3.17.2017

[film] Personal Shopper (2016)

少しだけ順番は前後するがこっちから書く。
14日の晩、CurzonのSOHOで、英国の公開は17日からなのだが、Previewで Olivier AssayasとのQ&Aつき。 監督はつい先週、NYのMetrographでGreta Gerwigさんとトークをしていたはずで、とっても忙しそう。

イントロの監督の挨拶では、この映画は Kristen Stewartというすばらしい女優と一緒に旅をするように書いていったもので、彼女なしにはありえない、共同作品のようなものだ、と。

映画は始めのうちはいろいろ錯綜していて筋がよく見えてこない。なにか明確な目的があって動いているわけではないようで、セレブのPersonal ShopperをしているMaureen(Kristen Stewart)が廃屋となっている屋敷で幽霊がでたでない/見える見えない、をする話、スウェーデンの抽象画家Hilma af Klintと神秘主義の話、心臓発作で亡くなった彼女の双子の弟の話、仕事でのパリ - ロンドン間の移動中にiPhoneに頻繁に送られてくるインスタントメッセージの話、などが絡んでいって、やがて殺人が起こって、でもそれもただ起こった、というだけの話のように見える。

最後のほうに来てああそういうことだったのか、というのが見えてくる。
謎解きでもなんでもなく、ひとりの女の子の物語なの。
そういえば"Boading Gate" (2007) も”Clean" (2004)も女の子のおはなしではあった、けど、後のQ&Aで監督も言っていたがパリに来たアメリカの女の子、を意識したのだと。

前作の"Clouds of Sils Maria” (2014) は割と正調のヨーロッパ的なドラマ、というかんじで Juliette Binocheがいて割と堂々としていたが、今度のはあちこちぎこちなくたどたどしく手作り実験しながら作っている感がいっぱいで、このあたり賛否分かれるのかもしれないが、わたしはとっても好きだ。

ちょっと変な女の子の映画をつくる、というのと、辺境・マイナーぽいホラー映画をつくる、とてもエモーショナルなかたちでそれらを実現・両立させている、というか。

2010年のNYFF - "Carlos"が公開された年の - のイベントでOlivier Assayasによる"The Cinema inside me"と題したレクチャーがあって、そこで彼が語っていたJohn Carpenter, David Cronenberg, Wes Cravenといったホラー映画作家に対する偏愛と(今回のQ&Aの中でもまったく同じ名前が同じ順番で語られた)、優れた映画っていうのは意識下/無意識下にあるもの、知覚できるもの/できないものとの間の境界やその線上にある未知のものへの入口までガイドしてくれるもの - その際に引用されたのがDario Argentoの"Inferno" (1980)の女性が地下への扉を開けて奥に入ったら鍵を落として死体がぶわー - ていうシーン、というあたりのことがようやく自身の映画で(Kristen Stewartの身体を借りて)具現化されたのだな、と思った。

自分に憑りついているもの、夢のようななにかとコネクトしつつ常になにかが起こっているような感覚、それらに引きずりまわされている感覚、が全体を覆っていて、Maureenはくすりとも笑わずずっと不愉快で不機嫌で、でもそこに立ち向わざるを得ない孤独な女の子を、静かに(泣き叫んだり大騒ぎせずに)演じている。

で、アメリカのホラー映画にあるように、そこにEvilななにかを持ち込まずに鳥肌をもたらす、ということ、かわりに先のHilma af Klintの絵とか降霊の話とかが入ってきて、論理的なところを飛び越えて、皮膚感覚に近いところを突いてくるような。(あのレクチャーで、ホラー映画のすごさは客のフィジカルなリアクションを引き出せることにある、と明確に言っていた)

というわけで画面はとてもきれいで - Maureenがパリの街をスクーターで走り回っているだけでなんかよいの -  音響はものすごい(最後のほう、小さい音ではぜったいだめ)。

“Certain Women”を見てこれを見ると、いま、Kristen Stewartが必要とされている理由がなんかわかる。

そのほかにOlivier AssayasがQ&Aで言っていたこと;

・意識下/無意識下、それらの境界に横たわる言いようのないなにかを知覚する/させようとする際に現代のテクノロジーが侵入・介入してくる(よくもわるくも、そうなってしまっている)。
例えば今回のだとiPhoneのIMが重要な役割を果たしたりするのだが、そういうのを編集も含めて画面上でどう見せるか、のあたりはものすごく苦労した、と。

・この映画のKristen Stewartを語る際に引き合いにだされたのが、"The Innocents" (1961) - 「回転」- のDeborah Kerr (未見)。

・ファスビンダーに関する質問が出て、”Clouds of Sils Maria"は「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」なんだって。 そうかー。

まだなんかあった気が …

丁度いま、Film4のチャンネルで”Après mai” (2004) - 『5月の後』- やってる … 寝ないといかんのにー。

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