少し戻って、13日の月曜日の晩、BFIで見ました。 ここで続いていたKelly Reichardt特集の最後の一本で、”Meek’s Cutoff” (2010)と最新作の”Certain Women” (2016) の間にリリースされたやつなので、見ないわけにはいかない。
西の田舎でやや過激な環境保護活動のグループに入っているJosh (Jesse Eisenberg)とDena (Dakota Fanning)はずっと練っていた大企業のダムを爆破する計画を実行すべく、周到に計画を立ててボートとか爆薬(農薬から加工・調合する)とかを調達してそういう活動のベテランのHarmon (Peter Sarsgaard)と落ち合い、3人で夜中にキャンプ場の奥にあるダムまで漕いでいって爆薬を仕掛けて実行する。 爆破工作自体はうまくいって、現場から遠ざかって身を隠すことにも成功するのだが、キャンプ客のなかにまったく予期していなかった犠牲者がでて愕然として、だんだん時間が経つにつれてどんよりしていくの。
タイトルの”Night Moves”は計画実行のために買ったボートに付いていた名前なのだが、それだけでなくて夜中にいろいろ考えたり悩んだりするうちにゆっくりと頭のなかで進行・浸食していくいろんな想念とか逡巡とか罪の意識とか、ていうのもある。
これまでに見たKelly Reichardtの作品がなにか決定的な手を下す直前までの主人公の沸騰していく強い想い - 主に女性の - を刻々と描いていたのに対して、この作品は手を下してしまった後の彷徨い、落ち着きのなさを - 主に男性のJoshの目で描いている。 より正確には事件の後に引き篭もって肌もぼろぼろになってしまったDenaのことを心配しているうちに彼女のなんてことを… という罪の意識がJoshに感染して思考や視界を縛り奪っていく、というか。
そして、これがあなただったらどうする? というのを常に聞いてくる。というか監督の自問自答する声が向こうから聞こえてくる。
それにしても、ここでのJesse Eisenbergの孤独とおそろしさ、これまでの彼が演じてきたキャラクター - ナードでおどおどしているけど根はそんなに悪いひとではなさそう - の普段はふつうに真面目に働いている農家の青年がやがて底なしの闇とその暗さをひっかぶって何を考えているのかわからない犯罪者の容貌に変わっていく、その生々しさがとても怖くておそろしくて、ああすごい俳優さんだねえ、て今更ながらに思った。 本人は否定するかもしれないが、タイプとしてはKristen Stewartの得体の知れない暗さと同質のものを感じる。 内面が、皮膚の向こう側がまったく見えない一貫性を欠いたような演技をして、その不可視なかんじが画面全体を支配してしまう。 とにかく犯罪者の顔に変わってしまう瞬間がすごくて。
彼女の作品はずっとTodd Haynesが製作に関わっているのだが、その観点からも日本でもっと紹介されてもいいのにー。
3.21.2017
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