これもこっちから先にかく。
9日の土曜日と10日の日曜日、2日間に渡ってBarbicanで見ました。
今年3月、11作目のスタジオ作品としてリリースされた50曲入りの"50 Song Memoir"、それの全曲披露公演。
Stephin Merrittの生誕50周年を記念して1966年から2016年まで、各年1曲づつで構成された全50曲、1日目にはその1曲目から25曲目までが、2日目には26曲目から50曲目までが演奏された。
そんな私小説みたいなのに付きあっているヒマはないね、だったら別に無理しなくてよいけど、でも"69 Love Songs" (1999)にびっくりしたひとは行って見て聴いておいたほうがいいよ、と。
チケットの発売は3月中旬で、発売初日にめちゃくちゃ張りきって(オンライン)突撃したらそんなでもなかったので拍子抜けした。 イギリス人にはそんなにおもしろくないのかしら。
彼らのライブに行くのは2004年以来。
ステージ上にはきらきらカラフルで、アジア系の雑貨屋みたいにおもちゃが散らばって怪しく輝くStephinの部屋、みたいなセットが組み上げられていて、その外側には半円状に6人のミュージシャンのブースが囲んでいて、部屋のてっぺんには横長の鏡のように縁取りされた楕円のディスプレイが取り付けてある。
バックミュージシャンにはこれまでのようにClaudiaもSamもJohnもいなくて、ClaudiaとStephinの掛けあい漫才が見られないのは残念だったが、このステージはなによりもStephinのものなのだろう。
物販コーナーに殆ど本のようなツアーパンフ(サイン入り)、があって(Tシャツもポスターもすごくかわいかったのでもっと買えばよかったとしみじみ後悔してる)、それぞれの曲とそのエピソードをめぐるDaniel Handlerとの対話とかいろいろ入っているのだが、まだ読みきれていない。
Stephinは部屋の真ん中にどっしりと腰かけて(太ったよね)、たまに楽器やスイッチをいじったりするものの、ほぼ歌の世界に没入して朗々と歌い続ける。 たまにお茶をおいしそうに飲んだり。
生まれた年(66年)から順番に流していくだけなのだが、各パートがそれぞれ変てこな楽器(ノコギリなんてあたりまえ。ラッパのついたバイオリンとか)をじゃかじゃかぱおぱお鳴らしまくるのと、ディスプレイに映し出される各曲をイメージしたイラストレーションとかアニメーションとかが相当に変でおかしくて、曲に集中できなくて困るくらいだった。
(これらを担当したのはJohn Erickson, Roger Miller, Jocelyn O'Shea, Alex Prtrowsky)
前半の25曲はアマチュアの時代、ということでやんちゃでとっちらかった曲が多くて、後半はプロフェッショナルの時代、ということでエモーショナルかつメランコリックな曲が多い。割と繰り返されるテーマは母親(母子家庭だった)のこと、離れたり戻ったりを繰り返すNYのこと、盛り場とか、恋とか愛とかどん底とか(これはいつもの)。
客層はやはり年寄りが多くて、たしかに60年代生まれてなかったもん、みたいな人がみてもきょとん、だろうしな。
前半で胸をうたれた曲としては"'69 Judy Garland"、Stephin節全開の"'71 I Think I'll Make Another World"、身につまされて戦慄するしかない"'79 Rock'n'Roll Will Ruin Your Life"、John Foxxの肖像が映し出されて『当時の自分は本当にJohn Foxxになりたかった 〜 "Metamatic" (1980)は「去年マリエンバードで」に匹敵する衝撃だった』 と語る(激しく同意しかないわ)"'83 Foxx and I"、Teenagerに捧げる3曲として、Eddie Cochranの"Summertime Blues", Alice Cooperの"Teenage Lament '74", Beat Happeningの"Bad Seeds”(ここで拍手)が掲げられた"'85 Why I Am Not a Teenager"とか。 同時代のなんとか、なんてちっとも信じないほうだし、彼もそういうアプローチで書いていったと思うのだが、ここまでいろいろ繋がってくるとやはり考えてしまうねえ。
後半の2日目はどれもこれも美しい曲ばかり。
会ったことがないという父親 - Scott Faganというミュージシャンで、昨年Cafe OTOでライブもやってる - について歌った"'99 Fathers in the Clouds"、うっすらと911について言及した"'01 Have You Seen It in the Snow?"、 なんだかんだのNY愛が全開で泣くしかない"'12 You Can Never Go Back to New York"、 デジタルになってから写真がみんなどこかに行ってしまったよ、としょんぼり呟く"'14 I Wish I Had Pictures"とか、このバラードで美しく終われば最高なのに、ラストの"'15 Somebody's Fetish"は底ぬけの変態賛歌で終わってしまう。
もちろん、まだ続いているのだし、50年後に次のMemoirを出して、またライブをしてくれますようにー。
どちらの日もアンコールはなし。 そういうの入りこむ余地まったくなしの完成度の高いショウでした。
9.11.2017
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