暮れの30日に見たやつを書くの忘れていた。 銀座で見ました。
『皇帝と公爵』 - この邦題じゃわけわかんないよね。 英語題は"Lines of Wellington"。
Raoul Ruizの生前最後の企画を彼の作品を支えてきたパートナーのValeria Sarmientoが監督し、製作もおなじみのPaulo Branco。 役者陣も過去のRaoul Ruiz作品からの常連オールスターズがじゃらじゃらと並んで現れる。 ふだん日仏やアテネに通っている人達は御礼参りの意味でもいくべし。
皇帝っていうのはナポレオンで、でも画面には出てこない。公爵っていうのはウェリントンで、でもこの時点ではまだ公爵じゃない。 ポルトガル征服のため攻め入ろうとするナポレオンとそれを食い止めるべく要塞トレス線を築いて阻止しようとする葡英連合の熾烈な戦い、というかんじではなく、双方の知力を尽くした戦い、という様子もない。 お正月にふさわしいような戦国合戦絵巻、ではぜんぜんないのでねんのため。
出てくるのは農夫あがりの実直な軍曹とか、頭に銃弾2発くらいながらも看病されたり介抱されたりしつつ自軍に合流しようとする中尉とか、前線で夫を失った英軍の新妻とか、行方不明になった妻を探す宣教師とか、頭のおかしくなった孤児とか気丈な老婦とか、トレス線に向かって逃げるように進んでいくポルトガル - イギリス軍 - 軍人だけではなくその行軍に付いていく市民達のきつい旅の様子なの。
個々のエピソードの人物たちがトレス線に近づくにつれて互いに交わっていくのだが、それが戦況にとってどう、ということはなくてトレス線の完成とそれに続くフランス軍の撤退が切り分けた彼らの生と死、出発と別れ、その不可思議なありようを追う。 そこには幻影があり奇跡があり沢山の目を背けたくなるような闇があり、それらは確かにRaoul Ruizの遺そうとしたものだったのかも。
他方でウェリントン(John Malkovich)は肖像画を描かせてその出来に文句を垂れているばかりだし、フランス側もMichel Piccoli - Catherine Deneuve - Isabelle Huppert - Melvil Poupaudがテーブルを囲んでいる豪勢なショットがあったりするのだが、Michel Piccoliはなにかを口に入れてもごもご喋る程度だし、Chiara Mastroianniなんて軍靴を脱がせてもらって伸びをする、その程度なの。 貴族はいいよな、なの。
全体がばらけているので152分は冗長かも、だけど、ポルトガル側に出てくる役者さんたちがみんなすばらしくよい顔でよい演技をしているのでそこだけでも。
あといっこだけ、このウェリントンて、ビーフ・ウェリントンのウェリントンだったのか(!)、というのが本人の文句たらたらの解説でわかるので、お料理好きは必見かも(てきとー)。 伊達巻き、みたいなもんよね。
1.05.2014
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