2.29.2016

[film] The Walk (2015) - 3D

19日の金曜日の晩、二子玉川のシネコンでみました。終っちゃいそうだったし。

フランスの軽業師、綱渡り師のPhilippe Petit が1974年に建てられたばかり(でも開業前)のWorld Trade Center(WTC)2棟のあいだにワイアーを張ってひょいひょい渡って落っこちることなく生還したという事実を彼の回顧本をベースに映画化したもの。

この出来事については、2009年のオスカーを受賞したBBC製作によるドキュメンタリーフィルム - “Man on Wire” (2008)があって、実際の映像や事実関係はそちらを見ればよろしいの。
でもこれを見たとき、確かに冗談みたいにすごいことをやってのけたねえ偉いねえ、と感心する反面、達成したことが冗談みたいにすごすぎるので、ほぼPhilippe Petitとその仲間にのみフォーカスがあたってしまう(ので、なんかうざい)ことだった。 これがフィクションとして撮られたらどんなにかダイナミックで素敵なものになったことでしょう、と当時は思ったものだった。

映画は自由の女神のPhilippe Petit (Joseph Gordon-Levitt)の語りで、若い頃に綱渡りの師 (Ben Kingsley)と出会って修行して軽業師として活躍始めた頃、WTC建設の計画を知って電気が走って、あそこに昇って綱渡りをしよう、て夢を描いて仲間=共犯者を集めて、というフランスを舞台にした前半部、ほんとにNew Yorkに渡って計画を実行に移すまでの後半部からなる。

もういっこ“Man on Wire”を見たときに思ったのは、かれの無謀な計画を実行してあげた/させてあげたのはNorth TowerとSouth Towerの2棟の兄弟であって、彼らへのリスペクトがちょっと足らないんじゃないか、ということだった。今度の映画化でその辺はじゅうぶん、もちろん彼らは既に亡くなっているので殆どCGなのだが、Philippeの魂に火をつけた、彼を焦がしたWTCの魅力はそこで働く人たちの動きも含めて伝わってくるの。

ビルの下の道路幅とか間近でみたときの壁の陰影とか、細かくみるとやっぱCGよね、みたいなところはあったけど、でもいいの。そういうところも含めてすべてはもう再現不能な遠い昔のなにかになってしまったんだなあ、って少ししみじみした。

ひとは何故山に登るのか - 最近でてきた邦画洋画それぞれのエベレスト登頂ドラマ(どっちも見てないや)のなんともいえないうっとおしさ - 主人公たちの達成感とかマルチ苦労話をなんで強要されにゃあかんのか - みたいな要素は薄い。
シンプルににょっきり伸びた2本の高層ビルの間にワイヤーいっぽんぴーんと張って、その上を歩いてみる、それだけ。 克服すべきは高さと細さと、それらからくる不安定さ、だけ、捕まっても外国人ですから、で逃げられるよね、程度でなんとかなると思っている軽さがすばらし。 そして映画は「高い」っていうのはどんなふうに地面から遠くて、そこを「歩く」っていうのはどんな具合に危ないのか、をPhilippeの目と動きを通して存分に教えてくれる。 教えてもらっても使えないけど - 新しいOne World Trade Centerでは。

あとはJoseph Gordon-Levittのお見事な軽さ - いま、町の軽業師を演じるのにこんなにふさわしい人がいるだろうか。
ついこないだの"Premium Rush" (2012)で高速の自転車乗りとしてマンハッタンじゅうの道路を自在に行き来して制覇して、"Inception" (2010)では現実と夢の間を自在に、"Looper" (2012)では時間を、"Don Jon" (2013)では次から次へと女性を... 
壁を伝ってひょいひょい飛び越えて、ガッツポーズしていつもへらへら笑っている。 かっこいいったらないの。


終ってから、はじめて蔦屋家電ていうのを見てまわった。  蔦屋だわ、ておもった。  いじょう。

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