10.28.2015

[film] The Wolfpack (2015)

10日の土曜日、京橋から新宿に移動して夕方、「ラテンピート映画祭」からの1本。
ラテンアメリカ系のドキュメンタリーは山形でいろいろあったようで、ああ行きたいなあと思いつつ、山形までどうやって行ったらよいのか見当もつかなかったので、こっちでがまんする。

このドキュメンタリーはずっと見たかったやつ。 今年のSundanceのドキュメンタリー部門でGrand Juryを受賞している。

マンハッタンのLower Eastのアパート(Seward Park Extensionだって、ついこないだ通った)の一室で、おもちゃの手作り銃でReservoir Dogsごっこをしている兄弟がいる。 彼らは6人で、他に妹もいて、全員髪を切らないポリシーで長髪だけど、ふつうに仲のよい兄弟、家族に見える。 兄弟へのインタビューを通して、彼らは音楽を作ったり踊ったり映画を見たり「ごっこ」したりして遊んでばかりいるようだが、それらは放課後とかのことではなくてずっと、子供の頃からずっとそうなのだという。

彼らの父親(母親も)はNYのこの辺は危険だからと、父親がアパートの鍵を管理して一切の外出を禁止してきた、と。  一瞬、どろどろの監禁、DVドラマか、とか頭をよぎるのだが、子供たちは拍子抜けするくらい冷静で穏やかで、パパは看守だよね、とか言っている。 母親にホームティーチャーの資格があって、家には5000本くらいの映画のVHSやDVDがあって、それらからいろいろ学んだのでだいじょうぶ、と。 確かに言葉の発音は明瞭でしっかりしているし、彼らがリストアップした映画のベストを見ても極めてまっとう、としか言いようがない。映画をいっぱい見ていれば世界や社会の大抵のことは学べるんだねえ、と改めて感心したり。

実際、映像で少しだけパパとママの姿も出てくるのだが、あんまり変なひと、虐待しているひと、の傲慢な印象はない。 むしろ普通に、真剣に子供のことを心配しているふうで、子供たちも素直にその愛に応えていますから、程度のかんじなの。
監禁/軟禁でもなく、引きこもりでもなく、なんとなく出る機会を逃して、映画とか見ているうちに気づいたら10数年経っていました、みたいな。

"Grey Gardens” (1975)と比較している記事があったが、よく見ると引いてしまうようなびっくら生活を堂々と、淡々と進めている/過ごしているなんか変な人たち - でもどこが変なのかちゃんと言うのは難しいかも -  のドキュメンタリー。 彼らはちょっとやそっとでは揺るがないので、その姿を見ているとすがすがしくて感動してしまう。

で、やがて子供たちはこわごわ外の世界に出るようになる。
最初は地元の数ブロック先まで、サングラスにコート姿でばっちり決めて出かけて、緊張でぐったりして戻ってきたり、地下鉄でコニーアイランド(NY旅映画の定番)に出かけて、生まれて初めて海を見てびっくりして、泳いでみたり。
彼らの目にそれらはどんなふうに見えたんだろう、見えるんだろう、てちょっとどきどきしたり、そういうおもしろさもある。

こうしてだんだん外に出ていくようになってから、家族内の温度や空気も少し変わって、でも変わらないものもある。
最後のほう、みんなで郊外にピクニックに行ったり、いろんな恰好で映画を撮ったり、ああいいなー、って。

今の自分なら5000本のDVDの部屋にこもること/社会との関わりを断つことに何の抵抗も懸念もない。 ぜひやってみたい。  でもあのアパートの場所では無理だわ。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。