4.18.2019

[theatre] Betrayal

15日、月曜日の晩、Harold Pinter Theatreで見ました。Harold Pinter Theatreでは、(当たり前かもだけど)昨年から集中してHarold Pinterのいろんなのを上演していて、どれも行きたいけど行けていない。せめてこれくらいは、と3月のチケットを取ったら予定が入ってしまい、窓口に電話してこっちの日に無理やり替えて貰ったやつなので、なにがなんでも、だったの。

昨年の7~8月にBFIでHarold Pinter原作の映画特集 - ”Pinter On Screen: Power, Sex and Politics” - があって何本か見て、そこでこの”Betrayal” (1983)も見ている。監督はDavid Jonesで, Jerry役にJeremy Irons、Robert役に Ben Kingsley、Emma役にPatricia Hodgeで、なかなかおもしろかったのだが、感想は残していないようね..

今回の舞台版は、演出がJamie Lloyd, JerryがCharlie Cox, RobertがTom Hiddleston, EmmaがZawe Ashtonとなかなか豪華で、トムヒ人気もあるのかチケットも売れているもよう。
そういえばHarold Pinter作品を舞台で見るのは初めて。

舞台はなんの飾りもないシンプルなもので、椅子が3脚あって、3人のうち2人が対話するときは前にある椅子2つが使われて、場面転換は登場人物を残したまま床ごとゆっくりぐるーっと動く、それだけ。出てくるのは3人以外だとレストランのシーンでウェイターが出てくるのみ。

RobertとEmmaは夫婦で子供もいて、JerryとRobertはRobertが結婚する前からの親友同士で、Jerryも結婚していて子供がいる。JerryとEmmaは7年間、Robertに隠れてロンドンにフラットを借りてそこで密会している。最初のシーンは、レストランでJerryとEmmaが2年ぶりに再会するところで、 Emmaは昨晩Robertに自分たちの関係を明かして彼とは別れることにしたの、と告げる。自分達の関係を明かされてしまったやばいと思ったJerryはその晩、Robertに会ってその話をすると、彼は、それ4年前から知ってるから、とへーきな顔していうので愕然として、そこから話は2年前、1年前と遡っていって – それぞれの局面でJerryとEmma、JerryとRobert、RobertとEmmaはどんなことを話していたのか、を手繰っていく。これまでずっと登場人物の誰かは誰かと誰かの関係を知らないふりをして実は知っていた -  ひとりだけが騙されていたわけではなく、全員が多重債務状態で騙されていた - そうやって/それでも関係を続けている、関係が続いていく奇妙な事態の背後に”Betrayal”という単語が浮かびあがるのだが、だからといって何かが崩れたり狂ったりするわけではなく、誰かが誰かを裏切った状態を正として維持されてきた関係って …  別に、世間て割りとそういうものじゃないの? とか。

映画版の方は - てっきりJeremy Ironsが演じたJerryをTom Hiddlestonが演じるのだと思っていたらちがった - 街角にあるレストランや彼らが借りていたフラット、Robertの子供たちや家庭の様子も背景として普通に出てくるので、やや生々しいホームドラマ- 程度だったが、舞台で、今回のように装飾を一切排した平面上で展開されると、人物間 / 同士のぐるぐるが睨みあいと共に異物のように固化してそこに置かれて強烈な心理劇になる。もちろんそれを可能にするのは俳優の力のみ、でそういう点ではこの3人は誰もがすごくて、特にTom HiddlestonについてはLoki、としか言いようがない変態ぶり、ぐにゃぐにゃなのにぜったい死ななくてしぶとくて、それはなんか変な言い方だけど、見ていてとても楽しいのだった。

あとこれ、ほんとに英国の、英国人のドラマだなーって。

Radio Times Hall of Fame:  Helen Mirren

少しだけPinterが出てきたイベントのことをメモしておく。

BFIでは毎年この時期にBFI & Radio Times Television Festivalっていう3日間のフェスをやっていて、その名の通り英国のTVのショーやドラマの新シーズンのお披露目とかアーカイブの掘り起しとかいろんなトークとかがあって、2年前はこれでMaggie Smithさんのお喋りをみた。 今年のゲストにはJamie OliverとかSamantha MortonとかZawe Ashtonとか、アーカイブ関係だとDavid Bowieの映像お蔵出しとか - 一時帰国がなければ絶対行ったのになー、だった。

このイベントのフィナーレが、14日日曜日の晩で、そこにHelen Mirrenさんが登場したの。

もうじきSky/HBOで始まる歴史ドラマ - ”Catherine the Great”でロシアの女帝を演じるDame Helen Mirrenは全く知らなかったのだが、彼女の祖父はロシア革命から逃れてきて難民として英国に来て、ロンドンでタクシードライバーをしていたそう。なので元の苗字はMironoffなんだって。

そこからNational Youth Theatreに入り、更にRoyal Shakespeare Companyに行って、キャリア最初期の映像のクリップとして、Harold Pinterの”The Collection” (1976)が少し流れる。 これも昨年のBFIのPinter特集で見て、おもしろくて感想も確かここに書いた(猫も含めて素敵なの)。このドラマはあたまに”Laurence Olivier Presents”と付いていて、彼女もしみじみ言っていたけど、50-60年代のTVドラマは本当に質の高い、見るべきものが多かったのだと。(日本もそうだよね。ノスタルジーじゃなくてほんとに。最近はなんであんなクズみたいになっちゃったのか)

最後に会場に招待されていたNational Youth Theatreの若者(女性)たちにアドバイスを、と言われて、TVでも映画でも、そこに出て来る配役やスタッフに男性が何人いるか、女性が何人いるか、常に数えるようにしましょう。 そしてその数の違いはなんなのか、どういうことなのかを考えるのよ! って。

すごい.. どこまでも痺れるくらいかっこよかった。

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