3月23日、土曜日の晩、CurzonのMayfairで見ました。
一般公開の前、BFIでは監督のRalph Fiennes、脚本のDavid Hare、主演のOleg Ivenkoが参加したPreviewとトークがあったのだが、そっちは行けなかった。
61年、Mariinsky Balletのメンバーとして渡仏公演をしたRudolf Nureyevが、公演を終えてパリからロンドンに向かおうとしていた空港で間一髪フランスに亡命したドラマを中心に、彼のそれまでの人生とか人となりを描いている。”White Crow”っていうのは、ロシアでは並はずれて変なヒト、アウトサイダーのことをいう、と。
Rudolf Nureyevについては、昨年ドキュメンタリー映画”Nureyev” (2018)も公開されていて、これも併せて見るとどれだけとんでもない人だったか – 特にバレエ・ダンスの世界では – がようくわかるので併せて見てほしい。
冒頭、浮かない顔をしたAlexander Ivanovich Pushkin (Ralph Fiennes)がソ連(当時)の官僚から「彼には元々そういう兆候があったのか?」とか詰問されていて、Pushkinは「いや、ぜんぜん..」てしょんぼり答えている。
物語はNureyev (Oleg Ivenko)がパリに到着して、ソ連側の関係者からマークされつつもパリのいろんな文化に触れてうわああーっ(歓)てなってやがて亡命に至るまでと、走行中のシベリア鉄道のなかで生まれ寒村でほぼ母の手で育てられ、やがてバレエを習うようになっていく幼少期 – 画面はややモノクロ – と、Vaganova Academy of Russian Balletに入ってPushkinの元でバレエを教わりつつ、いろいろ葛藤があったり彼の妻とできちゃったりの青の時代、の3つがランダムに切れ目なく繋がっていく。
やはり一番面白いのはパリでのカルチャーあれこれに触れて開眼していくさまで、ルーブルで”The Raft of the Medusa”やギリシャ彫刻に痺れたり、Clara Saint (Adèle Exarchopoulos)とかいろんな友人を紹介され、カフェいったりバーいったり楽しくてしょうがなくて、こんなのに触れたら帰りたくなくなるに決まってるよねえ(他人事じゃないな)、になる。ソ連側ではあいつなんか危ないから要マーク、で監視も厳しくなっていくのだが、他方で本業のバレエ公演の方 - “Scheherazade” だよねあれ? - はセンセーションを巻き起こし、みるみるスターになっていくので、監視する側からすればあのやろー(憎)、って。
3つの時代を区切ったのは厳しい暮らしの反対側でバレエ(= 華やかなもの)への憧れが出てきた頃と、バレエスクールで苦悩しつつも自分を磨いてだんだん尊大になっていく時期と、憧れと自尊心がスパークしてアンストッパブルになってしまったパリと、一応筋は通っているかんじ。
やがて次の目的地ロンドンに向かう空港で、ソ連関係者に突然、君だけはロシアで特別な舞台が用意されているからこっち来てね、と手を掴まれてああ戻ったら監禁洗脳されるってパニックになり、それを見ていた友人がClaraを電話で呼びだし、飛んできた彼女が空港の警察の詰所に入っていって「わたしはAndré Malrauxの縁故者です」って天下の御紋を掲げて連中に掛け合って動かすところはとってもスリリングでおもしろい。
あそこでちょっとでもなにかがずれていたら、Rudolf Nureyevはこの後我々の前に永遠に姿を現さなかったかもしれないし、それはつまり、今のバレエのありようも変わっていたかもしれないし、というくらいこの人のバレエは飛びぬけていた – これはドキュメンタリー映画の方を見て知ったこと。
バレエのシーンをあと少しだけ見たかったかな、っていうのと、Oleg Ivenkoさんは十分にうまいのだが、Nureyevの方がもうちょっと筋肉質でアッパーだったかも、とか。でもあれを真似できるひとなんてそうはいないだろうし。
Clara Saintを演じたAdèle Exarchopoulosさんは『アデル、ブルーは熱い色』の「アデル」の子で、変わらぬ仏頂面が頼もしくてすてきだった。
4.01.2019
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