりってひどい大ゲンカとか悲惨なことなことがあっても絶対に離れない頑丈な糸で結ばれたふたりなの。 これに対してKatharine HepburnとCary Grantのふたりはめちゃくちゃな惨事や大嵐の真っ只中でもなぜかくっついてしまう魔法の腐れ縁なのね。

どっちのふたりにしたってベースが最強なもんだからどんな突飛なお話しをぶつけてみても大抵へっちゃらなんだ。 でもなんでそれがCary Grantなのか、彼には可能となってしまうのかは、ヒチコック作品とかも絡めてきちんと考えるべきネタ、なのかもしれない。

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