9日の月曜日の朝、渋谷のハワード・ホークス特集で見ました。 『光に叛く者』。
いやーすばらしいったら。
酒場でトラブルがあって駆けつけてみると若者が連れの女にちょっかいを出したやつをぶん殴って相手が倒れた、という小競り合いで、殴ったのは20歳の誕生日だったGraham(Phillips Holmes)で連れの女性もたまたま誘っただけ、殴られたのは市の有力者のぼんぼんで、いろいろついてなくて、担当した検事は事情を聞いてちゃんと弁護すれば刑は軽くできるよな、とかいうのだが、選挙絡みの下心があった検事Brady(Walter Huston)は刑法(Criminal Code)を盾に、彼に懲役10年を言い渡すの。かわいそうなGraham。
刑務所で6年が過ぎてGrahamもぼろぼろに擦り切れてきた頃、刑務所長が彼をムショ送りにしたBradyに替わって、他の囚人もみんなこいつが検事の頃の裁きにはぱんぱんに恨みを抱いていて、擦り切れたGrahamを見た所長は、彼をきつい工場労働から身の回りの世話担当に変えてあげて、そうしているうちに彼も回復して所長の娘Mary(Constance Cummings)とも仲良くなったりする。
他方でいいかげん嫌になって脱獄を試みた仲間の2人は失敗して、そのわけは密通者がいたからだ、それはあいつだ、と裏切り者への復讐計画が立てられて実行される(ここがねえ、すごいの - Boris Karloff )のだが、おまえは容疑者を知っているはずだ、言わないと刑期延長に地下牢行きだぞ、人生ぜんぶ終わっちゃうぞ、てGrahamは所長とか看守から脅されて、でも断固口を割ることができないああかわいそうなGrahamの運命やいかに、なの。
刑務所内の統治構造とそれとは別にある囚人同士の掟や絆、これらの土壌に広がって渦を巻く恨みと怒り、統治者が拠り所にする刑法と、そこからいくらでもこぼれ落ちていく個別のいろんな事情とか情とか、これらのコントラストが描きだす非情さとその境界のせめぎあいが凄まじく、いったいひとは法に生きるのか掟に生きるのか、そこにおいて「正義」とは何でありうるのか、などを問いかけつつ、でも結局地下牢行きになっちゃったらさあ … とか本当にいろんなことを考えさせる。
そしてこれら多層かつ多様な境界線上のサーカス - 綱渡りが悲惨な方ではなく歓喜や狂騒のほうにくるっと反転したのがホークスのコメディなんだなあ、て改めておもった。 そこにあるのは圧倒的な生や業に対する洞察と豊かさと、そしてもちろん愛で、だからホークスの映画さえあればひとはそれだけで生きていくことができる。 どんな場所だって。
政権はとうとうあっちに行ってしまった(泣)が、そんな時代にこそ必見の一本でもあるの。
1.21.2017
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