3日の土曜日にCharlestonに行ってきた。ロンドンに行くと本屋でも小さなガーデンでも、Bloomsbury Groupの誰かがなんかした場所、というのが結構あるしBloomsbury Cookbookとかもあるし、そういうのを見るたびに行かなきゃ、とずうっと思っていたEast Sussexにある彼らの住処で拠点。 それは写真とかで見て思い描いていた像を遥かに超えたすばらしいものだった。理想のおうちNo. 1にいきなり躍りでた。もっと早くに来るんだったわ。
SussexってWilliam Blakeも住んでいたしPoohの橋だってあるし、なんかあるのかしら? 日本だと熊野みたいなとこ?
Victoriaの駅から南に電車で1時間ちょっとのLewes、からバスがあるはずだったのだが、例によってVictoriaの駅のチケットマシーンのバカ、のせいで乗る予定だったのには乗れず、Lewesの駅からはタクシーにしてしまった。£18くらい。 南に向かう電車はBritonでのプライドのイベント(Kylie Minogueが出るって)があるそうで楽しそうに混んでいた。
CharlestonはNational Trustが管理していて、彼らが住んでいたFarmhouseと企画展示をしているGalleryがあり、Farmhouseは各部屋が小さいので日曜以外で中に入るにはツアーを予約しておくしかない。 1時間ごとで、各回12人くらい。 1階と2階の9つの部屋をひとつづつ回っていく。 大きい荷物不可、写真撮影も不可。
Farmhouseの前には池があり、家の壁は蔦、ではない草樹がぼうぼうに覆っていて、そのぼうぼうの延長のようにガーデンが広がり、ここも区画や仕切り、朽ちた彫像があったりするものの咲き乱れる草花と飛び回る蜂や蝶の野生の勢いには負けてやられ放題、でも最小限の手入れは、ってせめぎ合う様がすてき。 日本の田舎の農家の古民家よりは小さくて、ロンドンの周辺の一軒家でもこれくらいのサイズのはいくらでも。
この家にまつわる登場人物はいっぱいいるのだが、まず画家のVanessa Bell (Virginia Woolfの姉)、その夫のClive Bell、ゲイだけどVanessaとの間に娘のAngelicaができちゃったDuncan Grant、とか。
ここに長期滞在して執筆していた経済学のJohn Maynard Keynesの部屋、もある。
玄関入ってすぐのClive Bellの書斎 - まずは古書の香りでやられて(アドレナリンが湧いてくる気がするのは変な病気なのかも)、扉から壁からVanessaやDuncanがやりたい放題に描きまくった絵や模様(Ωももちろん)がそこらじゅうに、大小いろんな人によるいろんな絵、すてきな模様(オリジナルのは退色が激しくてLaura Ashley - RIP - のリプロだそう)の椅子やソファが。 インテリア雑誌によく出てくるシンプルでソリッドな要素なんて(あれってほんと住んで楽しいの?っていつも思うよ)かけらもない。 ここ以降の部屋も、機能によって置かれているものが多少違うだけで(バスルームですら)、ガーデンに面しているか池に面しているか、どこにも本や紙はいっぱい、でもひとつとして同じ意匠のものはなく、どこまでも生活を色や模様、いろんな形で満たして楽しんでいたことがわかる。
ずっといられたらなー、本の背表紙いちにち眺めていられるのになー。 当時のアート系の雑誌や年鑑もいっぱいあるし。
ツアーのなかにキッチンが入っていなかったのは残念だったが、飾られている絵画(地味にピカソとかもある。 でもとにかくVanessaのがどれもすばらしい)は入れ替えたりするものもあるそうなので、また来よう。 最後はアトリエでそこからガーデンに抜けられる。
冬は本当に寒くなるの、と言っていたけど、確かにそんなかんじだった。 暖炉はあるけど。 幽霊はいない... かな。
この家にゲストとしてT. S. EliotやE. M. Forsterがやってきて、Lytton StracheyもRoger Fryもいて、フランス文学や絵画がたっぷりあり、ロシアのバレエも中国のアートもあり、経済学の先端がいて、LGBTQがふつうにあり、当時の人文学の粋と枠がこんな田舎の小さな家にぜんぶ固まってあったんだなー、って。
そして*Living Well is the Best Revenge* -『優雅な生活が最高の復讐である』というフレーズが自然にふんわりと浮かんでくる。
ここに来た以上、もういっこの方 - VirginiaとLeonard Woolfの家 - Monk’s Houseも行くよね。
ふたつの家の間は7マイルくらい離れていて、行きのタクシーの運転手さんに「歩ける?」 って聞いたらうーん、2時間くらい歩く気があるのなら、ていうので、彼と時間を決めて再び来てもらった。(確かに歩ける距離じゃなかったかも)
こっちはFarmhouseよりさらにこじんまりしていて、ほんと普通の家のかんじで、でも家具や飾りつけや色彩はあっちとおなじ意匠と感覚で統一されてて(つまりやはりVanessaとDuncanがー)、同様に住みやすそうだった。こちらは撮影可。
Virginia Woolfの寝室は”A Room of Her Own”だなあ、って、書棚にある本を見ていたら、日本語訳された彼女の本(昔のみすずの選集とか)が結構置いてあった。 Farmhouseと同様に咲き乱れっぱなしの庭にはやはり池(丸いのと四角の)があり、柵の向こうには牛がいて、彼女は牛を見てなんか思ったのかなあ、とか。
駅までの帰路はまた同じ運転手さんに来て貰い、この人は親切なことに近所のRiver Ouse - 彼女が入水自殺した - にも連れて行ってくれた。 橋の上から見た川は、最近の雨で水量が相当に増えていた。 彼女が入っていった1941年の3月はどんなだったのだろうか。
Farmhouseの写真集として、2016年にUnicornから出たKim Marslandの”Charleston Farmhouse 1981”という小さな本が雰囲気をよく伝えているので探してみて。
8.11.2019
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。