9.06.2017

[film] American Made (2017)

1日の金曜日の夕方、BBC Promに行く前にCurzonのVictoriaで見ました。

"Tom Cruise"で"American Made"、なんかの冗談みたいよね、と思っていたら本当に冗談みたいな本当のお話だった。

70年代の終わり、Barry Seal (Tom Cruise)はTWAの旅客機のパイロットで、技術はあるけど退屈していて、そんなある日、CIAのMonty Schafer (Domhnall Gleeson)が声を掛けてきて、向こうが用意した小型の飛行機で中南米に飛んで、機に仕込んだカメラで現地の写真を撮ってこい、て言われて始めたら一回の飛行で結構お金をくれるしもっともっと、て言ってくるので止まらなくなって、そうしているうちに今度はコロンビアで声をかけられて、米国までコカインを運んでくれないかと言われ、これも危険だけどがんばって、そうしているうちにニカラグアのコントラへの武器輸出とかノリエガからの機密情報とか、あの辺のやばい国々の闇の物流全般を束ねて請け負う、そういうビジネスを始めるの。

やがてそれまでしょぼかったBarryの生活はいきなり豊かになって、はじめは疑ってやかましく食ってかかった妻Lucy (Sarah Wright)も何も言わなくなって、そのうちやっぱり当局に怪しまれてしょっぴかれるのだが、なぜかするりと釈放されてしまう。 もちろんそういう生活もずっと続くわけではないのだが。

カーター政権の終わり頃に始まって、レーガン政権の頃に全開になり、ブッシュ・シニアからクリントンを経てG.W.ブッシュまで。
歴代の大統領を跨って共謀が謀られて、なんとしても維持することが求められた(中南米諸国に対する)アメリカ最強、絶対優位の神話、それを裏でこまこま支えていたのはこんな程度の小型機飛脚ビジネスで、それを成り立たせていたのはTom Cruiseのあの笑顔だったのだから論理的な帰結としては誰がどう見たってTom Cruise最強、としか言いようがなくなってしまうのだが、そこにべつに異論は...  ないか。

やがてやばいことになるのを察して折々にビデオで自撮りしていたBarryの告白をベースに展開していくので、ところどころビデオの粗めでぺなぺなした映像(特にレーガンのニュース映像とか)がこの(当時の政界を巻きこんだ)企みの薄っぺらいイメージを代表しているようで、それはそれで成功していると思った。 ビデオのぺたんこな映像と彼の操縦席からがたがたした揺れと共に見下ろされる赤茶けた中空の景色、これが世界の像のすべて。 まだ地球をスムーズに丸く覆うネットなんて、ない。 発信だの共有だの、それってなに? の世界。

これらを通すことでオバマ以降のアメリカ - グローバル経済の拡がりに伴う米国の影響力低下とか("American Made"の)劣化とかそれに伴う混乱・混沌とか - その反動としてのトランプまで - もくっきりと見えてくる。 あの頃は幸せに笑っていられてよかったねえ、というか、笑っていられた時代のことを今のうちに笑っておく、というか。  
監督のDoug Limanにとっては、このふたつの時代の遷移はTom CruiseからMatt Damon (Jason Bourne)への移行、として説明できたりするのだろうか。

自分も90年代の中頃、パナマとかコロンビアとかガテマラとかエクアドルとか、マイアミをハブに往ったり来たりしていた時期があったので、とても懐かしいとこもあった。 飛行機から見る景色はあんなふうだったし、突然意味不明の、わけわかんないようなことばかり起こるし。
また行きたいなー。

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