7月29日、月曜日の晩、Barbicanで見ました。英語題は“The Chambermaid”。
メキシコのLila Avilésの監督デビュー作で、Sophie Calleのプロジェクト- “The Hotel” (1981)にインスパイアされた監督の演劇作品を映画用に書き直したものだという。
Eve (Gabriela Cartol)はメキシコシティの5つ星ホテル(アメニティでどこのチェーンかわかる)で部屋メイドをしていて、職場まで毎日2時間かけて通っていて、子供は預けていて電話でお話しできる程度(ホテルの外の世界は出てこない)、担当しているのは21階の客室で、昇進して42階のエクゼクティブフロアの担当になることが夢で。
物語は彼女の日々の奮闘 – いろんな客からの我儘や無理を聞いて駆けまわってたまに失敗してぐったり疲れてうんざり – を追っていく。 アニメティは既にいっぱいあるのに、とにかく補充しろ、って何度も言ってくる客とか、小さい子がいてシャワーを浴びる間だけ面倒みてほしい、ていう若いお金持ちの女性とか、常連ぽい曲者たちとか、姿は見たことがないけど、日本のカメラマンらしい客 - 枕元に遠藤周作の『死について考える』と文庫本2冊(タイトルわからず)が置いてあって、きれいなパッケージのお菓子がある(のでちょっと貰っちゃう)とか、黙々と掃除をしていると外でクレーンに乗って窓ふきをしている青年からアプローチされたりとか。ホテルといういろんな関係が密になるのか疎になるのか露わになるのか微妙な空間で起こりそうなあれこれがきれいに並べられている。
その他に、同僚の、気さくで人懐こいけど気がつけばしれっと仕事押しつけてきているおばさん(いるいる)とか、2年間ずっと従業員用のエレベーターガールをしている女性(いつも読書してる)とか周りの従業員の人たち、学業資格を取るために会社がやっているクラスでの始業前のやりとり - 先生から『かもめのジョナサン』の本を貰ったので読む - とか、Lost & Foundに残された引取り手のない赤いドレスが欲しくて、まだある? ってずっと確認を続けたり、とか。
Eveは無口で仏頂面でほぼ笑わなくて囁くような小さな声で喋って、頼まれた仕事はきちんとやるので評価はされていて、でも理不尽なことが続くとやはり頭にきて乾燥室で布団とかぼかすか叩いてて静かに泣いて。この辺のありようを見ると、誰もが同じメキシコの(時代は違うけど)Alfonso Cuarónの”Roma” (2018)を思い浮かべるかもしれない。
これって「サービス業」って括られているけど、「サービス」の名の下で客のためならなんでもやるんだろ/やれよ、って蔑まされている現代の奴隷のことだと思っていて、ホテル業、CA、店員、教師、他にもいっぱいあって、なんでこんなにも簡単に人は「役割」に応じて他人のこと虐めて上に立って出処不明のいらいら(ヘイト)をこめて威張りちらすようになっちゃったんだろうねえ、ていう溝口的に不条理な格子模様のことを考えたり。
で、Eveは自分の置かれた状況とか将来を冷静に見据えて(か、単にもう我慢できねえ、になったのか)ある決断をして、その様がとても清々しく素敵で、勿論、だからと言って明るい明日がやってくるわけではまったくないのだが、でもそうだよね、としか言いようがないの。 その決意のありようって我々のそれとも繋がっているのではないかしら。
日本人の客室のシーン、最近は旅先に本を持っていかなくなっちゃったけど、やっぱりあんなふうに不思議な顔されていたのかな、とか、自分もたまにお菓子置くことがあったりしたので喜んでもらえたのかな、とか。
Tate Modernであんなことが起こってしまってかなしいよう。
8.05.2019
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