ポーランド映画祭2014からの一本。 13日の14:00からの。
上映前、受付の方に大声で文句を言っている男性客がいたけど、なんでこの映画祭って毎年そういういきりたったひとが現れるのかしら?
『木洩れ日の家で』。英語題は”Time to Die” - 原題のニュアンスもそっちのほう - 「死んだほうがまし」だという。 ぜんぶモノクロの映画。
ワルシャワ郊外、森の奥の古くてでっかい一軒家に暮らす老婆アニェラ(Danuta Szaflarska)と犬のフィラデルフィアの日々。 それは木漏れ日のなかでの長閑でほんわかした毎日を描く、というよりはいろんな隣人とか自分と同じように壊れかけた大きな家のなかでどんづまりを実感して悪態ついてばかり、みたいな。 「木洩れ日の家で」のタイトルでこれがジブリのアニメだったりすると、気難しい老人のそばに寄り添ってくる子供とかなんかの精とかが現れて毎日をありがたやにしてくれたり奇跡を起こしてくれたりするのだろうが、そんなことはちっとも起こらなくて、つまりは”Time to Die” じゃろ、ていう呟きとかボヤキががらんとした家のなかに響く。
老年に差し掛かった息子は早く母に施設に入ってもらって家を売り払うことしか考えていないし、孫は祖母の指輪くらいにしか興味がない、他にも怪しげな連中とかガキ(ドストエフスキーていう名前)とかが来て、フィラデルフィアが追い払ってくれるのだが気が抜けない。
時折、恋人と出会った頃とかバレエの衣装を纏った少女の頃の自分が映し出されて、その美しさときたら息を息を呑むくらいなのだが、それは彼女が見ている白日夢なのか、家の隅々にある過去の遺物の投影の連鎖なのか、ただそれらの記憶が輝ける光となって暖かく彼女を包んでくれるかというとそんなことはなくて、古くなった家具みたいにそこに置いてあるだけのようなの。
でもそれでも古くでっかく建っているお家、その大きな窓ガラスから射してくる光はそれだけで圧倒的で、その光が多少歪んでいようが狂っていようがアニェラの生そのものであるかのようにそこにある。 そこにあった時間も含めてだれにも渡せるもんではないし、渡すもんか。
さいご、彼女は隣で子供のための音楽教室をやっていたカップルにこの家を譲ってしまってざまあみろなのだが、それを言っているのはアニェラのようでもあるしお家のようでもある。
やかましいくらいの鳥の声、樹や調度のきしみ、雨に雷、庭先のブランコ、等々がとても丁寧に撮られていて、それだけで十分だったくらい。 あの家、ほしいかも。
あとはわんわんのフィラデルフィア。 あんた文句なしの名犬よ。
12.20.2014
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。